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経団連モビリティ委員会で豊田章男自工会会長、業界を超えて「一緒に未来を作っていく必要性がある」というコンセンサスを得られた

経団連会館で行なわれた第3回モビリティ委員会

 経団連(日本経済団体連合会)は10月5日、経団連会館において第3回モビリティ委員会を開催した。モビリティ委員会は、モビリティ産業の国際競争力強化を図るために設けられたもので、カーボンニュートラル(CN)の実現、自動運転等のデジタル化といった課題への対応などを視野に入れている。

 設立会合である第1回は2022年9月に開催、第2回はギル・プラット博士を招いて2023年2月に行なわれ、第3回は10月28日から一般公開が始まる「ジャパンモビリティショー」前に開催されたことになる。

 第3回では、経団連会長でありモビリティ委員会委員長でもある十倉雅和委員長(住友化学会長)の開会あいさつから始まり、経済産業省 製造産業局長 伊吹英明氏による講演「自動車を取り巻く国内外の情勢と『モビリティ産業』の展望」も行なわれたほか、モビリティ委員会による討議も行なわれた。

十倉雅和委員長あいさつ

あいさつを行なう十倉雅和委員長

 本委員会は昨年6月に発足し、9月にはモビリティを軸とした成長ビジョンについて検討いただきました。また、今年の2月にはギル・プラット博士に来日いただき、世界の潮流を踏まえ、カーボンニュートラルに向けた選択肢について活発な意見交換を行ないました。今月末に開催を控えましたジャパンモビリティショーにはモビリティ委員会からも多くの方々のご参加および協賛をいただいており、私からも心よりお礼申し上げます。みなさまと力を合わせて日本発のモビリティが導く未来、これを世界に発信する場であることを大変楽しみにしております。

 さてポストコロナの新しい時代において日本経済にダイナミズムを取り戻し、世界に存在感を示していくためにはグリーントランスフォーメーションやデジタルトランスフォーメーションなど企業活動のゲームチェンジとなる重点分野に対し、大胆な投資を官民連携で推進し、時代にそぐわない規制・制度をスピード感を持って見直していくことが不可欠であります。

 とりわけモビリティ産業は、その将来性や波及効果から、今後の日本の競争力の鍵を握る大変重要な産業であり、経団連の活動でも重要な柱の一つと位置付けております。

 日本経済のダイナミズム、競争力向上のためには、成長志向型カーボンプライシング構想等のクリーンエネルギー施策の加速や、自由で開かれた国際制度の秩序の維持・強化が不可欠であり、モビリティ産業が先頭に立って、産業界全体で取り組んでまいりたく、みなさま方のお力添えをお願いいたします。

 経済産業省の伊吹秀明製造局長より自動車を取り巻く取り巻く国内外の情勢とモビリティ産業の展望についてお話をおうかがいするとともに懇談する場を設けさせていただきます。

自工会からの7つの課題共有

モビリティ委員会式次第

 自工会(日本自動車工業会)も経団連モビリティ委員会に参加しており、自工会 総合政策委員長でありモーターショー委員会 委員長である長田准氏からは、自動車産業における7つの課題を提示。モビリティ委員会に参加する企業との問題共有が図られた。

自動車産業における7つの課題

1つ目が物流商用移動の高付加価値化・効率化
2つ目が電動車普及のための社会基盤整備
3つ目が国産電池・半導体の国際競争力確保
4つ目が重要資源の安定調達、強靱な供給網の構築
5つ目が国内投資が不利にならない通商政策
6つ目が競争力あるクリーンエネルギー
7つ目が業界をまたいだデータ連携

豊田章男自工会会長、業界を超えて「一緒に未来を作っていく必要性がある」というコンセンサスを得られた

豊田章男委員長(自工会会長)、有馬浩二委員長(日本自動車部品工業会会長)、片山正則自工会副会長、日髙祥博自工会副会長、長田准政策委員長による質疑応答

 第3回モビリティ委員会終了後、経団連モビリティ委員会に参加した豊田章男委員長(自工会会長)、有馬浩二委員長(日本自動車部品工業会会長)、片山正則自工会副会長、日髙祥博自工会副会長、長田准政策委員長による囲みが実施された。

