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パナソニック、2023年度第1四半期の連結業績 スバルへの車載用円筒形リチウムイオン電池の供給についても言及
2023年8月1日 13:34
- 2023年7月31日 開催
パナソニックホールディングスは7月31日、2023年度第1四半期(2023年4月~6月)連結業績を発表。その中で、同日に発表したスバルへの車載用円筒形リチウムイオン電池の供給について言及した。
車載電池事業を担当するパナソニックエナジーでは、2023年6月にマツダに車載用円筒形リチウムイオン電池を供給することを発表しており、国内自動車メーカーとの協業が続いている。今回の発表では、パナソニックエナジーが生産する次世代車載用円筒形リチウムイオン電池をスバルに供給し、スバルは群馬県内に新たに建設するBEV(バッテリ電気自動車)専用工場などで、2020年代後半から生産を開始する予定のBEVにパナソニックエナジーから調達した電池を搭載することを視野に入れ、具体的な協議を進めていくことになるという。
パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「多くのOEMからさまざまな要望をもらっており、協議を行なっている」と前置きしながら、「スバルに対する供給責任を果たすために、最も効率がいい日本の生産拠点から供給を行なうことになる。お客さまの需要を考え、拠点や生産能力を捉えながら今後の生産体制の検討を行なっていくが、現時点で決まったものはない」とした。
北米では38GWh相当の生産能力があり、さらに新工場の建設によって生産能力の向上を図る予定であるのに対して、日本国内では12GWh相当の生産能力となっている。国内でのBEV需要が増加すれば、それにあわせた体制づくりも必要になりそうだ。
なお、第1四半期において、パナソニックグループ全体で180億円の戦略投資を行なっており、そのうちパナソニックエナジーに対する投資が約3分の1を占めることも明らかにした。和歌山工場での車載向け4680セルの量産立ち上げや、建設中の米カンザス工場で生産する予定の改良型2170セルの開発などに活用しているという。
パナソニックホールディンクズが発表した2023年度第1四半期のセグメント別業績では、オートモーティブの売上高が前年同期比27%増の3410億円、調整後営業利益が177億円増の56億円となった。パナソニックホールディングスの梅田グループCFOは、「前年同期には上海ロックダウンの影響を受けて自動車生産が大きく落ち込んだが、これが回復してきた。半導体は一部調達に遅れはあるが、だいぶ入ってきている」とし、「増産への対応や人件費高騰による固定費の増加に加えて、半導体などの部材では高騰影響も残っている。だが、部材高騰分の価格改定や、コストダウンへの取り組みなどによって増益になった。オートモーティブ事業の回復には強めの感触を持っている」と総括した。しかし、「生産変動リスクや景気不透明感に伴う自動車需要への影響を注視していく必要がある」と、今後の動向には慎重な姿勢も見せている。
車載電池事業などを行なっているエナジーの売上高は前年同期比5%増の2384億円、調整後営業利益が137億円増の302億円となった。「車載電池はEV需要の拡大継続や、生産性の改善によって生産、販売が好調に推移して増収だったが、産業・民生向けは市況の低迷によって減収になった」と述べた。
今後の見通しについては、「車載電池の主力市場である米国では、EV購入者に対する税控除を背景にしてEV需要が加速しており、北米製の電池セルの需要増を見込んでいる。また、産業・民生では民生機器向けリチウムイオン電池を中心に、需要回復期が下期にずれる見込みである点がネガティブ要素である」と語った。
一方、パナソニックグループ全体の売上高は前年同期比2.8%増の2兆296億円、営業利益は41.9%増の903億円、調整後営業利益は41.2%増の928億円、税引前利益は47.8%増の1087億円、当期純利益は310.5%増の2009億円となり、大幅な増益を達成した。調整後営業利益の増加の背景には、米IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)の影響がある。
米IRA法は、2022年12月31日から施行しているもので、過度なインフレの抑制とエネルギー政策を推進することが狙いだ。具体的には、BEV向け電池などの生産を米国内で行なう企業に対して税控除を実施。パナソニックグループの2023年度第1四半期においては、テスラ向けの車載電池の生産を行なっている米ネバダ州の工場が対象となる。
パナソニックホールディングスの梅田グループCFOは、「米IRAの細則は未確定であるが、当社が受け取る補助金見合いを第1四半期実績の調整後営業利益として計上した。米IRAの主旨に基づき、米国における車載電池事業への投資に活用するとともに、北米事業の強化および拡大に向けて顧客(テスラ)とも有効活用していくことを考えている。そこで補助金総額の半分を調整後営業利益に計上した」と説明した。
2023年度は、車載電池事業の拡大とともにIRAによる補助金がパナソニックグループの業績に大きく影響することは間違いない。また、IRAは2032年度までの10年間に渡って実施される法律である。2030年以降は税額控除の減額が想定されてはいるものの、その影響は長期化することになる点は注視しておく必要がある。
IRA補助金の現金化手段には、「法人税の還付」「直接給付」「第三者への権利売却」があるが、パナソニックグループでは2023年度において「直接給付」の選択を想定している。
また、売上高については顧客との有効活用分の会計処理として、242億円をマイナス計上した。「期初公表時には引当による費用計上を想定していたが、第1四半期の実績では、顧客との有効活用の方法は未確定であるものの、収益認識基準が適用されることから売上高でマイナス計上をした」と説明している。
一方で、調整後営業利益には補助金の450億円の中から、顧客との有効活用見合いの242億円を引き、208億円を計上している。ちなみにパナソニックエナジーでは、第1四半期は増益となっているが、IRA影響を除くと減益になっている。
また、パナソニックグループでは、年間で総額1600億円の補助金を想定し、2022年度第4四半期には400億円を計上していたが、今回は450億円に増額している。この点について、梅田グループCFOは「想定為替レートは1ドル130円を前提としていたが、これが137円となっている。また、販売実績として9.4GWh相当となっており、生産性が高まっている成果もある」とし、第2四半期業績発表時点では為替の見直しや生産性向上の成果を、補助金総額の引き上げの項目に盛り込む考えも示した。
なお、最終利益は第1四半期としては過去最高を達成したが、兵庫県姫路市のパナソニック液晶ディスプレイの解散および債権放棄に伴う繰延税金資産として1213億円を計上したことなどが影響している。