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パナソニック、2022年度上期連結業績 米カンザス州の車載用円筒形リチウムイオン電池新工場についても解説

2022年10月31日 発表

パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

 パナソニックホールディングスは10月31日、2022年度上期連結業績を発表。その中で、パナソニック エナジーが米カンザス州デソトにおいて、車載用円筒形リチウムイオン電池新工場の建設を正式決定したことについて説明した。2022年11月から工場建設を開始し、2024年度中に生産を開始することになる。また、生産するのは2170セル電池であり、初期生産能力は年間約30GWhを目指す。

 パナソニックグループでは、2022年7月に車載用リチウムイオン電池工場の建設計画をカンザス州の投資誘致補助金制度である Attracting Powerful Economic Expansion(APEX)に申請し、カンザス州が承認したことを発表していた。40億ドル以上の投資が見込まれ、最大4000人の新規雇用が生み出せると想定している。

米国カンザス州新工場について
カンザス州新工場建設用地

 パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「2170セル電池から作り出すのは、一刻も早く電池が欲しいという顧客側からの強い要請によるもの。そこで、確実にスピード感を持って立ち上げることができる2170セル電池から生産を開始する。Panasonic Energy Corporation of North America(PENA)がネバダ州で展開しているギガファクトリーと同じものでやるわけではない。もっと作り込んだ生産ラインになる」などと述べた。ギガファクトリーでの生産性向上などの成果を新工場に反映することになりそうだ。

 また、開発を進めている4680セル電池の新工場での生産については、「4680セル電池を作る可能性は当然ある」としたものの、「4680電池は現在、和歌山工場において当初計画通りに量産化に向けた検証を続けているところ。和歌山工場は、建屋の改修を行なっている段階であり、検証ラインはほかの場所でやっている。4680の量産検証は予定通り進んでいる」と述べるに留まり、カンザス新工場での具体的な生産計画については触れなかった。

 4680セル電池は、和歌山工場での量産検証を通じて生産性、採算性を見極める予定で、2022年5月からパイロットラインを稼働しており、すでに顧客へのサンプル納入を開始しているという。

円筒形車載電池。左から1865、2170、4680

 なお、カンザス州の新工場への40億ドル以上の投資額については、カンザス州のAPEX申請のための条件として提示したものであり、年間約30GWhの生産能力を実現するための投資額であるかどうかについては回答を避けた。

 現在、パナソニック エナジーでは、日本および米国で50GWhの生産能力を持っており、ここにカンザス州の新工場の30GWhが加わることになる。カンザス州の新工場での将来的な生産計画については、「今後のプランはあるが、決まったことはない」とした。また、一部報道では米オクラホマへの新工場建設計画が取り沙汰されているが、「カンザス州の工場以外で30GWhの生産能力の工場を建設する以外、決まったものはない。パナソニックグループからは現時点では何も発信していない」と述べた。

カンザス州の工場以外で30GWhの生産能力の工場を建設する以外、決まったものはないとした

 一方、パナソニックホールディングスが発表した2022年度上期(2022年4~9月)連結業績では、車載コクピットシステムや車載エレクトロニクス事業を担当するオートモーティブ事業と、車載電池および産業・民生向け電池を担当するエナジー事業のセグメント別業績も発表した。

 オートモーティブ事業における上期の売上高は前年同期比19%増の5926億円、調整後営業利益が前年同期比95億円減のマイナス120億円の赤字となった。また、第2四半期(2022年7~9月)の売上高は前年同期比36%増の3230億円、調整後営業利益が前年同期比47億円増の1億円と黒字転換した。

 パナソニックホールディングスの梅田副社長兼CFOは、「第1四半期はロックダウンによって、自動車メーカーの生産が停止した影響があったものの、第2四半期は自動車生産が回復し、プラスになった。また、第2四半期は材料高騰分を反映した価格改定、コストダウンなどがプラスに影響した」という。

オートモーティブ事業における上期の売上高は前年同期比19%増の5926億円、調整後営業利益が前年同期比95億円減のマイナス120億円の赤字
オートモーティブ事業では自動車生産が回復するとともに、為替換算もあり増収

 また、2022年度の通期見通しを修正。2022年5月公表値に比べて、売上高は200億円増の前年同期比21%増となる1兆2900億円と上方修正したものの、調整後営業利益は80億円減と下方修正し、前年同期比76億円増の100億円を見込む。「売上高は為替換算によって上方修正したが、自動車生産減少の影響により、為替を除く実質ベースでは当初見通しから減少することになる。調整後営業利益は部材高騰や為替の影響に対し、価格改定などを進めるが、第1四半期の減販損の影響が大きく下方修正することにした」という。実質的には売上高、調整後営業利益ともに下方修正するという厳しい内容だ。

 一方、エナジーの売上高は前年同期比24%増の4698億円、調整後営業利益が83億円減の304億円となった。また、第2四半期では、売上高は前年同期比28%増の2420億円、調整後営業利益が52億円減の139億円となった。「第2四半期には、パソコンやゲーム機などの民生向けリチウムイオン電池において市況が悪化したが、価格改定に加え、北米車載電池における生産性向上および2021年度の新ライン増設による増産効果もあり増収となった。また、円安効果はあったものの、原材料や物流費の高騰に加え、増産に伴う固定費や開発費の増加によって減益になっている」と述べた。

 だが、2022年度の通期見通しは、2022年5月公表値に比べて売上高は1050億円増と大幅に増加させ、前年同期比23%増となる9530億円、調整後営業利益は前年同期比138億円減ではあるものの、5月公表値から20億円増の570億円といずれも上方修正した。「売上高は、民生向けリチウムイオン電池の減速はあったが、価格改定や為替換算により上方修正した。また、調整後営業利益は原材料のさらなる高騰はあるが、価格改定でカバーしたこと、円安効果がプラスに働いたことで上方修正した」という。

2022年度 セグメント別見通しの修正
エナジーの売上高は為替換算に価格改定も加わり増収

 さらに第4四半期には、米国におけるIRA(インフレ抑制法)の成立に伴う補助金収入が想定される。この見込みは現時点では上方修正値に織り込んでいない。梅田副社長兼グループCFOは、「現時点ではIRAの細則が定まっていないため、未確定な部分が多く影響を織り込んでいない」としたが、「確定したものではないが、かなりの確率で第4四半期にパナソニック エナジーにプラスで入ると考えている。PENAの工場が対象になり、35ドル/KWhの補助金がある。単純計算すると、調整後営業利益で400億円近い規模のプラスが想定される」とした。エナジー事業の通期業績見通しはさらに上乗せされることになりそうだ。

 なお、パナソニックホールディングス全体の2022年度上期連結業績は、売上高は前年同期比15.0%増の4兆639億円、営業利益は25.6%減の1497億円、調整後営業利益は27.0%減の1459億円、税引前利益は19.0%減の1666億円、当期純利益は29.9%減の1073億円。また、上期連結業績は売上高は前年同期比20.0%増の2兆900億円、営業利益は11.1%減の861億円、調整後営業利益は前年並の802億円、税引前利益は4.3%減の931億円、当期純利益は23.7%減の584億円となった。

 さらに、全社通期業績見通しは、売上高は2022年5月公表値から3000億円増とし、前年比11.0%増の8兆2000億円、営業利益は400億円減の前年比10.5%減となる3200億円、調整後営業利益は400億円減として前年比6.2%増の3400億円、税引前利益は300億円減の前年比8.4%減となる3300億円、当期純利益は250億円減とし、前年比8.0%減の2350億円とした。

2022年度 2Q累計 連結業績
2022年度 連結業績見通しの修正