ニュース

パナソニック オートモーティブシステムズ、2030年に向けた方向性を示す事業方針説明会

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 代表取締役社長の永易正吏氏

 パナソニックでオートモーティブ事業を担当するパナソニック オートモーティブ社は、パナソニックが、2022年4月1日付で、パナソニックホールディングを持株会社とする会社分割を行なったことにあわせて、パナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)株式会社を発足し、新たな体制で事業を開始した。

 新会社では、「コックピット統合ソリューション」と「車室空間ソリューション」を重点領域に位置づけ、車載インフォテインメントシステムやHMI(ヒューマンマシンインターフェース)システム、車載エレクトロニクス、自動車用ミラー、BMC(バッテリ・マネジメント・コントロール)などの電動化システムなどの開発、製造、販売を担当する。

パナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)株式会社を発足して新たな体制で事業を開始した

 4月1日付で発表した事業方針では、具体的な数値目標などは公表しなかったが、2022年度~2024年度までの中期計画においては、オペレーション力の強化に集中するとともに、資金力および収益力を強化。自走できる経営体質の実現に取り組む姿勢を明らかにした。

 オペレーション力の強化では、受注、開発、量産のすべてに高い目標を設定。商品力強化の仕組みと変化対応力を磨き、その仕組みを根づかせる考えを示した。また、開発の効率化に取り組み、ソフトウエアによる先行的な開発を、全事業部と多くのハードウエアに展開。さらに、「設計・製造・調達連携」「SCM改革」「製造のムダ取り」を、今後の変革の3つの柱に位置づけた。

 また、今後の方向性として、「車の進化に貢献」「一人ひとりに寄り添った価値を提供」「体験価値をさらに進化、くらし領域への展開」の3点をあげ、「モビリティ社会、車の進化に貢献するとともに、パナソニックが培った技術と知見を生かし、多様なお客さまの一人ひとりに寄り添った価値を提供する。さらに、その体験価値を進化させ、くらし領域への展開を目指す」としている。

パナソニックオートモーティブシステムズの2030年に向けた方向性

「車の進化に貢献」では、コックピット統合ソリューション事業において、CDC(Cockpit Domain Controller)を核に、システムとデバイスの両輪で、先進コックピットのUX(ユーザーエクスペリエンス)価値を創出。EVソリューション事業では、パワーエレクトロニクス技術の活用や、軽量化、電費改善を実現するデバイスで、EVの普及に貢献することを掲げた。

 パナソニック オートモーティブシステムズの永易正吏社長は「お客さまとの強い共創関係の構築に向けて、提供価値を磨き、事業競争力を高める。主要事業については、グローバルトップ3、あるいはニッチトップを目指し、さらなる車の進化をけん引していく」と述べた。

 また、「一人ひとりに寄り添った価値を提供」では、コックピット領域においてパナソニックらしい新たなUX価値や移動体験価値を提案し、商品化および事業化を進め、車室空間ソリューションでは、事業テーマ探索のフェーズから、事業化フェーズへと移行させるほか、「体験価値をさらに進化、くらし領域への展開」では、モビリティ社会の変革を目指した新サービス事業の創出を目指すとした。2022年4月に、新事業推進室を発足させることも明らかにした。

 加えて「パナソニックグループの使命は、『物と心がともに豊かな理想の社会』の実現への貢献であり、新会社のスタートにあたり、パナソニックグループの経営基本方針に立ち返る。カーメーカーのさまざまな立場の方から、チームとしての期待、応援の声をいただいており、この期待に応えるべく、さらに強固なパートナーシップを目指す」と述べた。

 さらに、パナソニックオートモーティブシステムズのミッションとして、「一人ひとりのよりよいくらしの実現のため、持続可能なモビリティ社会を創造する」を掲げ、ビジョンでは、「愛を持って人に寄り添い、卓越した技術と知恵で新たなユーザー価値を想像し、より快適で安心安全な移動空間の実現により、人に幸せをもたらし続ける最高のチーム、最高のパートナーになる」を打ち出した。

「環境問題や都市化に伴う渋滞問題、交通死亡事故の撲滅に加えて、コロナ禍では安全な移動空間という課題にも気づかされた。これを含めて社会課題を解決し、持続可能なモビリティ社会を実現、創造することを目指す」という。

 また、「パナソニック オートモーティブシステムズは、愛があふれる会社にしたい。愛があるからこそ厳しいことも言い合えて、コミュニケーションが取れる。チームワーク経営により、最高のチーム、最高のパートナーになることを目指し、ワクワク感と一体感を持ち、お客さまやサプライヤーなどとの共存共栄を図る。人に寄り添うことが、私たちの考えや行動のバックボーンになっており、これまで培ってきた技術や、パナソニックらしい家電技術の車載化などに取り組み、カーメーカーの先にあるすべてのユーザーに価値を提供していきたい」としている。

パナソニック オートモーティブシステムズのスローガン「Heartmotive~こころ動かす出会いを創り続ける~」

 スローガンには、「Heartmotive~こころ動かす出会いを創り続ける~」を打ち出している。「Heartmotive は、HeartとAutomotiveを組み合わせた造語であり、一人ひとりの移動にストレスフリーな環境を提供したいという思いを込めた言葉である」としている。

 なお、パナソニックグループでは、2022年6月に、機関投資家、証券アナリストを対象にしたIRDayを開催する予定であり、その際に、パナソニックオートモーティブシステムズの経営指標が明らかになりそうだ。

 一方、パナソニック オートモーティブシステムズの環境目標についても発表した。

 パナソニックグループでは、「Panasonic GREEN IMPACT」を打ち出し、2030年までに、自社のCO2排出量の実質ゼロや、自社バリューチェーンにおけるCO2排出量を1.1億トン削減する目標などを掲げているが、「自社のCO2排出量の実質ゼロ、社会に対するCO2削減貢献において、パナソニックグループの牽引役を果たす」と述べた。

 具体的には、全社員による省エネルギーの取り組みや、再生可能エネルギーの利活用、再生可能エネルギー100%由来の電力による運営などにより、2022年度中の自社のCO2排出量実質ゼロ化の達成を目指すという。また、自社および顧客のCO2削減に貢献するソリューションの提供などを通して、事業の競争力を高めるとともに地球環境への貢献を果たすとした。

 なお、2021年度の成果については、主要カーメーカーからの受注が、目標を超える実績になったこと、2022年度からの次期中期計画において、同社の事業を支える受注を多数獲得したことを示し、「コロナ禍において、創意工夫を凝らした取り組みを実施し、各カーメーカーのニーズに合わせたWeb展示会、先行技術開発、パートナー連携、受注件名の量産および納入を開始できた」などと総括した。

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 代表取締役社長の永易正吏氏