ニュース

小林可夢偉、決勝前オンライン会見 「最終的にはスピードというところを見せて、NASCAR挑戦ができれば」

NASCARカップ・シリーズ第24戦 ブリックヤード200に23XIレーシングから67号車 Toyota Genuine Parts Camry TRDで参戦する小林可夢偉選手

 8月13日、NASCAR(ナスカー)に挑戦する小林可夢偉選手のオンライン会見が行なわれた。可夢偉選手は、NASCARカップ・シリーズ第24戦 ブリックヤード200に23XIレーシングから67号車 Toyota Genuine Parts Camry TRDで参戦し、決勝レースは8月13日14時30分(日本時間、8月14日3時30分)にスタートする。

 可夢偉選手は予選で1分29秒077を記録。トップと1.109秒差の28位で予選を終えた。今回の予選は、トップから1秒以内に23台、1.5秒以内に32台が入っており、決勝での激しいレースが予想されるものになっている。このオンライン会見は予選後、決勝レース前に実施された。

 可夢偉選手は初めてのNASCAR挑戦について、「短い期間の練習となりましたが、やはり初めて走るサーキットで、テストは1日。しかも慣れていないクルマでの予選で、正直まだまだいけるなという自信はあるんですけど。逆にこの状態で1秒くらいでトップがいるというのは、自分の中では手応えは感じています。やはり、今まで自分が乗ってきたクルマと大きく違うので、ブレーキを大きく踏むようなコーナーでは全然別物で。慣れてなくても戦えるレベルにはあるので、しっかり慣れてくれば戦える自信は、結構手応えはあります。残念ながら28位ということで、1秒ちょっとで28台がおるというかなりタイトな場ではありますけど、まずはレースをしっかり。まだまだクルマに慣れていって、コースもしっかり習得していきながら、ステージ1、ステージ2、ステージ3とあるので、しっかりポジションアップして、なんとか最終的にはスピードというところを見せて、NASCAR挑戦ができればいいなと思っています」という。

 やはり慣れの部分は大きな要素となり、可夢偉選手によるとピットレーンのスピードリミッターもマシンに設定されているのではなく、自分の足でブレーキを行ない、スピード調整が必要であるとのこと。

 そんなクルマとしての違いもあるのだが、可夢偉選手は日本のモータースポーツとアメリカンモータースポーツの違いを強く感じるという。「何もかも違います。NASCARはルールでガレージクローズタイムがあったり、チームの雰囲気とか日本のモータースポーツと180度近く違う。例えば今日はガレージオープン9時半、ガレージクローズ(午後)2時。それ以外で作業したら失格です。だから2時にはもうメカニックが帰っている。(自分が)着替えて出たころにはメカニックもリュックサックを背負って帰ろうとしていましたから。要するに何が大事かと言ったら、持ち込みセットで20分の練習、その10分後に予選でレースは終わりという状態で、ほぼ持ち込みセットしだいみたいなところでもあるのです」と、練習走行や予選の時間の短さ、考え方の違いを挙げる。

 日本だとじっくり走ってセッティングなどを煮詰めていくことが多いが、アメリカは持ってきたクルマでセッションを行なったら、それで終了。いつまでも仕事をし続けるという感じではないという。

 その代わり、ファンとのコミュニケーションの時間は多く用意されており、NASCARのイベントとしての考え方の違いを感じると語ってくれた。

 とくにNASCARのブリックヤード200は、世界最多の観客が入るとも言われるインディアナポリス・モーター・スピードウェイで開催される。インディ500と同じサーキットではあるのだが、オーバルコースではなくロードコースを使用して開催。インディカーレースも併催されるなど現地は大きく盛り上がっているという。

「今週インディと一緒なんで、もうすごいお客さんがいるんです。みんなお祭りですよね。お酒飲みながら、キャンプしながら、BBQしながらみたいな感じで。お客さんはガレージの近くまで入ってこれるので、僕らも作業する時間がないので、基本的にはメディアやお客さん対応が多いかなという感じ」と、現地の雰囲気を伝えてくれた。

 また、今回の可夢偉選手のNASCAR挑戦に関しては、TRD(Toyota Racing Development)-USA、北米トヨタ、TGR(TOYOTA GAZOO Racing)の協力があり、可夢偉選手自身も、トヨタ自動車 豊田章男会長や佐藤恒治社長の共感によって実現できたとコメントを発表している。

