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パナソニック、2022年度の連結決算 オートモーティブの売上高は1兆2975億円、調整後営業利益は142億円と増収増益
2023年5月11日 11:59
- 2023年5月10日 発表
パナソニックホールディングスは5月10日、2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績を発表した。セグメント別業績では、オートモーティブの売上高は前年比22%増の1兆2975億円、調整後営業利益が118億円増の142億円となった。
パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「顧客の自動車生産が回復して増収となった。また、半導体などの部材高騰の影響や、増産対応などの固定費増加があったものの、コストダウン効果や第2四半期からの増販益に加え、下期には部材高騰や為替影響に対する価格改定が進み、増益となった」と総括した。
テスラ向けの車載電池事業などを行なっているエナジーの売上高は前年比26%増の9718億円、調整後営業利益が312億円減の396億円となった。「産業・民生は市況悪化によってICT・民生機器向けリチウムイオン電池や、BtoB向けリチウム一次電池を中心に減販となったが、車載はEV需要の拡大により、北米を中心に生産や販売が拡大。価格改定も寄与して増収となった。また、車載を中心とした原材料高騰、産業・民生の減販損、将来に向けた開発費などの固定費の増加により減益になった」という。
一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)連結業績見通しは、オートモーティブの売上高が前年比6%増の1兆3700億円、調整後営業利益が38億円増の180億円とし、「自動車生産の回復を見込むが、半導体部材不足の継続による生産変動リスクや景気不透明感に伴う自動車需要への影響を注視している」としながら、「為替換算の影響があるものの自動車生産回復や、主に環境車向けインダストリーセグメント商材などの販売増があり増収を見込む。また、インフレ影響による人件費などの固定費増加に加え、車載向け半導体逼迫の継続による部材高騰影響が残る。だが、増販益やコストダウン、部材高騰分の価格改定を進めることで増益を見込んでいる」と述べた。
また、エナジーの売上高は前年比6%増の1兆300億円、調整後営業利益が954億円増の1350億円としており、「車載は主力の米国市場で、EV購入者に対する税控除が始まり、有利に働くことが見込まれる。産業・民生は、昨年からの市況悪化の影響が継続しているが、第2四半期後半からの回復を見込んでいる」とし、「車載は、EV需要の拡大継続や生産性改善により、生産および販売が好調。産業・民生は、足下では市況悪化による減販があるが、年間で増販を見込んでおり、全体では増収を計画している。また、カンザス新工場の立ち上げや、4680セル開発など、将来の成長に向けた固定費増加はあるが、原材料価格や売価反映の期ズレ影響の改善、車載および産業・民生ともに、増産や増販益などが寄与して増益を見込んでいる」という。
今回発表した2022年度業績および2023年度業績見通しにおいては、米国IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)補助金が大きく影響している。
パナソニックグループでは、IRAの中でSection 45Xと呼ばれるEV向け電池などの販売に対する税控除が、エナジー事業において該当することになり、テスラ向けのリチウムイオン電池を生産しているネバダ工場において、販売量に応じた税額控除が行なわれる。現在、建設中のカンザス新工場は、生産および販売が開始される2024年度からIRAの対象になる見込みだ。
IRAは、米国における過度なインフレ抑制とエネルギー政策の推進を趣旨としているため、パナソニックグループでは得られた補助金は北米での電動車の普及のために活用。米国における車載電池事業への投資に活用するとともに、北米事業の強化および拡大に向けて、顧客とともに有効活用していくことを考えているという。
今回発表したパナソニックグループ全体の2022年度連結業績では、売上高は前年比13.4%増の8兆3789億円、営業利益は19.3%減の2886億円、調整後営業利益は12.2%減の3141億円、税引前利益は12.2%減の3164億円、当期純利益は4.0%増の2655億円となったが、このうち2022年度第4四半期において、IRA補助金に法人税還付が適用されることを想定して、補助金見合いの税額控除により当期純利益に400億円を計上した。
また、2023年度連結業績見通しは、売上高は前年比1.4%増の8兆5000億円、営業利益は前年比49.0%増の4300億円、調整後営業利益は前年比36.9%増の4300億円、税引前利益は前年比43.8%増の4550億円、当期純利益は前年比31.8%増の3500億円としており、ここではIRA補助金総額の約半分となる800億円を調整後営業利益として計上。また、繰延税金資産200億円の計上を見込んでおり、IRAによる当期純利益への影響額は1000億円を想定している。その結果、当期純利益は過去最高水準を見込んでいる。
「IRAはいまだに細則が発表されていない中ではあるが、監査法人の判断により、当社が受け取る補助金見合いを2022年度は当期純利益に計上し、2023年度は調整後営業利益に計上した。補助金の現金化手段には、法人税の還付、政府からの直接給付、第三者への権利売却の3種類があり、それぞれ会計処理が異なる。2023年度は政府からの直接給付を選択することを想定している。また、お客さまとの有効活用見合いは、税効果会計の適用項目になるものと想定している」と述べた。単純計算によると、ネバダ工場では年間約13億ドル、カンザス工場では年間約10億ドルの補助金が見込まれる。
一方、決算会見では車載電池事業の取り組みについても説明した。米カンザス州で建設している車載用円筒形リチウムイオン電池新工場は、2022年11月に新工場の整地作業を開始したのに続き、2023年2月から建屋工事を着工。2024年度中に2170セルの量産開始を目指している。
また、2022年12月にルシッドの高級EV「Lucid Air」などに、リチウムイオン電池を供給する契約を締結したのに続いて、2023年4月にはヘキサゴンプルスと北米における商用車向け車載電池供給契約を締結したことにも触れた。
その一方で、4680セルの事業化については、競争力をさらに高める性能向上策を導入するため、日程を再設定し、2024年度上期の量産開始を予定していることを明らかにした。
梅田CFOは、「これまでは4680セルの事業化を2023年度下期中としていた。当初はカンザス新工場で4680セルから立ち上げるとしていたが、2170セルで素早く量産を立ち上げ、需要に対応することを決定した。4680セルについて検討したところ、まだ容量の改善が図れることが分かった。2024年度上期中の生産開始とすることで容量アップを図り、改善した次のステップの4680セルを投入していくことができる」と述べた。
なお、ネバタ工場では約38~39GWhの生産が可能になっており、カンザス新工場では2024年度後半から生産を立ち上げ、2026年度には約30GWhの生産を見込んでいる。また、和歌山工場での4680セルの量産設備への投資も行なっているという。