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デンソー、半導体戦略説明会「半導体不足に特効薬はないが、コア事業と捉え領域別にさらなる強化を図る」と加藤良文CTO

2022年6月1日 実施

デンソーが半導体戦略説明会を実施し、半導体業界の動向やデンソーの今後の取り組みなどが語られた。左から株式会社デンソー 経営役員CTO 加藤良文氏、同執行幹部 田尾吉伸氏

 デンソーは6月1日、新たに半導体の取り組みや強みを紹介する「半導体特設Webページ」の開設に合わせて「半導体戦略説明会」を実施した。登壇したのは経営役員CTO加藤良文氏と執行幹部の田尾吉伸氏の2名。

 加藤氏は長く続いている半導体不足について「なかなか特効薬がなく、いろいろな手段を組み合わせて何とか対応している」と説明。具体的には、車載半導体最大級の調達量を活かした供給確保の取り組みとして、「リスク在庫の活用」「部品分配の最適化」「代替品への切り替え」「優先生産と生産能力の増強」「生産優先順位の最適化」と、全5段階のSTEPを構築。供給確保に向けて取引先と共につなぐ活動を推進しているという。中には東日本大震災や半導体工場の火災といった災害経験を踏まえた内容を盛り込んだとしている。

半導体需給ひっ迫におけるデンソーの対応1
半導体需給ひっ迫におけるデンソーの対応2

 今後の基本的な戦略について加藤氏は、「車載半導体の領域をしっかりと分析して、その中に使われる技術と、その技術を牽引する産業、あるいは大量生産はどこ得意なのかを鑑みて、領域別にいい戦略を形成していく」と紹介。

 その領域を考える上で重要となるのは、CASEの時代を迎えて「電子プラットフォームの変化には、マイコン&SoC(System-on-a-Chip)」「電動化の拡大には、パワー&アナログ」「運転支援の進化には、センサー」といった具合に、大きく3つのカテゴリーに分かれ、それぞれに使われる半導体の種類が異なり、取り組み内容も違うという。

CASE時代の車両に使われる主な半導体
デンソー半導体事業の基本戦略

マイコン&SoCの領域

 電子プラットフォームに使うマイコン&SoCの領域では、主にデータセンターやスマートフォンなど使われるが、「この領域が半導体事業を牽引していく」と加藤氏はいい、これまではパワートレーン、ボディ、シャシー、コクピット、セーフティなど、それぞれが別々に存在・進化してきたが、これからはすべてを一体にしたクロスドメイン機能を担うSoCの開発が重要になるという。もちろん従来から使用している制御用マイコンの性能向上も同様に進化させることが必要となる。

マイコン&SoCの車載での活用例

 また加藤氏は、「性能の向上と新しい機能の開発がポイントだが、車載半導体の仕様をできるだけ早めに、戦略的に決定することで安定調達につなげたい」と説明するが、現状ではスマホなど短期間(2~5年)で進化して頻繁に世代交代するような製品が半導体業界の主流で、自動車は生産が終了しても補修部品として10年近く、新車からすると20年近く生産する必要があるなど、自動車業界と半導体業界には半導体の調達方法に大きなギャップがあり、サプライチェーン全体で中長期の動向を共有したり、総量を生かした標準化への活動、市場の動向を読んで新旧の早期入れ替えなどを行なうことで調達構造を改革していきたいという。

電子プラットフォームの進化にともなう車載ロジック半導体の高度化について
開発・標準化、専業メーカーとの連携の深化への取り組み
半導体調達構造の改革への取り組み

 ちなみに半導体は、2020年時点で53兆円という市場規模を形成していて、需要は2010年から2020年にかけて1.5倍、2020年から2030年にかけては2倍、2020年から2035年にかけては3倍程度の伸び代が予想されるという。なお、半導体全体の市場で見ると車載に使われているのは10%程度でしかなく、「この割合は今後もあまり変わらないだろう」と加藤氏は推測している。

半導体市場における車載の位置付け

パワー半導体とアナログ半導体の領域

 電動化の拡大と共に需要の増えるパワー半導体とアナログ半導体に関しては、「設計や製造、ウエハーの研究開発も含め、いずれは内製化することで他社との差別化を図りたい」と加藤氏は意向を示した。

 デンソーは世の中に電卓が登場した1967年から半導体の研究開発を進めていて、M&Aや協業することで生産能力を増強しながら、約半世紀にわたり車載半導体を生産してきた。その結果、2021年の半導体の売上高は約4200億円相当と半導体メーカーのトップ5に入るほどの実績を持つ。同時に2019年~2021年の3年間で半導体に関する設備投資も1600億円と、重点的に投資を行なっている。

半導体の生産工程
パワー半導体

 パワー半導体デバイスであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に使用するSi(シリコン)ウエハーについては、戦略パートナーと連携し、これまでの主流であった8インチ(200mm)から12インチ(300mm)の大口径ウエハーへの生産にデンソーも移行を開始しているという。また、半導体の材料にシリコン+炭素を活用することで、高温・高電圧下でも作動し、電力損失も少ないSiC(シリコンカーバイト)については、「まだ現状では量産数が少ないため高値だが、EV(電気自動車)の普及とともに需要増が見込まれるためすでに強化に着手している」と加藤氏は説明した。

デンソー内製半導体の歴史
デンソーが目指す方向性
Siパワー半導体のコスト競争力向上の取り組み
SiCパワー半導体の性能向上の取り組み
SiCパワー半導体のコスト競争力向上の取り組み
気の利いたASIC(集積回路)開発

 アナログ半導体については、デンソーではすでに、回路と回路の間に絶縁層を設けることで高い安全性と安定性を持ったさまざまな回路を作る技術があり、「自社の強みである車載環境に強い製品を、クライアントが求める設計を先回りして提案することで伸ばしていきたい」と加藤氏。

アナログ半導体のASIC(Application Specific Integrated Circuit)

センサー半導体の領域

 AD(自動運転)やADAS(先進運転支援システム)に必要とされるセンサー半導体については、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーやミリ波レーダーに使用するMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、LiDARに使用するレーザーダイオード、受光ダイオードなどがあり、「世界的なADとADASの需要増に比例して売上高も右肩上がりとなり、今後もまだまだ伸びる分野で、パートナー企業との連携を強めることがポイントになる」と加藤氏は説明する。

デンソーのセンサー半導体製品例

 この領域について加藤氏は、「内製するよりも、意欲のある車載半導体ベンダー(製造元・販売供給元)と連携し、次世代のADASに必要な半導体を具体的に提示して、競争力のある戦略パートナーと連携していく」という。

 すでにレーザーレーダーの「LiDAR」に、弱い光でも検出可能な画素構造を持つSPAD(Single Photon Avalanche Diode)技術を融合させた「SPAD LiDAR」を開発中で、通常のLiDARよりも緻密な映像データを抽出することが可能で、1画素単位で距離を計測できることから高い環境認識性能を誇るとしている。

安全システム製品を支えるセンサー半導体
デンソーが目指す方向性
開発中の自動車運転向けSPAD LiDAR

 最後に加藤氏は2025年に向けた半導体事業の戦略について、「半導体は非常に重要な事業なのは間違いなく、今後も拡大していけるし、拡大すべきコア事業のひとつだと思っている。今後は自動車業界と半導体業界のギャップを解消させ、標準化を含めたサプライチェーンの強化と、内製半導体の売り上げを5000億円相当まで伸ばすこと、レベル3以上の高度運転支援に対応する小型で高性能な環境認識センサーを開発し、タフな車載半導体を築いてシステム競争力の最大化を目指す」と締めくくった。