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日産、車中泊仕様車「キャラバン MYROOM」説明会 自動車業界初の「2 in 1シート」や「跳ね上げベッド」で車内をくつろぎの空間にする

2023年10月11日 発表

「キャラバン MYROOM」説明会で登壇した日産自動車株式会社 ビジネスパートナーシップ開発本部 商用車ソリューション&特装部 谷内陽子氏(左)と日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス チーフマーケティングマネージャー 岡部龍太氏(右)

 日産自動車は10月11日、「キャラバン」をベースとした車中泊仕様車「キャラバン MYROOM」を発表。2024年夏の発売を予定する通常モデルに先立ち、専用装備を与えた特別仕様車「キャラバン MYROOM Launch Edition」の受注を開始した。価格は「折りたたみベッド」架装タイプが595万8700円~696万4100円、「MYROOM 跳ね上げベッド」架装タイプが613万4700円~714万100円。受注はLaunch Edition専用ボディカラー「サンドベージュ/ホワイト 2トーン」車を2023年12月末、そのほかのボディカラーを2024年1月末まで受け付ける。

 キャラバン MYROOMは、2022年1月に開催された「東京オートサロン 2022」に参考出品された車中泊のコンセプトカー「キャラバン MYROOM CONCEPT」を市販化した車両。フロントシートより後方を大きく改装して、5人の乗車定員は維持しつつ、車両後方スペースで「シンプルでミニマルなデザイナーズホテル」を思わせる洗練されたくつろぎの空間を展開している。

「キャラバン MYROOM Launch Edition」
Launch Edition専用ボディカラー「サンドベージュ/ホワイト 2トーン」
キャラバンの「GRAND プレミアムGX」をベース車両に使用。ボディサイズは4695×1695×1975mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2555mm
「ブラックドアミラー」「ブラックスライドドアレール」「ブラックドアハンドル」などを装着して外観イメージを引き締める
「MYROOMステッカー」はディーラーオプション品
前後バンパーもブラック塗装に変更。「車中泊をする人が求めるラギッドさやシンプルなイメージを表現している」とのこと
足まわりでは「ブラックスチールホイール」「ブラックセンターキャップ」を採用。タイヤサイズは195/80R15 107/105N LT

「第3の選択肢の追加で車中泊のすそ野をさらに広げたい」と谷内氏

日産自動車株式会社 ビジネスパートナーシップ開発本部 商用車ソリューション&特装部 谷内陽子氏

 この発表に先立ち、日産は報道関係者向けの事前説明会&撮影会を行なった。説明会では最初に、日産自動車 ビジネスパートナーシップ開発本部 商用車ソリューション&特装部 谷内陽子氏が登壇。キャラバン MYROOMの商品企画について説明した。

 谷内氏はキャラバン MYROOMのコンセプトを、自分のお気に入りの部屋ごと自然のなかに持ち込んでリラックスできる「MYROOM into the nature」だと紹介。クルマを運転して出かけるというより、部屋にタイヤが付いていて部屋ごと出かけるというイメージで、自宅にいるようにリラックスして気軽に出かけられることがベネフィットになると述べた。

 また、日産ではキャラバンをベースとする持ち込み登録車として「キャラバン トランスポーター」「キャラバン マルチベッド」を用意しているが、この2モデルがたくさんの道具をクルマに載せて休日をしっかりと楽しむ「こだわり派」「アクティブ派」と位置付けられる人に愛用されていることに対し、キャラバン MYROOMは「のんびり派」「シンプル派」に分類される新しいユーザーの獲得を目指して開発されたモデルとなり、第3の選択肢の追加によって車中泊のすそ野をさらに広げていきたいと意気込みを語った。

キャラバン MYROOMのコンセプトは「MYROOM into the nature」

 大きく変更されたインテリアは「Home Interior Inspired」のコンセプトに基づき、「Natural(飾らない)」「Cozy(居心地がいい)」「Clean(清潔な)」という3点をキーワードにして開発。ルーフ、サイドパネル、フロアに明るい木目調の化粧板を設定して、車内空間であることを連想させる曲線を可能な限り排除。直線基調のラインや面構成によって“部屋感”を表現している。

