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パナソニック、マツダ「CX-60」に採用されたフルディスプレイメーターについて解説 「ドライバーがワクワクできる表現にこだわった」

2022年10月13日 開催

マツダCX-60に採用されたフルディスプレイメーター

ドライバーが運転時に見やすく認知しやすい表現を3Dグラフィックスで実現

 パナソニックオートモーティブシステムズは10月13日、マツダ「CX-60」に採用されたフルディスプレイメーターについてプレスセミナーを実施した。

 このメーターは同社がマルチメディア事業で培ったノウハウを投入して開発したモノで、スペック的には12.3インチ(1920×720ピクセル、32bitフルカラー)の高精細・高解像度ディスプレイを採用。ゲームやスマホなど異業種から合流したエンジニアによるGUI(Graphical User Interface)専門チームなどにより、ドライバーが運転時に見やすく認知しやすい表現を3Dグラフィックスで実現しているのが特徴。

 搭載されるCX-60はマツダが満を持してリリースした新世代ラージ商品群のトップバッター。この9月に発売されたばかりの新型車で、マツダとしては初のフルディスプレイメーター採用モデルとなる。最大で5つ用意されたドライブモードごとの変化やグラフィカルな運転支援システムなど、フルディスプレイメーターならではの表現を実現している。

正面
背面
CX-60(プロトタイプ車)のインパネ。中央のディスプレイは他のサプライヤーによるもの
メーター表示
針の周囲を光らせるなどグラフィックスならではの表現を採用。文字と重なった際の見やすさも向上している
スピードメーター以外の情報も表示可能に
ドライブモードにより異なる表現を採用

2010年から事業化の検討をスタート

パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社 HMIシステムズ事業部 ディスプレイビジネスユニット ビジネスユニット長 池田修一氏

 セミナーではまず、パナソニックオートモーティブシステムズ HMIシステムズ事業部 ディスプレイビジネスユニット ビジネスユニット長 池田修一氏が登壇。メーター事業の概要について説明した。

 同社では従来カーナビなどカーマルチメディアを主力としていたが、安全運転支援の充実やクルマの電動化に伴い、コクピット領域とマルチメディア領域が統合されつつあることから、そのキーデバイスとなるメーターは不可欠のピースとなると判断。2010年から事業化の検討をスタートしたという。

 ただ、メーターは重要保安部品であることから開発、量産実績がないサプライヤーが参入するにはハードルが高い市場。半面、ディスプレイ化が進むことで、AV機器や携帯電話で培ってきたグラフィックやディスプレイ、インターフェースなどの分野、そしてカーナビなど車載機器の大規模な開発経験といった強みを活かし、2016年にマツダへの提案を開始。マツダにとっても初のフルディスプレイメーターとなることから、従来の物理(針)メーターにはできない提案を行なうことで新型車への搭載が決定。「パートナーに選んでいただいて大変光栄に思っている」と述べた。

組織体系
HMIシステムズ事業部が目指す提供価値
商品展開
メーター事業参入の流れ

 続いてパナソニックオートモーティブシステムズ HMIシステムズ事業部 ディスプレイビジネスユニット 第四商品部 PM課 課長 近藤亮氏が登壇。

パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社 HMIシステムズ事業部 ディスプレイビジネスユニット 第四商品部 PM課 課長 近藤亮氏

 CX-60向けフルディスプレイメーターの特徴として「高品位なグラフィックスにより立体感や奥行きを感じる3D立体視像」「ドライブシーンに応じたシームレスな表示モード切替」「大画面ディスプレイを活かしたドライバーに分かりやすい運転支援表示」の3点を挙げた。

 1つ目はフルディスプレイメーターならではの部分。メーターはドライバーがクルマに乗り込んだときに一番最初に目にするデバイスであることから、ドライバーを魅了する表現を実装。例えばオープニングでは「波打つようなドットの表現」~「クルマが正面を向いて光が走ってくるような表現」など、ドライバーがワクワクできる表現にこだわったと説明。走行時のスピードメーターに関しても従来型メーターで求められた「見やすい、分かりやすい」だけではなく、針の描画はもちろんその周囲を彩るような描画を加えることでフルディスプレイメーターならではの表現を目指したという。

 2つ目はモード表示。CX-60には最大で5つの走行モードが用意されていることから、「グラフィックを使って大きな画面でダイナミックな遷移」「アニメーションを使ってシームレスに動く」ことに注力。ドライバーの好みやクルマの状況に応じて、さまざまな運転体験を提供できるような画面を実現している。

 3つ目は運転支援システム関連。このモードでは画面中央に自車を大きく表示するとともに、前方車両や車線情報を提示することで安全・安心を感じながら運転できるという。「外の環境といかに連動して動くか」「道のカーブの形状や前車との距離感」を違和感なく表示することに注力したそうだ。

CX-60向けフルディスプレイメーターについて
特徴1。高品位なグラフィックスにより立体感や奥行きを感じる3D立体視像
特徴2。ドライブシーンに応じたシームレスな表示モード切替
特徴3。大画面ディスプレイを活かしたドライバーに分かりやすい運転支援表示
CX-60向けフルディスプレイメーターの紹介(2分44秒)

 また、メーター開発にあたっては両社の強みを活かしつつマツダの設計およびデザイン部門、そしてパナソニックが“One Team”となって共創。マツダの本拠地となる広島にメーター専任の開発チームを置くことで連携を強化し円滑化を図るとともに、パナソニックの本拠地となる横浜ではゲームやスマホ開発など異業種から合流したエンジニアを交えたGUIチームを結成。両社が一丸となって開発を進めることで、高い完成度を持ちながら開発期間の短縮やコスト低減を実現しているという。その結果、マツダからサプライヤーに送られる「開発技術優秀賞」を受賞している。

両社の強みを活かして開発
GUIプロフェッショナルチームを結成
One Teamでの開発活動を実施
開発技術優秀賞を受賞

 パナソニックといえば液晶パネルのイメージがあることから、パーツとしてメーターパネルが採用されたような印象を受けるかもしれないが、CX-60ではシステムとしてのフルディスプレイメーターの採用。今回、メーターパネルを構成する各種デバイスやSoCは他のサプライヤーから調達しているそうで、そこにグラフィックやユーザーインターフェースなどソフトウェア部分をプラスすることで、1つのシステムとして仕上げているわけだ。

 セミナーでは今後の展開についての言及はなかったものの、メーター内のGUIにも関わっていることから、マツダの新世代ラージ商品群についても同商品が搭載されるのは必然といえる流れ。ユーザーがこのメーターを目にする機会も増えていきそうだ。