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パナソニック、米EV「カヌー」に日本から電池供給へ 2021年度上期決算発表会
2021年10月29日 12:07
- 2021年10月28日 発表
パナソニックが10月28日に発表した2021年度上期(2021年4~9月)連結業績において、オートモーティブの売上高が前年同期比28%増の7313億円となり、営業利益は前年の44億円の赤字から、71億円の黒字に転換した。
第2四半期(7~9月)の3カ月間の業績は、売上高が前年並の3576億円、営業利益は78億円減の27億円の赤字となった。
オートモーティブ事業は、車載機器と車載電池で構成されるが、「第2四半期(7~9月)の業績は、車載機器が自動車生産減少の影響を受けて減収減益で赤字となったが、車載電池は円筒形電池の旺盛な需要に対応して増収増益になった」(パナソニック 取締役 専務執行役員兼CFOの梅田博和氏)とした。業績は車載機器と車載電池で明暗が分かれた格好となった。
車載機器は、半導体の逼迫と、コロナの再拡大による自動車の減産に加えて、部材価格の高騰や、輸送費の増加などもマイナスに影響したという。「全世界の自動車メーカーの生産が、半導体調達の遅れなどの影響を受けて減産になっている。パナソニックの立場は、自動車メーカーの需要予測を前提にビジネスを行うことになる」と前置きし、「世界全体を見ても、市場には自動車の在庫がかなり少ないレベルにある。今後は、半導体の調達環境は徐々に回復してくるだろう。自動車を生産でき、市場に供給できれば、購入してもらえる状況にあると見ている。第3四半期以降は、そうした状況変化を織り込んでプラスを見込んでいる。当社自身も材料調達については、日々、フォローしているが、現時点では、なんとか材料はつながっている。当社自身の半導体不足ということではなく、自動車メーカーの半導体不足による減産が影響している」などと述べた。
一方で車載電池の好調ぶりは、テスラ向けの車載電池需要に支えられたものだ。「円筒形車載電池は、旺盛な需要増に対応した生産設備の稼働増が見られいてる。北米工場では、14本目となる新たなラインを8月から稼働させており、これが売上げ増につながっているほか、昨年同期には、北米工場での一部ラインが停止した反動もあり、増収となっている。生産数量の増加は固定費の増加にもつながるが、増販益と材料合理化が寄与して増益になっている」とした。
テスラ向け円筒型車載電池は、日米合同で50GWh相当まで増強する予定であり、そのうち、北米工場では新ラインの稼働と、生産効率の向上によって、38~39GWh相当まで引き上げる予定だという。「車載電池は、黒字を確保するとともに、それなりの増益幅を確保している。5%という利益率に近づいてきている」と述べたほか、「テスラとの間では、主要な材料の値上げ、値下げを反映できる契約になっている。材料価格の高騰の影響よりも、増販益が勝っている状況にある」と、車載電池の増益の背景を説明した。
パナソニックでは、2022年4月からの持ち株会社制へと移行する予定だが、それ前に、2021年10月から、新たなグループ体制へと移行している。今回の決算では、セグメント別通期見通しについては、新たなセグメントで公表してみせた。新たな体制では、オートモーティブが車載機器を担当。エナバーが車載電池とエナジーデバイス、エナジーソリューションを担当することになる。
これによると、2021年度通期のオートモーティブの売上高は前年比7%増の1兆870億円、調整後営業利益は213億円増の120億円、営業利益が218億円増の100億円。エナジーの売上高は前年比25%増の7480億円、調整後営業利益は272億円増の650億円、営業利益が275億円増の610億円とした。
梅田CFOは「車載機器の売上高は、自動車の減産によって下方修正。調整後営業利益も部材高騰や輸送費の増加などにより下方修正する。第3四半期では減産の影響を受けるが、第4四半期に向けて、自動車メーカーも生産量を高めてくるだろう」とした。また、「車載電池は、円筒形電池の需要増により売上高、調整後営業利益ともに上方修正する。生産能力を増強し、拡大するEV需要に対応していきたい」と、さらに高い水準での増収増益の達成に意欲をみせた。
車載電池では、2つのトピックスについても説明した。
ひとつは、すでに本誌でも紹介したテスラ向けに開発している高容量の4680に関して、2021年度中にも、国内拠点に試作設備を導入する予定である点だ。
梅田CFOは、「4680は技術的検証が見えてきた段階にある。試作設備を2021年度中に導入する予定であり、開発を加速していきたい。だが、技術的検証と量産化は、まったく別のフェーズである。テスラからは、早期の実用化に向けて、強い要請を受けている。量産ラインについては、採算性を見極めて、投資判断もしっかり行なっていきたい」と述べた。
パナソニック、テスラ向け高容量車載電池「4680」初公開 アップルEVのバッテリ調達については「可能性は否定しない」
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1361197.html
もうひとつは、米国の新興EVメーカーであるカヌーへの電池供給だ。これは、カヌー側が発表したものであり、パナソニックが公式の場で言及したのは初めてのこと。
梅田CFOは、「カヌーとの協業については事実であり、2022年度から、車載電池を供給していくことになる。パナソニックは、車載用電池の生産拠点を複数持っているが、日本の生産拠点からの供給になるだろう」とした。
また、「パナソニックは、あらゆる可能性を排除せずに、パナソニックが追求する高容量、安全性を評価してくれる企業との話し合いをしていく」と述べ、今後、車載電池の供給先を拡大していく姿勢を示した。
一方、パナソニック全体の2021年度上期業績は、売上高は前年同期比15.5%増の3兆5335億円、調整後営業利益は124.2%増の1998億円、営業利益は108.2%増の2012億円、税引前利益は120.8%増の2057億円、当期純利益は213.2%増の1530億円となった。
オートモーティブ以外のセグメント別業績は、アプライアンスの売上高が前年同期比7%増の1兆2735億円、営業利益は11%減の455億円。ライフソリューションズは、前年同期比4%増の7278億円、営業利益は19%増の253億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比13%増の4255億円、営業利益は前年同期の172億円の赤字から、522億円の黒字に転換。インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比18%増の7010億円、営業利益は同142%増の652億円となった。
パナソニック全体に対する原材料の高騰および半導体不足の影響は大きく、「第1四半期には200億円強だったものが、第2四半期は300億円強のマイナスが発生している。当初は年間で500億円の影響を見込んでいたが、1000億円を超えるレベルで影響があると見込んでいる」と梅田CFOは述べている。
ドラム式洗濯機は、6月後半からの約2カ月間は部品調達の問題と、海外工場の稼働の問題があり、市場に製品を供給することができなかったという問題も発生したという。また、レッツノートやタフブックなどのノートPCも、半導体不足の影響を受けて、需要に対応した出荷ができていない状況が生まれているとした。
なお、パナソニック全体の2021年度(2021年4~2022年3月)連結業績見通しの上方修正も発表。
売上高は7月公表値から3000億円増の前年比9.0%増の7兆3000億円、調整後営業利益は100億円増の30.2%増の4000億円、営業利益は400億円増の同43.1%増の3700億円、税引前利益は400億円増の同41.9%増の3700億円、当期純利益は300億円増となる同45.4%増の2400億円を見込む。梅田CFOは、「売上高は上期までの為替のプラス影響に加えて、インダストリアルソリューションズなどの販売増を反映した。また、調整後営業利益は、原材料価格高騰などのマイナス影響を、増販益や合理化、コスト削減などでカバーすることができる」と述べた。