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デンソーとUSJC、車載パワー半導体の出荷を開始 エネルギー損失を20%低減した300mmウェーハでのIGBT

2023年5月10日 発表

株式会社デンソー 代表取締役社長 有馬浩二氏(左)、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス・コーポレーション Co-President Jason Wang氏(右)が出荷式に出席

 デンソーと、半導体ファウンドリー大手のユナイテッド・マイクロエレクトロニクス・コーポレーション(UMC)の日本拠点であるユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(USJC)は5月10日、300mmウェーハでの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)の出荷を開始したと発表した。

 世界的なカーボンニュートラルに向けた取り組みにおいて、電動車の開発・普及が加速する中、電動車は航続距離や電費のさらなる向上が重要な課題となっている背景から、電動車のモーターを駆動・制御するインバーターに採用されているパワー半導体には、発熱による電力損失の低減と小型化が求められている。デンソーは、従来のIGBT(IGBTとダイオードを別チップで接続したもの)と比べ、エネルギー損失を最大20%削減した小型で低損失な次世代IGBT(RC-IGBT=ダイオードと一体のIGBT)を開発。今回デンソーとUSJCが共同で新設した製造ラインにて生産し、2025年には月産1万枚を目指していく。

 2022年4月に3社は電動車の中核デバイスであるIGBT生産で協業することを発表し、2023年上期の生産開始を目指してきた。同日にUSJC三重工場で行なわれた出荷式典には、野原諭経済産業省商務情報政策局長をはじめ、一見勝之三重県知事、伊藤徳宇桑名市長、デンソー 代表取締役社長 有馬浩二氏、UMC Co-President Jason Wang氏などが出席した。

テープカットの様子

デンソー 代表取締役社長 有馬浩二氏は「本日、デンソー、UMC、USJCの3社のパートナーシップを象徴する記念すべき出荷式を迎えることができ、大変うれしく思います。半導体業界と自動車業界という異なるカルチャーを持った者同士が、お互いに尊重し合いながら地道に取り組んできたことは競争力の源泉となっています。今後もデンソーは、信頼し合える仲間とともに、競争力ある半導体の生産を通じて電動化をさらに加速させ、地球環境の保全と笑顔あふれる社会の実現に挑戦していきます」とコメント。

 USJC 代表取締役社長 河野通有氏は「USJCが日本の半導体ファウンドリー企業としては初めて300mmウェーハでのIGBT製造を実現し、200mmウェーハでの製造に比べ、より高い生産効率をお客さまに提供できることを誇りに思います。デンソーのサポートと当社の専門チームの貢献により、試作と信頼性テストを滞りなく完了し、お客さまと合意した量産スケジュールを守ることができました」と述べた。

 また、UMC Co-President Jason Wang氏は「車載ソリューションをグローバルに提供する、デンソーの戦略的パートナーになれたことを誇りに思います。今回の協業は、製造能力と協力的なアプローチによって、われわれファウンドリー企業がお客さまを成功に導くことをまさに証明しました。自動車の電動化・自動化は、特に28nm以上のプロセスノードにおいて、スペシャルティ・ファウンドリーのプロセスで製造される半導体の車載搭載量を増加させていくでしょう。UMCは、スペシャルティ・テクノロジーのリーダーとして、自動車のバリューチェーンにおいてより大きな役割を果たす立場にあり、急速に進化する産業においてわれわれのパートナーが市場シェアを獲得できることを目指します」とコメントした。