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日立アステモ、自動運転時の乗り物酔いなどを抑制する6自由度車両姿勢制御技術を開発

6自由度車両姿勢制御技術の概要

自動運転時の乗り心地制御を目標に開発

 日立Astemo(アステモ)は10月24日、自動運転時の乗り心地制御を視野に入れた6自由度車両姿勢制御技術を開発したと発表した。自動運転車両はぶつからないことを優先して制御されているため、ときに人にとって不快な動きが発生し、乗り物酔いなどを引き起こす場合がある。この6自由度車両姿勢制御技術は、ロール、ピッチ、ヨー(x軸、y軸、z軸)といったクルマの動きを制御し、自動運転時でも乗員の不快感を抑制することを可能にするというもの。

 具体的には、前後左右の各サスペンションにコントロール機能を搭載。サスペンションを自由に伸び縮みさせることで、ロール、ピッチ、ヨーを制御していく。その制御のために、乗員負荷に応じた快適性を指標化、ジャーク(加加速度、加速度の変化量)を考慮した最適な軌道計算(Dynamics Planning)、車両制御による快適性向上技術(Passenger G-Min)が用いられている。

6自由度車両姿勢制御技術を搭載した開発車両。これは左へ傾けているところ

 ものすごく簡単に言ってしまうと、乗員の頭の揺れを最小限にする制御を、軌道計算とサスペンション制御で実現していく。

 例えば現在の主な自動運転制御では、リスクを最小限にするため車線情報の中央値を走ることが多い(もしくはその情報をもとに、補正制御が入る)。日立アステモは、道路情報が事前にあることを前提に、ジャークを考慮してパスプランニング。乗員にとって最も快適な経路を導き出す。

 そこに、前後左右の各サスペンションを自由に制御する技術を加え、どうしても発生してしまうロールやヨーなどの動きを、サスペンションを独立制御して打ち消していく。

 この2つの技術をコントロールして、快適な乗り心地を実現していく。

開発車両に乗ってみた

電動車のため制御技術の実装がしやすい開発車両

 今回は、実際にそのテスト車両に乗る機会があった。

 機能が組み込まれたクルマはホンダのバッテリEV「ホンダ e」。これは、ホンダeが採用するということではなく、テストに適した車両であるため。電動でアクセル操作などを制御できるため、開発には向いている。

 設定コースは、右へ大回りした後にスラロームがあるというもの。右の大回り時の頭の振られ具合や、スラローム時の変化が評価ポイントになるだろうか。

レベル4自動運転を想定しているため、ハンズオフで走行
ON/OFF表示のされたテスト制御項目。左下に簡易マップが表示されている
フルに制御を入れた状態。右コーナーで左側のサスペンションを持ち上げている

 まずは、通常制御からの試乗。基本的には乗員の快適さを向上させる技術であり、ハンズオフ、アイズオフのレベル4自動運転を見すえた技術であるため、助手席での試乗となっていた。

 通常制御での試乗は、「まあ、このような感じですね」といった具合。ものすごく不快ではないが、スラロームの切り返しでは当然ロール方向のゆれは出る。

 次は、サスペンション制御を入れての周回。これはロールなどを打ち消す方向にクルマを動かすものだ。この試乗は、違和感たっぷりのものになる。本来右へ回るときには、クルマは左へ傾く。それを、左のサスペンションを伸ばし、右のサスペンションを縮めること逆ロールを作り出す。結果、フラットに近い姿勢を実現。快適度は向上していた。

 最後に、ジャークを考慮したDynamics Planningでの制御を加える。これを加えることで、そもそものロール量などを減らすことができ、サスペンション制御を小さくできる。

 この状態の試乗では、さらに快適度が向上する。さすがに完全フラットとはいかないが、通常制御とはまったく動きが違うのを体感できた。

 この日立アステモの技術のポイントは、人間の快適性を評価できていることと、サスペンションを制御できていること、さらに快適なルートを導き出せていること。すべてが独立した技術で、それを組み合わせることで自動運転車の快適性を引き上げている。

 つまり、サスペンション制御などは専用にクルマを作り上げる必要があるが、ジャークを考慮したDynamics Planningでの制御は、ステアリング制御と速度制御を実現しているレベル2自動運転のクルマに実装しやすいものとなる。誰にとってもうれしい技術であるので、早めの実用化を望みたい。