 さらにフロントシートとの間仕切りや両サイドのスライドドア部分にカーテンを設定し、サイドウィンドウ部分に木目調ブラインドを配置したほか、ルーフパネルにはLEDを使って照度調節が可能なスポット照明と間接照明を用意。光のコントロールによってプライベート感を強調する。また、シートやベッドの表皮にはヘリンボーン柄を使い、シンプルさと上質感を両立させた。

光のコントロールと直線基調のデザインで“部屋感”を表現

 このほかにも、前後4か所でロック可能なスライドテーブル、プロジェクターを持ち込むことで車内で映画などを楽しめるようにする車両後方のロールスクリーンなど特徴的な装備が多彩に用意されている。ベッドについては、車体右側の固定式でロックを外すだけで簡単に展開可能な「跳ね上げベッド」と、2分割の折りたたみ式でベンチとしても利用できる「折りたたみベッド」の2種類を設定している。

簡単に展開可能な「跳ね上げベッド」、ソファとしても利用できる「折りたたみベッド」の2種類を設定
キャラバン MYROOMの車内
カーテンや木目調の化粧板によってクルマの車内にいることを忘れさせる空間演出
スライドドア周辺にAC100Vのコンセントや「停車時換気システム」「天井照明」の操作スイッチをレイアウト。天井照明はリモコン操作で明るさの調整も可能。キャビン後方にもAC100Vコンセントを備える
ベッドの一部にもなる両側のサイドボックスに、計3か所の収納スペースを用意
車内空間を映画館にするロールスクリーンをリアハッチ内側に設置
跳ね上げベッドを展開して「ベッドルームモード」にした状態
跳ね上げベッドはフックで固定されているだけ。下のヒンジ部分にダンパー機能が内蔵されており、フックを外すだけで簡単に展開できる
スライドテーブルとシートを組み合わせて「リビングルームモード」としても利用可能
ベッドの下は手荷物などの収納スペースになる
折りたたみベッドを展開してベッドルームモードにした状態
折りたたみベッドは2つ折りにして、ストラップと回転取手で両サイドに固定する
2つ折りにした折りたたみベッドをベンチとして使い、スライドテーブルを挟んで向かい合う「ダイニングルームモード」
ベッドルームモードなどでスライドテーブルが不要なときは、リアハッチ側に立てて固定できるようになっている

自動車業界初の「2 in 1シート」をセカンドシートに採用

硬度の異なるクッションパッドを組み合わせて使う自動車業界初の「2 in 1シート」

 セカンドシートとして新たに開発された「2 in 1シート」は、簡単な操作で「走行モード」と「ソファーモード」を切り替え可能。乗員が車両の前方に向かって座る走行モードで座面になる部分の前側にもヒンジを設定し、座面を起こして立てたあとに背もたれを前方に倒すと、車両の後方に向かって座るソファーに早変わりする仕掛けが施されている。

 この特異なギミックを実現するため、走行モードとソファーモードで体重を受け止める面のクッションパッドで異なる硬さの素材を使用。走行モードでは乗車姿勢を安定させ、ベッドとして利用するときにも体をしっかりと支えられるよう硬めでホールド感のある素材、ソファーモードでは停車中の車内でくつろぎ感を演出するため柔らかく沈み込むような素材を使っており、硬度の異なるクッションパッドを組み合わせて使うことは自動車業界初で、このモデルの大きな特徴になっているという。

2 in 1シートの構造解説
座面と背もたれが入れ替わる特異なギミックに加え、表裏で異なる硬さの素材を内側に使っている
ベンチシートスタイルだが、50:50分割で前後スライドと背もたれの角度調節が可能

