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日産、「リーフ」の駆動用バッテリを再利用する車載対応の「ポータブルバッテリー from LEAF」発売 価格は17万500円
2023年9月1日 10:05
- 2023年9月1日 発売
- 17万5000円
日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーの3社は8月31日、BEV(バッテリ電気自動車)「リーフ」の再生バッテリを再利用する製品として共同開発したポータブル電源の製品版モデルを発表した。
製品は日産から「ポータブルバッテリー from LEAF」(IPB-01N)の名称で9月1日に発売。全国の日産自動車販売店などで取り扱われ、価格は17万500円。
JVCケンウッドも年内をめどに、公式オンラインストア「JVCケンウッドストア」を皮切りに発売し、同社のカーナビ、ドライブレコーダーなどを取り扱うカー用品店などで販売する。JVCケンウッド版の名称は「ポータブル電源」(IPB-01G)となり、価格はオープンプライス。
2社の製品は型番が異なるほか、それぞれ天板に「NISSAN」「KENWOOD」のロゴマークが設置される以外は基本的に同一の仕様となる。
ポータブルバッテリー from LEAF主要諸元
充電池タイプ リチウムイオン充電池(リサイクルバッテリー)
充電池容量 633Wh
入力 12~25V DC 100W
AC出力(AC×2) 100V AC 50/60Hz 計600W(瞬間最大1200W)
AC出力(HIGH-POWER時) 計900W
USB出力(USB type-C) 5V DC 3A
USB出力(USB type-C)5V/9V/15V/20V DC 3A(最大60W)
USB出力(USB type-A×2)5V DC 1.5A
シガーソケット出力 12V DC 10A 最大120W
充電時間(ACアダプター使用時)約9.5時間
充電時間(シガーアダプター使用時)約14時間
充電温度範囲 0℃~45℃
動作温度範囲 -20℃~60℃(バッテリー温度が60℃を超えた場合は停止)
外形寸法(ハンドル収納時)370×282×205mm(幅×奥行き×高さ)
重量(重さ) 14.4kg
サイクル寿命 約2000回
BEV由来のバッテリを使う「安心・安全」がアピールポイント
同日に行なわれた報道関係者向けの製品発表会では、日産自動車 コンバージョン&アクセサリー企画部 部長 若林哲氏が製品概要などを紹介。
日産では2010年12月に初代リーフを発売して12年以上が経過。初期モデルについては寿命を終える車両も出てきているが、一方で搭載する駆動用バッテリはまだまだ利用可能で、このバッテリの利用策の1つとなるのが新たに発売することになったポータブル電源だと説明した。
近年は災害時に加え、アウトドアレジャーでの家電製品利用、外出先でのスマートフォン充電といったシーンでポータブル電源が活用されており、世界的な需要は2020年の時点で100億米ドルを超えており、2030年には270億米ドルに達すると試算される有望な市場だとアピール。
ポータブルバッテリー from LEAFでは、BEVでも使用されたタフなバッテリであるという優位性をアピールポイントに設定。すでにポータブル電源を製品化した経験を持ち、カーナビなどのカー用品も手がけるJVCケンウッドが設計、開発のメインを務めつつ、日産がBEV開発で培ってきた車載用バッテリのノウハウを提供し、フォーアールエナジーは車載用バッテリをポータブル電源で2次使用するために必要な開発と製品供給を担当。各社の強みを持ち寄って業界の垣根を越えた製品開発を進め、製品化を実現している。
アピールポイントの1つめは、すでに紹介されているようにBEV由来のバッテリを使う「安心・安全」。リーフは発売以降に累計65万台以上を世に送り出しているが、通常使用におけるバッテリに起因する火災ゼロを続けており、このリーフのバッテリを使うことで盤石な動作保証を実現する。-20℃~60℃という幅広い動作温度範囲を設定して車載利用を可能にすることで、レジャーからビジネスまで幅広い場面でニーズに対応するとの考えを示した。
2つめは「自己放電の少なさ」。長期間の備蓄後も高い電池残量を維持することが可能で、災害発生と言った万が一のシーンでも安定した電力供給が確保されるという。3つめは2000回の充放電に対応する「繰り返し充放電に強い」という面で、長期間に渡って性能劣化の不安なく安心して使えるこのポータブルバッテリー from LEAFを、全国の幅広いユーザーに選んでもらいたいと語った。
