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パナソニック、2022年度第3四半期決算発表 ⾃動⾞⽣産回復でオートモーティブは増収に

2023年2月2日 発表

パナソニックホールディングス株式会社 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

 パナソニックホールディングスは2月2日、2022年度第3四半期(2022年10月~12月)連結業績を発表した。セグメント別業績では、オートモーティブの売上高は前年同期比27%増の3463億円、調整後営業利益は100億円増の115億円となった。「顧客の自動車生産が回復したことを受けて増収になった。また、半導体などの部材高騰の影響はあったものの、部材高騰分の価格改定やコストダウンなどによって増益になった」(パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏)とした。

 また、テスラ向けの車載電池事業などを行なっているエナジーの売上高は、前年同期比26%増の2474億円、調整後営業利益は187億円減の6億円となった。「市況悪化により、民生向けのリチウムイオン電池やデータセンター向け蓄電システムなどの販売が減少したが、車載電池の生産や販売は拡大。価格改定の効果もあった。だが、原材料高騰に加え、産業および民生分野での減販損、将来に向けた開発費の増加によって減益になった」という。

 なお、パナソニックグループ全体の第3四半期(2022年10~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比14.3%増の2兆1606億円、営業利益は15.6%増の844億円、調整後営業利益は1.8%減の859億円、税引前利益は20.7%増の888億円、当期純利益は30.5%増の556億円となった。

 一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績見通しを修正。オートモーティブの売上高は2022年10月の公表値を据え置き、1兆2900億円としたが、調整後営業利益は10億円増の110億円と上方修正を実施。顧客の自動車生産の減少を見込んでいるが、価格改定や固定費削減により、調整後営業利益は拡大すると見ているという。

 また、エナジーの売上高は10億円増の9540億円、調整後営業利益は150億円減の420億円とした。調整後営業利益の150億円減の内訳は、産業・民生で80億円減、車載で70億円減としている。

「産業・民生では、ICTや動力向けのリチウムイオン電池の需要が減少したほか、景気減速に伴ってITインフラ投資が急減速した影響がある。また、データセンター向けの蓄電システムの需要も減少した。だが、これらは2023年度第2四半期以降での需要回復を見込んでいる」とする一方、「車載では水酸化リチウムなど一部の部材が下期以降、想定以上に高騰しており、一時的に収益を圧迫している。すでに売価への反映を進めているが、これが収益に反映されるまでに、期ズレが発生することになる。2023年度第1四半期以降は、相場の安定と売価への反映により正常化を見込んでいる」とした。

 また、「電解液をはじめとして、相場と連動して売価反映ができない材料についても想定以上の高騰が続いているのが現状だ。お客さまとの契約の見直しを進めるとともに、調達先の複数化などの対策を進めている。2023年度には影響が縮小すると見込んでいる」などとした。

 その一方で、「材料価格の影響は大きいものの、車載分野においては、旺盛な需要が継続している。エナジーセグメントにおける成長戦略に変更はない。一時的なマイナス影響と捉えており、対策を進めていく」と前向きな姿勢をみせた。

 だが、中国のコロナ影響などにより、自動車のグローバルでの生産台数の成長が想定よりも鈍化していることも指摘しており、「今後の生産回復は、OEMごとに差が出てくる」との見方も示した。

 なお、パナソニックグループ全体での2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績見通しは、売上高は2022年10月公表値を据え置き、前年比11.0%増の8兆2000億円としたが、営業利益は400億円減の前年比21.7%減となる2800億円、調整後営業利益は400億円減とし、前年比16.1%増の3000億円、税引前利益は300億円減の前年比16.8%減となる3000億円、当期純利益は250億円減とし、前年比17.8%減の2100億円としている。

 会見では、米カンザス州で建設している車載用円筒形リチウムイオン電池新工場の投資の考え方についても説明した。

 カンザス工場は、2022年11月から整地作業が始まっており、2024年度までに工場を完成させて生産を開始する予定。まずは2170セル電池を量産し、生産能力は年間約30GWhを目指すことになる。

 2022年7月に承認を得たカンザス州の投資誘致補助金制度を活用するとともに、パナソニックグループとして、2022年度から2024年度までの3年間における投資規模を5000〜6000億円と想定。事業会社であるパナソニックエナジーの資金力を超える部分のグループとしての資金対応には、4000億円以下を見込んでいるという。

 パナソニックグループでは、日本および米国で50GWhの生産能力を持っており、ここにカンザス州の新工場の30GWhが加わることになる。だが、将来的には、150GW~200GWhの生産規模を目指すことを明らかにしており、現在の3倍以上に拡大することになる。

 パナソニックホールディングスの梅田グループCFOは、「カンザス工場の30GWhを足しても、合計で80GWhであり、将来的には、その倍以上に伸ばすことになる。つまり、カンザス工場の2024年度までの投資で終わりではない。2025年度以降の投資もにらんでいくことになる。だが、2025年度以降の場所などについては、さまざまな可能性を検討している段階であり、決まったものはない」と語り、「まずは、カンザス州の2170の量産を立ち上げることに集中していく。ここでは進化した2170を生産することになるが、すでに実績がある電池である。スムーズに立ち上げることができるだろう」と述べた。

 また、車載電池事業については、2022年12月に、米ルシッドの高級 EV Lucid Airなどにリチウムイオン電池を供給する契約を締結し、米国市場における販路を拡大したこと、最先端の4680セルについては、2023年度内の北米市場への供給に向けて、和歌山工場の建屋を改装中であることを示した。

 また、今回の会見では、米国におけるIRA法(インフレ抑制法)の影響についても説明した。

 IRA法は、2022年8月に成立したもので、2022年12月31日から施行。過度なインフレの抑制と、エネルギー政策を推進するための法律と位置づけられており、2032年までの10年間に渡る時限措置となっている。EV向け電池などの生産を米国内で行ない、その販売に対して税控除を行なう「Section 45X」と、EV購入者に対する税控除を行なう「Section 30D」に分かれており、パナソニックグループでは、テスラ向けの車載電池の生産を行なっている米ネバダ州の工場と、2024年度に稼働を予定しているカンザス州の新工場が、「Section 45X」の対象になる。

 電池セルにおいては、1kWhあたり35ドルの控除が実施されるため、参考値としての試算によると、ネバダ工場で年間13億ドル、カンザス工場は約10億ドルの税控除の効果が想定されていることが、今回の会見では明らかにされた。パナソニックグループにとっては大きなメリットがある法律だといえるが、現時点ではSection 45Xの細則が発表されていないため、今回の2022年度の業績見通しの修正のなかには織り込まなかった。

 梅田CFOは、「現在、稼働しているネバダ工場は、2023年1月から同法の対象となる。建設を進めているカンザス州の工場は、2024年度以降に予定している生産および販売が開始された時点で対象となる。しかし、細則が決まっていないため、現金化のスキームやP/Lへの計上方法などが確定できない。そのため、ネバダ工場の2023年1月以降の税控除部分を、2022年度の業績見通しのなかには織り込んでいない」と説明。

 ネバダ工場の年間13億ドルの税控除のうち、どれぐらいが現金化できるのか。2023年度業績や、今後の投資戦略などにも影響を及ぼすことになりそうだ。