 豊田章男会長はラリーフィンランドで可夢偉選手の挑戦に対し、「可夢偉というドライバーのすごさが世界に伝わる。トヨタのドライバーの可能性を広げてくれる」とコメントしており、それについて可夢偉選手に聞いてみたところ「まず2つあります。モリゾウさんが僕をドライバーとして知ってもらいたいという部分については、もうちょっとがんばって上位で予選は行きたかったですけど、それができなくて若干悔しい部分はあります。ただ、タイム差で見るとわるくないところなので、正直まだまだ可能性は。自分の中ではしっかり準備して、明日のレースで巻き返すチャンスはあると思っています。しっかり明日に向けて準備していきたいと思います」と、決勝レースでのパフォーマンスに手応えは感じているという。

 今回の可夢偉選手の挑戦は、GAORAが日本時間の8月13日(日)27時~8時で生中継を行なう。そのため日本でも可夢偉選手の戦いをリアルタイムで見ることは可能だ。

 可夢偉選手は、そんな日本のファンに対して「やはり、NASCARというのはアメリカで1番のスポーツということもあって、すごくこうアメリカならではの部分なんですけど、本当にモータースポーツの雰囲気をすごく楽しめるレース環境じゃないかなと思うのです。それを見ていただくのと、実際レベルのすごく高いドライバーがたくさんいるので、そういう部分も。全然畑違いなんですよね。彼らってオーバルの小さいところから来たりとか、ダートから来たりとか。僕らってレーシングカーとから、オープンホイールのフォーミュラ、ジュニアフォーミュラカーとステップアップしていくんですけど。全然違うキャリアでステップアップして、運転のスキルとかが全然違うんです。そういうところも非常に楽しいなって思います。あとはモータースポーツをビジネスとしてNASCARはできているんです。例えばファン対応やスポンサー対応というところが全然違う。すごくエンタテイメント性があって。僕からすれば夢のある世界だなという感じがする」という部分を見てほしいという。これは、日本の野球場とアメリカのスタジアムの雰囲気の違いに近いものがあると、可夢偉選手は表現してくれた。

 また、NASCARのレースは日本のファンもよろこんでくれるレースであるともいい、日本で観戦が盛り上がってくれると、日本でのNASCAR開催がまた行なわれるきっかけになるのではないかとも語ってくれた。

 決勝レースへ向けての思いとしては、「明日85周、200マイル。日本とはルールが違って、ステージ1、ステージ2、ステージ3とあって、イエローが1回出てギャップが詰まったりと、展開が変わりやすかったり、クラッシュがとか当て合いみたいなレースになって、すごく激しいレースだと思います。そういうレースは自分自身苦手ではないと思うので、まずはクルマの走らせ方、サーキットに慣れること。じわじわしっかり自分のペース、自分の流れをつかんでいって上位に食い込めるレースがしたいと思います。正直すごくチャレンジングでありますけども、このチャレンジがアメリカナンバーワンのモータースポーツで日本人が活躍できるきっかけになればと思うし、自分自身もちろんドライバーとしてNASCARで走りたい気持ちはありますけど、それ以外にやらなければならないこともある。とはいえ、アメリカのNASCARは特別、ここでスタードライバーなど出たら、それはすごいことではないかと思います。そういうきっかけになればという思いで、明日の一戦を戦っていきたいと思います。自分自身スピードというのをしっかり見せて、もうちょっとNASCARに参戦できる機会を作って、そういう風につなぎたいなと思います。自分自身ドライバーとして明日は(決勝は)楽しみたいなと思うので、ぜひ応援よろしくお願いします」と語り、NASCARに日本人ドライバーが参戦していくきっかけになるようなレースをしていくという。

 ちなみにNASCARブリックヤード200には、日本でも人気の高いジェンソン・バトン選手も参戦している。練習走行では可夢偉選手が33位に対してバトン選手は32位。予選では可夢偉選手が28位に対してバトン選手は31位と近いところにいる。可夢偉選手とバトン選手はF1で同時代を戦ったドライバーで、2012年の日本グランプリでは3位を走る可夢偉選手をバトン選手が激しく追走していたのを覚えている人も多いだろう。

 そんなバトン選手が近くにいることに関しては、「全然意識をしているというか、すごい近い。今、近くにいると言われたが、実際にモーターホームもジェンソンの隣なんですよ。もうね、いろいろなものが近くてこんな偶然もあるのだなと思いましたが、(予選では可夢偉選手が上位となったので)とりあえずクルマ降りてジェンソンに『俺のほうが早かったぞと』。とりあえず、引いていました」と茶目っ気たっぷりに語ってくれた。

 バトン選手は15号車、可夢偉選手の67号車との争いにも注目していただきたい。