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マツダ、新型「CX-60」開発主査の和田宣之氏に聞く 特徴や目指したものとは?

2022年9月15日 発売

9月15日に正式発売となったマツダの新型クロスオーバーSUV「CX-60」

第7世代のラージ商品群のトップバッターとなるCX-60

 近年のマツダは、同じ企画から生まれたラインアップを1つの商品群として総称をつけてきた。当初は社内で呼ばれてきた総称だったが、最近は一般的にも知られるようになっている。2012年に発売が始まった初代「CX-5(KE型)」を皮切りにした新世代商品群の総称が「第6世代」と言われていて、2019年に登場した「MAZDA3」以降は「第7世代」と呼ぶ。第6世代と第7世代の中間に位置するのが2017年にフルモデルチェンジした2代目CX-5(KF型)からのモデルで、これらのラインアップは「第6.5世代」と言われてきた。

 そして新たな企画のもとで作り上げられたニューモデルが「CX-60」で、今後登場していくCX-60より大型のモデルは「第7世代ラージ商品群」という総称になる。そのため発売当初は第7世代という総称だったMAZDA3やCX-30は「第7世代スモール商品群」というのが正しい呼び方になる。

CX-60はFRレイアウトのプラットフォームに、幅広いユーザーが選択できるようにとPHEV、48Vマイルドハイブリッド、ディーゼルターボ、ガソリンと4つのパワートレーンを設定している

 エンジンレイアウト、パワートレーン、シャシー、サスペンション形状などすべてにおいて新しい技術を投入されたCX-60は、ラージ商品群の急先鋒で、このモデルが担う役割は非常に大きい。そこで、開発主査を務めた和田宣之氏にブランニューとなったCX-60の特徴や目指しているものを伺った。

マツダ株式会社 商品本部 副本部長兼CX-60開発主査 和田宣之氏。入社から長年にわたって商品企画の業務を担当し、CX-60を皮切りにした第7世代ラージ商品群の企画も担う。その後、商品本部でMAZDA2の開発主査を務める。2019年秋にCX-60の開発主査に任命され、すべてが刷新されたニューモデルの市場導入を担当

 和田主査が行なったプレゼンテーションでは、実際にゼロ発進から加速していくCX-60の室内でのサウンドを流し、人の気持ちに響く領域として“音とリズム”を挙げていたが、これはいったいどういう意味なのだろう。

CX-60の大きな訴求ポイントが音とリズムだという

「CX-60はエンジン、トランスミッション、ハイブリッド、電動化、AWD、シャシーなどなど凄い技術が集まっています。ある人はPHEVで売るんだよね。ある人は電動化を売りにするんでしょ。あるいは走る歓びを訴えるという人もいました。これらの特徴はもちろんですが、CX-60を訴求するときのメッセージを作り出すのが私の役割でもあります。あるとき趣味として楽器にかける値段を聞いて驚いたことがありました。また、誰しも好きなアーティストに対しては高価なお金を払っていて、これだと思ったのです。CX-60はこれまでの商品ラインアップよりも高価格帯になるので、『音とリズム』というのがポイントになるのではと考えました。音というのは聞こえてくるサウンドだけでなく、音を消す静粛性も含まれています。サウンドと静粛性を併せて音と考えています。CX-60は直列6気筒を搭載しているので、6気筒としての心高ぶるサウンドにこだわりましたが、4気筒のプラグインハイブリッドもしっかり仕上がっています」と、さまざまなパワートレーンやシャシーなど、最新技術が満載のCX-60はセールスポイントが沢山あるが、和田主査はその中でも「音とリズム」を訴求ポイントとしてとらえていた。

ATの発進応答性と変速応答性
新開発のトルコンレス8速AT
新開発の直列6気筒3.3リッターディーゼルターボエンジンや、直列4気筒2.5リッターガソリンエンジンに、新たに開発したトルクコンバータレスの8速ATを組み合わせ、エンジンサウンドに合わせてキレのあるリズミカルな変速を行ない、運転する楽しさと気持ちよさを追求している

 ラージ商品群のトップバッターとなるCX-60だが、企画としてはどのような立ち位置となっていたのだろうか。「ラージ商品群の最初のモデルとしてCX-60の最大の役割は、マツダブランドのレンジを拡げることです。そのためだけに起こした企画といってもいいかもしれません。レンジを拡げようと考えたときに、現行で培ってきたFFベースのプラットフォームでは限界があると考えたのです。そこで、これからの環境対応や電動化を考慮するとFRの縦置きレイアウトという案が挙がってきたのです。もし横置きのままでCX-60のラインアップを完成させたとすると、ボディサイズを含めて相当苦労したのではないでしょうか。縦置きにしたことで6気筒化も可能となり、プレミアムの本場である欧州でも武器を持ち、現状ではビジネスの中心となっている馬力が優勢のアメリカでも戦える性能を持てたと思っています。グローバルで評価されることや環境性能との両立などを考えるとFRプラットフォームしかなかったと思います」と和田氏。電動化やハイブリッド、出力などを考慮するとエンジン縦置きのFRプラットフォームが必然となったようだ。

エンジンを縦置きにしたことにより、これまでとは異なる商品群を開発できるようになったという
新たな市場として高価格帯へレンジを拡げた
CX-60のグレード設定

 欧米ではプレミアムブランドとの勝負となるが、国内仕様の価格は4気筒ガソリンエンジンの299万2000円から、PHEV(プラグインハイブリッド)の624万4500円と非常に幅が広い。この設定について和田氏は「日本国内で幅は必要だと思っていました。なぜなら、現行のラインアップでは満足できず他メーカーに移ってしまったプレミアム層を取り入れながら、現行車種からの乗り換えのお客さまも考える必要があったからです。CX-5やCX-8に乗っているオーナーさまにラージ商品群へ移行してもらいたいのはもちろん、MAZDA2などからのステップアップを考えると購入しやすいエントリーグレードを設定することも重要でした。CX-5と同価格帯で顧客層が被るという見方もありますが、細かく仕様を見ていくとCX-60はファブリックだけどCX-5はレザー、装備面でもやや豪華になっています」と語る。

国内のSUVラインアップ
CX-60グレード価格一覧

 確かに500万円を超えるプラグインハイブリッドや、6気筒ディーゼルターボエンジン+モーターの48Vマイルドハイブリッド仕様をプレミアムに振り、4気筒ガソリンエンジンや6気筒ディーゼルターボエンジンのモデルは、既存オーナーの琴線に触れる価格帯に設定されている。

 マツダが持つ最新技術を惜しみなく投入し、グレード展開や価格帯でも新たな挑戦をしているCX-60。第7世代ラージ商品群のトップバッターかつ、新しい世代の中軸となるモデルになるはずだ。

CX-60は「ドライビングエンターテイメントSUV」とマツダは位置付けている