 7つの課題提案についてモビリティ委員会では、「各社の課題があって、自動車産業以外からの話が出た」(有馬委員長)、「会も3回目であり、課題に対しての認識、課題に対する思いの部分がかみ合ってきた」(片山副会長)、「モビリティをセンターにおいてビジネス環境に対応していく、各業界の課題は出させていただいて、官民連携で解決していく。非常に心強く感じられた」(日髙副会長)と、活発な討議がされたとのことで、日本の自動車業界・二輪車業界を軸にして、モビリティ産業を興していく流れは作れているように見えた。

 月末から始まるジャパンモビリティショーは、その大きなきっかけになる。ジャパンモビリティショー直前となる今回のモビリティ委員会において得られた手応えについて自工会会長でもある豊田章男委員長は、下記のように語り囲みを終えた。

「未来の私自身から、今の大人である私に『ありがとう』と言ってほしい」と豊田章男委員長

 私はずっと550万人の自動車産業の未来を守っていくという発言を過去3~4年続けてまいりました。改めまして、この自動車産業を振り返りますと、自動車産業の国内車両生産による経済波及効果というのは53兆円に上っています。そして、自動車部品の輸出による貿易黒字は約15兆円でございます。

 資源のない日本が、いろいろなエネルギー資源を購入している金額とほぼ同じ。(エネルギーの輸入)金額を、自動車・部品の輸出によって稼いでいる、という理解にもなると思います。

 そして、それにかかわってる方々の雇用というのが550万人。今日のモビリティ委員会のような形で、ほかの産業や旅行・エネルギー関連などを含めたモビリティ関連産業全体では850万人の方々になるのです。

 そして日本の製造業全体で見ますと、約1000万人弱の方々とともに未来を作っていこうという形になるのです。日本で市場が伸びているときは、互いに競争し、個社を伸ばしていくことを考えていったわけでございますが、今日のモビリティ委員会でも業種を超えて、みなさま方の感想でも言われたように、個社ではなかなか限界があるよね、もっと強調分野を広げて、業界を超えて、「一緒に未来を作っていく必要性があるよね」というコンセンサスを得たと思っております。

 そういう中で、未来作りというのは、やはり信頼と共感で作るものではないのかなと思っております。なぜこういうことを申し上げるかというと、今の私も含めて大人たちの役割というのは、自分の主張を言い続けて続けていくことは確かにいいかもしれませんが、今日のモビリティ委員会で非常に共感いただきましたのは、主張は大事、ですけれどもその中でどう協調分野で協力し、「一緒に未来を作っていくのか」ということになると思います。

 何をすれば信頼できるのか? 何をすれば評価されるのか? 信頼と共感がないと未来作りはなかなかできない。その思いを多く持っておられる方というのは、大多数の方は、サイレントマジョリティーだと思います。そして、弱い立場の方々だと思います。

 その中において、今のわれわれ大人たちが、「誰のための未来作りをしていくのか?」ということが大事なのではと。私自身、自分の言葉で申し上げましたのは、「未来の私自身から、今の大人である私に『ありがとう』と言ってほしい」ということが、多分よいベンチマークになるのではと思います。

 それぞれのリーダーの方々が、「将来の大人になった自分から、今の大人の自分へ『ありがとう』と言えるための行動・発言というのはどうあるべきか?」。そんなコンセンサスを得た、本日のモビリティ委員会だと思います。

 ジャパンモビリティショーに関しても、今日の参加企業の方、自動車業界だけではなく、いろいろな方が参加されています。そして未来を作っていくスタートになればというふうに思っておりますので、ぜひとも叱咤激励を含めまして、ぜひとも応援を、ぜひともみなさま方も一緒に未来作り、ご参加いただけないかと思っております。よろしくお願いいたします。