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ミシュラン、キャノピーシミュレーション買収でデジタル技術を活用した開発を加速 ル・マン24時間にもタイヤ供給

2023年5月17日(現地時間) 発表

ル・マン24時間レースのハイパーカークラス参戦マシンに対してデジタル技術で開発したタイヤを供給

 ミシュランは5月17日(現地時間)、シミュレーションソフト開発会社「キャノピー シミュレーション(Canopy Simulations)」の買収を発表した。

 キャノピー シミュレーションは、シミュレーションソフトウェアを手掛けるイギリスの企業。クラウドベースのシステムを使い、サーキット、車両、タイヤモデルと高度な軌道最適化機能を組み合わせることで、精巧な「バーチャル ドライバー」による走行シミュレーションを可能としている。またシステムは、サーキットだけでなく公道用タイヤの開発にも利用できるほか、多様なドライバーモデルを考慮しながら進化できるように設計されている。

 このバーチャルドライバーの技術は、タイヤの安定性などその性能を評価するために「ル・マン24時間世界耐久レース」で4時間のスティントをシミュレートするなど、すでに実用化レベルにある。公道走行用タイヤの場合は、自動車メーカーはさまざまなドライバーのプロファイルを再現し、車両やタイヤの使い方を変えながらシミュレーションを行なっているが、最終的なタイヤの仕様や車両との適合性は人間が確認し、承認しているという。

 また、レーシングカーやスポーツカーに装着されるタイヤの開発において、シミュレーション技術は理想的なツールの1つとなっていて、ミシュランは2023年6月にフランスで開催される「ル・マン24時間世界耐久レース」では、最高峰カテゴリーである「ハイパーカークラス」に出場するすべてのマシンに、このシミュレーション技術で開発したタイヤが装着される予定としている。

 これらのシミュレーション技術は、新車標準装着タイヤの開発に欠かせない役割を担っていて、数理モデルとシミュレーターを効果的に組み合わせることで、技術特性や重量配分などから、どのタイヤサイズでどのようなタイヤ性能技術が最適なのかを判断できるという。

 具体的には、「サーキットの特徴とグリップ特性」「車両のシャシー(あるいは車両全体)の特性」「詳細なタイヤ挙動」といった3つのデジタルモデルの相互作用によって動的再現を行ない、シミュレーターのハンドルを握ったドライバーはさまざまなタイプのタイヤを幅広い要件設定の中でテストでき、ドライバーの主観的な感覚やフィードバック、シミュレーターが提供する客観的なデータを合わせることで、実車や実際のサーキットと同じように走行できるとしている。

 近年は進化し続けるデジタリゼーションに対応するため、ドライバーの役割も大きく変わり、若年層ドライバーはシミュレーションスキルを身につけると同時に実際のレース技術も磨くなど、リアルとバーチャルの架け橋となることが求められるようになってきているという。