 そんな各種アイテムを装備したキャラバン MYROOMでは、イメージする利用シーンとして3つのシチュエーションを説明。「仲のいい2人が並んで憩う」シーンでは、自宅などのソファーでくつろぐようにキャラバン MYROOMのセカンドシートに座り、リアハッチを開けて景色を楽しみながらお茶を飲む状況を紹介。「同じ空間にいながら別々の作業を進める」シーンでは、展開したベッドの上で1人は本を読み、もう1人は仕事をするといったようにそれぞれに時間を使う状況を説明。「車内を宿泊施設として使う」シーンでは、跳ね上げベッドで車内が簡単にベッドルームにスイッチすることをアピールしている。

「仲のいい2人が並んで憩う」シーン
「同じ空間にいながら別々の作業を進める」シーン
「車内を宿泊施設として使う」シーン
事前説明会ではモデルさんによる実演で想定シーンの紹介も行なわれた

「Launch Editionはキャラバン MYROOMのよさを一番体感いただけるモデル」と岡部氏

日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス チーフマーケティングマネージャー 岡部龍太氏

 また、日産自動車 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス チーフマーケティングマネージャー 岡部龍太氏は、近年の車中泊市場について解説。キャンピングカーの保有台数は右肩上がりの成長を続けており、そのなかでも8ナンバー登録ではないベッドだけを装備する簡易的な車中泊仕様車が増加していて、キャラバン MYROOMもこのカテゴリーを意識した仕様になっているという。

 キャラバン MYROOMでターゲットとしているユーザー像は、子育てをしていない50~60代の“ポストファミリー”と呼ばれる夫婦で、仲よく一緒に旅行を楽しむといった人。「旅先での非日常を楽しむ」「人生経験で培った審美眼を持つ」「自分たちのペースで旅を続けたい」といった価値観を持ち、乗り替え前のマイカーとしてSUVやミニバンを所有しているといったイメージ。車中泊は目的ではなく旅を楽しむ手段の1つとして考える旅行好きで、キャンプ場以外にも道の駅など車中泊OKの駐車場にクルマを停めて車中泊に利用するシチュエーションを想定している。

車中泊市場の動向
キャラバン MYROOMのユーザー像

 特徴的で凝ったアイテムを多数装着するキャラバン MYROOMは生産台数の確保が難しいこともあり、まずはキャラバンの最上位グレードとなるGRAND プレミアムGXをベースとした特別仕様車のLaunch Editionから販売がスタート。これについて岡部氏は「キャラバン MYROOMのよさを一番体感していただけるモデルということで、Launch Editionに絞った販売をさせていただきます」と説明。納車は2024年1月末から順次行なわれる予定となっている。

 また、日産では受注開始に伴い、キャラバン MYROOMの実車を見学できる「お客さま向け内覧会」を開催する。10月15日に栃木県にある日産自動車 栃木工場、10月21日~22日に岩手県にあるツガワ未来館アピオでの開催がすでに決定しているほか、12月まで日本各地で内覧会を実施。今後のスケジュールについては日産自動車のWebサイトやSNSで告知を行なっていく。

キャラバン MYROOM Launch Editionの価格は595万8700円~714万100円
実車を展示する「お客さま向け内覧会」も開催される
Launch Editionの購入特典となる特製クッション
電源サイトでの車中泊などのシーンで気兼ねなく電気が使えるようになる「AC100V 外部電源入力システム」の入力ポートを右側スライドドア前方に設定
9月に発売された「ポータブルバッテリー from LEAF」はディーラーオプション設定

特別仕様車「キャラバン 50th Anniversary」

 このほかに会場では、10月10日発売の特別仕様車「キャラバン 50th Anniversary」も車両展示された。

「キャラバン 50th Anniversary」。ボディカラーは専用色の「カシミヤグレージュ」
バックドアとスライドドアレール下に専用ロゴ入りエンブレムを装着
タイヤサイズは195/80R15 107/105N LT
ヘッドレストに50th Anniversary刺繍ロゴを施す