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「鈴鹿サーキット」「モビリティリゾートもてぎ」について、ホンダモビリティランド新社長 斎藤毅氏に聞く
2023年8月9日 11:35
「鈴鹿サーキット」「モビリティリゾートもてぎ」を運営するホンダモビリティランドの新社長として、斎藤毅氏が代表取締役社長に就任した。
鈴鹿サーキットは、ホンダの創業者である本田宗⼀郎氏の「クルマはレースをやらなければ良くならない」というクルマ作りの信念に基づき、1962年に日本初となる本格的なレーシングコースとして誕生した。ホンダ創業者の1人である藤澤武夫氏の構想のもと、来場者自身が操縦することにこだわった自動車遊園地も併設され、60年にわたる歴史を重ねてきた。
そして、1997年にオープンしたモビリティリゾートもてぎ(旧名称:ツインリンクもてぎ)では、レーシングコースのみならず⾃然体験施設や安全運転普及施設を備えるなど、⼈と⾃然とモビリティの融合をテーマに運営されている。
ホンダモビリティランドでは「わたしたちは、世界中の⼈と⾃然を⼼豊かに結ぶモビリティ⽂化を創造し、『喜び』『楽しさ』『感動』を広く社会に提供し続ける」を社是に掲げ、サーキットとともにリゾート施設や遊園地を併設することを特徴とする「鈴⿅サーキット」「モビリティリゾートもてぎ」を運営している。
鈴⿅サーキットで8月4日~6日に開催された鈴鹿8耐「2023 FIM世界耐久選⼿権“コカ·コーラ” 鈴⿅8時間耐久ロードレース 第44回大会」で、今後の「鈴鹿サーキット」「モビリティリゾートもてぎ」について、斎藤新社長に話を聞く機会を得たのでここにお届けする。
F1は2023年とあわせて2024年4月開催に向け、準備を精力的に進めている最中
──まずは、ホンダモビリティランド社長への就任に対する意気込みや抱負を聞かせてください。
斎藤社長:当社創業の精神ということで言うと、「操る喜び」「チャレンジして成長」この2つの大きな考え方があるので、その原点をしっかりと今の時代だからこそ守っていきたいと思います。それを踏まえた上で、われわれはホンダのグループ会社の1つとして、お客さまに喜びを提供している会社なので、いかにホンダらしく差別化していけるかということを徹底的に追及していきたいと考えています。世界に冠たるF1を開催している鈴鹿サーキットは、モータースポーツだけではなく、周辺環境も含めてお客さまにホンダブランドを感じていただけるような場所にしていきたい。
モビリティリゾートもてぎでは、今でこそSDGsが⼀般に広く知られていますが、われわれの思いとしては、SDGsの先駆者的な存在が「もてぎ」であるという思いもあります。従って、もてぎについては“人と⾃然とモビリティの共生ワールド”としてその存在を際立たせていくことでお客さまに喜んでいただきたい。
お客さまに喜んでいただくためには、まずはわれわれ従業員の1人ひとりがモチベーション高く、働く喜びを感じることが大切であり、それが実現できるような環境を社内に築き上げていきたい。結果として多くのホンダファンを育てホンダブランドの醸成に貢献していけるような会社になっていきたいというのが、私の思いです。
──カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車業界は大きな変⾰の時期を迎えています。それらに合わせて、サーキットの役割、求められる存在意義、立ち位置についてどのように考えていますか?
斎藤社長:今後サーキットとして考えていかなければいけない重要なことは、環境への配慮です。F1でもCO2削減という大きなテーマに対して、どう取り組んでいくかということをいろいろな面から検討している状況です。F1を開催するサーキット側としても、その意をくみながら、しっかりと環境問題に対して取り組んでいきたいと考えています。例えば、サーキットに来るまでのアクセスの中でいかにCO2を減らしていくかとか、われわれが施設の中で提供している容器を環境に優しいものに代えていくだとか、さまざまな観点で環境への取り組みを行なっております。
一方で、サーキットを運営する上では環境への取り組みをするだけではダメで、サーキットに来ていただいた方にレースそのものの醍醐味を感じていただくことも非常に大切です。どのように会場を盛り上げ、みんなの気持ちを高揚させていくかということに関しては、今後さらに取り組みを強化していく必要があります。
──働く人にも働く喜びを持って仕事をしてほしいというお話が印象に残りました。具体的なプランなどはありますか?
