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パナソニック、2020年度第2四半期決算説明会 テスラ向け車載電池事業の通期黒字化を強調

テスラが発表した車載電池「4680」を開発開始

2020年10月29日 開催

パナソニック株式会社 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏

 パナソニックは10月29日、2020年度上期(2020年4月~9月)の連結業績を発表。そのなかで、テスラが発表している新たな車載電池である「4680」の開発を、パナソニックも開始したことを明らかにした。

 4680は、テスラが9月に開催した「バッテリーデイ」で公開した車載専用バッテリーで、テスラと協業関係にあるパナソニックの動向が注目されていた。

 パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「バッテリーデイで公表された直後から、実際に開発に着手した。パナソニックが持つ高容量化、安全性という強みを生かして、4680の開発を進める。4680の開発は、チャレンジであるが、そこに生かせるノウハウがパナソニックのなかには、かなりあると考えている」とし、「従前からテスラとは様々な電池についての打ち合わせやコミュニケーションを行なってきた。テスラからの強い要請があったこと、目指す姿が一致することから、4680の開発をしっかりとやっていくことにした」と述べた。

 だが、「ビジネスモデルの議論は、現時点では一切ない。どこで作るのか、だれが作るのか、パテントはどうするかといったことはこれから考えていく。しかし、開発と並行しながら、試作ラインなどを作って、検証していくための準備も進めている」と述べた。

 また、「テスラでは、4680に関して、2030年に3TGW/hの生産を達成したいと発表しているが、これは、現在のギガファクトリーに、さらに1ライン増設して到達することになる38~39GW/hの生産能力の80倍になる規模である。生産する場所や求められる能力などを考えると、1社で賄えるものではない。パナソニックは、高容量化、安全な電池という強みを発揮できるところに力を注ぎ、その分野で共創をしたい」とも語った。

 一方、2020年度は、テスラ向け車載電池事業において、通期黒字化を視野に入れていることを改めて強調。「テスラ向け事業は、米国のギガファクトリーの黒字化が定着してきている。米国工場の赤字はない。いまは、さらなる高容量化、ラインの増産をしっかりとやっていくというフェーズに入っている。日本の工場で生産しているテスラ向け電池の黒字化にチャレンジしているが、黒字化に大きなギャップがあるというものではない」と発言。「ギガファクトリーは、現在、32GW/hの生産規模だが、このラインを少しずつ止めて改良していくことで、35GWの体制を敷くことになる。そのため、緩やかな立ち上がりになる。また、2021年度から新たに1ラインを増設する。この結果、2022年には38~39GW/hの生産が可能になる。能力向上、生産増強をしっかりとやっていきたい。今後2、3年で、5%程度の利益率が視野に入る」と述べた。

 パナソニックが発表した2020年度上期(2020年4月~9月)の連結業績において、オートモーティブの売上高は前年同期比24%減の5693億円、営業損失は前年同期の227億円の赤字から183億円改善したが、マイナス44億円の赤字となった。

 また、第2四半期(2020年7~9月)の、オートモーティブの業績は、売上高は前年同期比3%減の3585億円、営業利益は前年同期の127億円の赤字から51億円に黒字化した。

 「オートモーティブは、車載電池が増収となり、車載機器は、注力領域であるIVI(In Vehicle Infotainment) が伸長するなど、商品ポートフォリオの入れ替えが着実に進んだ。だが、ディスプレイオーディオなどの販売減が影響して、セグメント全体では若干の減収となった。また、利益は、車載機器の固定費削減、北米車載電池工場の合理化などによって増益となった」とした。また、「セグメント全体での黒字に加え、円筒形車載電池事業も、全体で黒字を達成した」としており、「今後も高容量化などをさらに進め、パナソニックの強みを最大限に活かして、事業競争力の強化を図る」と述べた。

 新型コロナウイルスの影響については、「オートモーティブの売上高は、4月から5月にかけて、半減していたが、顧客である自動車メーカーの生産増加に伴い、急回復している。第2四半期は、想定より早く回復した」と語った。

 パナソニックでは、中期計画における重点課題のひとつとして、車載事業の収益改善に取り組んでいるが、上期実績では280億円の改善効果があったという。

 「上期280億円のうち、223億円が第2四半期で改善している。そのうち、3分の1が車載電池関連での改善。テスラ向けの円筒形電池事業が黒字化したことが増益要因となっている。また。残りの3分の2が車載機器関連での改善になった」とし、「車載機器事業では、顧客に日系および米系自動車メーカーが多いことが回復の要因になっている。また、車載機器の開発費のピークは2019年度であり、それが過ぎている。販売が戻れば収益が安定してくると見ており、この第2四半期では、それが顕著に出た。苦戦している欧州系自動車メーカー向けビジネスは、2020年度以降も若干影響があるが、全体では改善していくだろう」とした。

2020年度上期(2020年4~9月)連結業績

 パナソニック全体の2020年度上期(2020年4~9月)連結業績は、売上高は前年同期比20.4%減の3兆0591億円、営業利益は31.1%減の966億円、税引前利益は32.4%減の931億円、当期純利益は51.6%減の488億円となった。

 また、第2四半期は、売上高は前年同期比14.6%減の1兆6673億円、調整後営業利益は1.0%増の650億円、営業利益は10.6%増の928億円、税引前利益は10.3%増の901億円、当期純利益は14.9%増の587億円となっている。

第2四半期(2020年6月~9月)決算

 パナソニックの梅田CFOは、「第2四半期の売上高は、非連結化影響やコロナ影響により、減収となったが、オートモーティブやアプライアンスなどの改善により、第1四半期からの回復が顕著となった。調整後営業利益は、固定費削減の取り組みが着実に進捗して増益になった」と総括した。

 オートモーティブ以外のセグメント別業績は、アプライアンスの売上高が前年同期比13%減の1兆1911億円、営業利益は4%減の510億円。ライフソリューションズは、前年同期比30%減の6955億円、営業利益は前年同期比48%減の214億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比27%減の3766億円、営業損失は前年同期の363億円の黒字から、173億円の赤字。インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比9%減の5965億円、営業利益は64%増の270億円となった。

 なお、2020年度通期の連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比13.2%減の6兆5000億円、営業利益は48.9%減の1500億円、税引前利益は48.5%減の1500億円、当期純利益は55.7%減の1000億円とした。

 パナソニックでは、新型コロナウイルスの影響を踏まえた新たな事業機会への取り組みとして、「公衆衛生、空調空質に関する需要の高まり」「情報通信インフラへの投資拡大」「欧州でのグリーンリカバリー政策などの後押しによるEV需要の拡大」「サーバーやICT端末などの生産設備重要の拡大」の4点をあげているが、「グリーンリカバリー政策などの後押しによるEV需要の拡大」においては、円筒形車載電池のさらなる高容量化をあげ、「需要が高まる商品の拡充や強化、増産対応を着実に進めていく」としている。