リユースの再生バッテリを採用することでコストを抑えられる面もあるが、それ以上に日産のBEVが培ってきた高次元の安全性をポータブルバッテリー from LEAFでも継承していくため、内蔵する再生バッテリのバッテリ・モジュールは周囲を鉄板でさらに補強。回路などの内部構造にも徹底的にこだわっており、販売価格は「企業努力によって抑え込み、頑張って実現した金額」になっているという。
「安全性を最重視した設計を行なっている」とJVCケンウッド 野村氏
続いて登壇したJVCケンウッド 専務執行役員 野村昌雄氏は、同社の役割について解説。JVCケンウッドではこれまで、車載対応ではない一般コンシューマ向けのポータブル電源を累計10万台出荷しており、この開発における知見、生産・販売などの実績が今回の共同開発のきっかけになったと紹介。BEVの再生バッテリを製品に使うことは初めての取り組みになるが、このプロジェクトを通じてサスティナブルな社会の実現に向けて貢献できるだろうとの考えから参加する運びとなった。
開発にあたっては、このポータブル電源が世界で類を見ない車載対応の製品となっており、これに見合うような設計を重視して取り組んでいる。ベースになっているのがBEVのリーフで使用された再生バッテリであり、元から優れた温度特性の性能を持っているものの、リチウムイオンバッテリは扱いが難しい素材を使っていることから、内部構造や回路などをしっかりと煮詰め、重大問題が起きないよう安全性を最重視した設計を行なっているという。
また、再生バッテリを使用するにあたり、フォーアールエナジーの担当者とも毎週のように定例会を実施。追加試験の進め方などを含め、車載対応のポータブル電源について企画を進めていった。生産については国内にあるフォーアールエナジーから再生バッテリが提供されることも加味して、海外工場ではなく新潟県長岡市にあるJVCケンウッド長岡で量産するMADE IN JAPANの製品になっているとアピールした。
デザインは子会社であるJVCケンウッド・デザインが担当。本体の底面にバッテリを配置して低重心化を図り、安定感を高めつつ堅牢さも高めた。また、ほかの荷物と一緒にラゲッジスペースに置かれることも考慮して、耐久性が高く傷が付きにくい表面処理を施し、折りたたみ式のグリップハンドルを採用している。
ポータブルバッテリー from LEAFでは“Bグレード”の再生バッテリを使用
再生バッテリの供給についてはフォーアールエナジー 社長 堀江裕氏が説明。リーフのフロア下にレイアウトされている駆動用バッテリは、初代モデルの場合は48個のバッテリ・モジュールによって構成。バッテリ・モジュールは1つあたり3.8kgの重量となっており、ポータブルバッテリー from LEAFでは1台につき2つのバッテリ・モジュールを使用している。
BEVのバッテリを再利用するメリットとしては、新たなバッテリの製造時に発生するCO2が抑制されることで持続可能な低炭素社会の実現に貢献できること、BEV向けに開発されて高い性能を持っていること、回収時に残存性能を全数測定して劣化具合をしっかりと把握していることなどを説明。
これに加え、フォーアールエナジーで実作業を行なっている浪江事業所は、国際的な認証企業であるULが定めるバッテリリユースに関する「UL1974」の認証を世界で初めて取得した工場となっており、再利用プロセスや安全性に十分配慮されていることが確認されていると強調。また、フォーアールエナジーは2010年9月に設立されてこれまでにさまざまな事業を手がけているが、一般消費者向けの製品への取り組みが今回が初めてとなっている。
また、再生バッテリの利用を拡大して価値を高めることにより、BEVをユーザーが手放すときに売りやすくなり、乗り替え費用も増えることでBEV市場全体を拡大するキーになると堀江氏は説明。
フォーアールエナジーでは回収した駆動用バッテリが持つ残存性能を全数計測してグレーディングを実施。性能によって「そのままBEV向けのリプレイス品に使用できる高品質・高性能の再生電池(Aグレード)」「大型蓄電設備や急速充電器などに利用する中間性能の再生電池(Bグレード)」「年に数回使われる程度のバックアップなどに使う使用頻度が低い再生電池(Cグレード)」の3種類に区分しており、ポータブルバッテリー from LEAFにはBグレードの再生バッテリが用いられているという。