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パナソニック、2019年度決算を発表。当期純利益は20.6%減の2257億円

オートモーティブは市況の減速や新型コロナウイルスの影響もあり305億円の赤字

2020年5月18日 開催

パナソニックの2019年度 連結業績

 パナソニックは5月18日、2019年度(2019年4月~2020年3月)連結および単独決算概要について発表した。2019年度の連結業績は、売上高は前年比6.4%減の7兆4906億円、調整後営業利益は12.3%減の2867億円、営業利益は28.6%減の2938億円、税引前利益は30.1%減の2911億円、当期純利益は20.6%減の2257億円となった。ROEは11.5%。

 そのうち、オートモーティブの売上高は前年比3%減の1兆4824億円、調整後営業利益は187億円減となり、305億円の赤字。車載電池の増産投資効果があったものの、市況の減速や新型コロナウイルスの影響、車載機器の製品サイクル移行期による減販をカバーできずに減収となった。また、営業利益は円筒形車載電池の北米工場が、第3四半期に引き続き第4四半期も黒字化を達成し、収益性を大きく改善したが、角形車載電池の固定費や欧州充電器件名の開発費の増加、のれん減損などによって減益になった。

オートモーティブの売上高は前年比3%減の1兆4824億円、調整後営業利益は187億円減となり、305億円の赤字

 パナソニックの梅田博和 取締役常務執行役員兼CFOは、「ロックダウンの影響もあり、モデル3の生産を行なっているテスラのフリーモント工場が停止している。そのため、テスラ向けの円筒形車載電池を生産するギガファクトリーでは、テスラの中国工場向けに電池の生産を断続的に行なってきた。2020年4月の生産量は半分程度になっている」としながらも、「今はフリーモント工場が再稼働しており、それに同期する形で、ギガファクトリーも稼働を開始している。ただ、従業員が新型コロナウイルスの感染に恐怖を感じており、従業員が出社して勤務してもらえるように対策を取っているところ」とした。

 また、ギガファクトリーの生産能力については、「2020年3月末で、32GW/hの生産量にまで達した。35GW/hの生産能力については、すでに設備は入っているが、今後、材料のレシピの改善と技術革新の取り組みを2020年度中に行なうことになる。また、品質ロスの削減にも取り組む。新型コロナウイルスの影響で立ち上げ自体は遅れているが、2021年度には35GW/hの生産量を目指すことになる。第3四半期に続き、第4四半期も黒字化した。これをしっかりと収益化していく」と述べ、ギガファクトリーでの角形電池生産が、いよいよ収益事業に転換し始めたことを強調した。

 また、さらなる増産計画についても触れ、「いまは35GW/hの立ち上げに集中しているが、テスラからは強いデマンドをもらっている。新型コロナウイルスの影響などを見ながら、次の生産量に向けて協議している段階にある」と述べた。

テスラのフリーモント工場

 なお、車載用角形電池事業については、2020年4月1日付でトヨタ自動車と合弁でプライムプラネットエナジー&ソリューションズを設立したことを報告。「トヨタの電動化をサポートしていく」と述べたほか、車載機器については「充電器の開発費が当面のしかかるが、インフォテインメント系機器の開発投資はピークを過ぎており、今後収益化する」との見通しを示した。

 一方、セグメント別業績では、アプライアンスの製販連結の売上高が前年比6%減の2兆6493億円、調整後営業利益は130億円減の682億円。ライフソリューションズは、売上高が前年比6%減の1兆9125億円、調整後営業利益は82億円増の981億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年比8%減の1兆357億円、調整後営業利益は237億円減の762億円。インダストリアルソリューションズは、売上高が前年比10%減の1兆2827億円、調整後営業利益は259億円減の376億円となった。

アプライアンス
ライフソリューションズ
コネクティッドソリューションズ
インダストリアルソリューションズ
2019年度のセグメント別実績(年間)
2019年度のセグメント別 売上高・営業利益の増減要因(対前年比)

 パナソニックの梅田取締役常務執行役員兼CFOは、「全社売上高は、事業ポートフォリオ改革、中国での投資需要低迷に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減収となった。また、調整後営業利益は固定費削減などは着実に進捗したものの、減販損によって減益。営業利益および純利益は、事業構造改革費用などにより減益となった。だが、フリーキャッシュフローは大幅改善し、資金は十分な流動性を確保している」と総括。「2019年度は、事業ポートフォリオ改革の着実な実行と、経営体質の強化という2つの成果があった。赤字事業については方向付けを進め、固定費削減の取り組みを進めるとともに、フリーキャッシュフローについては大幅に改善した。低収益体質からの脱却に向けた取り組みが継続、推進できた」と振り返った。

 2020年度(2020年4月~2021年3月)の連結業績見通しについては、「新型コロナウイルスの影響により不確実性が高い。合理的に算定することが可能となった時点で開示する」として、数値目標などは公表しなかった。

 梅田取締役常務執行役員兼CFOは、「黒字化が急務である車載事業については、車載機器の開発費抑制や円筒形車載電池の増販、生産性改善といった収益改善に取り組む」と述べ、「事業ポートフォリオ改革についても着実に推進していく。経営環境は、新型コロナウイルスの感染拡大などにより不透明性が増しているが、低収益体質からの脱却に向けた取り組みは着実に進めていく。固定費削減や赤字事業への対策など、経営体質強化を継続的に進めていく」と語った。

 また、「2020年度第1四半期には、自動車、航空業界などの市況低迷が見られ、自動車メーカー各社からも先行きが厳しいという見通しが出ているが、地域によって差があると捉えている。欧州やアジアは落ちているが、中国や日本では、そこまでの大きな落ち込みはない。北米でも経済の回復次第で、ある程度は戻ってくるだろうと見ている。パナソニックが自動車産業の中でなにを担っているのかが重要である。落ちるものと落ちないものがある。新型コロナウイルスの市場への影響度合いをしっかりと把握していきたい」とし、EV(電気自動車)の領域でビジネスを行なっているパナソニックの優位性を示してみせた。

 一方で、航空機向けのインフライトエンターテイメント事業や機内Wi-Fiシステムなどを提供するアビオニクス事業については、「2020年4月時点では、大きな落ち込みはないが、今後、人の移動がどうなるかが読めないため結構な影響が出てくるだろう。飛行機に搭載するシステムの事業は減少するだろうが、高収益部分を占めるサービスやメインテナンスのビジネスをしっかりと進めたい」と語った。

 なお、新製品の開発については、「全体的に新製品の開発は、1~2か月ほど遅れている状況にあるが、さまざまなツールを活用してリモート環境からの開発を進めている。日を追うごとにこの仕組みにも慣れているが、試験設備を使って実験検証をする場合は、バーチャルでやることは難しいという実態もある」と述べた。

 会見では、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策についても触れ、「ステークホルダーの健康と安全確保、社会への貢献、事業継続性の確保の3点から取り組む」と語り、「各国、地域の法令や方針に従い在宅勤務や工場での感染予防対策など、感染症拡大防止を最優先とした取り組みを実行する一方、グループのリソースを活用して、各国の状況に応じた製品やサービス、医療物資の提供などを行ない、社会の不安解消に寄与していく。さらに、社会的責任を遂行するため工場での生産、サプライチェーンの維持や確保、新型コロナウイルスの影響の長期化に備えた資金の流動性確保など、あらゆる観点で事業継続性のための対応策を進める」と述べた。

新型コロナウイルスの感染拡大への対応策について