斎藤社長:働く人の意識はすぐに変わるものではないと思っています。私自身が就任時に伝えたのは、その仕事をなんでやっているかということを考えてほしいということです。作業としてではなくて、例えばお客さまに対して“FUN”を届けるという観点で自分がどのように貢献することができるのか、いま一度従業員1人ひとりが考えてほしいと思っています。そういうことを常に考えて仕事をしていくと、実際に現れる行動とかも変わってくると思うのです。
そのためには、会社の目指す方向を常に意識してもらえるような機会をできるだけ多く作り、その実現に向けて従業員1人ひとりが何をすべきか自分ごととして考え、行動する風土を築き上げることが大切です。簡単なことではないですが、従業員1人ひとりが働く喜びを感じていない中でお客さまに対して本当の意味での“FUN”は届けられないと思いますので、そこは強い想いをもって取り組んでいきたいと考えています。
──ホンダモビリティランドの施設は、鈴鹿サーキット、モビリティリゾートもてぎと、リゾート施設や遊園地が併設されているのが1つの特徴です。サーキットと遊園地、両輪でモータースポーツ文化を盛り上げていくことにもつながっていくのでしょうか?
斎藤社長:そうですね、特に若い人にはレースのみならずモータリゼーション全般に対しての興味を持ってほしいという思いがあります。そのためには、サーキットだけではなく含めた施設全体でどうすべきか考えていきたい。
サーキットは実際に来てもらって、体感してもらって、感じることがたくさんあります。まずはサーキットに来てもらうためのアプローチがとても大切で、そこはもう少し知恵を絞る必要があると思っています。例えば、子供たちで言えばまずはパークに来てもらって、遊園地で遊んでもらいながら、近くにサーキットがあるからレースもちょっと見てみようかというそんな流れを作りたい。そこで何かを感じていただければ、次につながっていくのではという思いがあります。
鈴鹿サーキットにパークを作ったのも、そういうことなのですよね。ホンダの創業者たちが、鈴鹿サーキットを作るときにレース場だけではなくて、子供が遊べるパークも必要なのだという強い想いをもっていた。その想いを今の時代もしっかり継承していくべきではないかなと思っています。
──直近のニュースとしては、2026年からホンダとしてF1に復帰するという発表がありました。F1日本GPを開催する鈴鹿サーキット、あるいはホンダモビリティランド社長の立場から考えをお聞かせてください。
斎藤社長:ホンダが2026年に世界最高峰のレースであるF1に復帰するということは、日本⼈としても、個人としても、非常に喜ばしいと思っています。ただし、われわれの立場で言えば、目の前の9月24日に今年のF1が迫っており、かつ、2024年は4月開催となりますので、まずはそこに対してしっかリ取り組んでいくことが大事だと思っております。
今年のF1は海外からも過去最高となる多くのお客さまをお迎えできるのではないかと思っております。国内のお客さまだけではなく、海外のお客さまも含めて、鈴鹿に来ていただくことの喜び、鈴鹿サーキットでF1をやる価値というのを十分感じていただけるような環境の整備をさまざまな観点で取り組んでいきたいと思います。
──2024年のF1日本GPが春開催になることは、大きなニュースです。現時点で地域との連携など、何か取り組みはありますか?
斎藤社長:1番に取り組まなければいけないのは、2023年の9月24日に向けての準備をしっかりやることですが、半年後に2024年のF1が開催されるということになると、今までのような時間軸では準備が間に合わなくなるので、2023年の準備とあわせて2024年4月開催に向け、行政を含めた関係者の皆さんにご理解・協力をいただきながら準備を精力的に進めている最中です。