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三菱自動車、2023年度上期決算は営業利益23%増の1042億円、当期純利益18%減の675億円で増収減益 「成長フェイズに入る準備は整いつつある」と加藤社長
2023年10月30日 19:42
- 2023年10月30日 開催
三菱自動車工業は10月30日、2023年度 上期(2023年4月1日~9月30日)の決算を発表した。
2023年度 上期の売上高は前年同期(1兆1581億9200万円)から14.9%増となる1兆3308億1700万円、営業利益は前年同期(846億2800万円)から23.1%増の1041億8900万円、営業利益率は7.8%、当期純利益は前年同期(827億3600万円)から18.4%減の674億8900万円。また、グローバル販売台数は前年同期(42万6000台)から3万7000台減の38万9000台となった。
中国事業に関連する損失、税金の支払いなどで当期純利益は減益に
オンライン開催された決算説明会では、2023年度 上期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏が説明。
2023年度 上期は船舶、半導体不足に加えてアセアンを中心とした総需要の減退、インフレなどに起因する資材費高騰などの影響で経営環境は厳しかったものの、販売の質向上や“手取り改善活動”を推進したことで、前年同期比から堅調に伸びていると紹介。なお、当期純利益は中国事業に関連する損失の計上、税金の支払いなどによって減益になっているという。
市場別に見た販売台数では、アセアン市場ではフィリピン以外で全体需要の回復が遅れており、三菱自動車の販売も8%ほど減少の12万台となった。
日本市場の総需要はコロナ禍以前までとはいかないものの、2022年9月以降は対前年超えとなっており、市場は回復基調になっている。三菱自動車では半導体と部品の供給不足の影響を受けて受注残の解消が進んでいないものの、全体的には対前年同期比で増加となっている。「アウトランダーPHEV」「デリカミニ」に代表される“三菱自動車らしさ”を具現化したモデルを柱に、受注獲得の強化を継続して販売拡大に注力。
北米市場の総需要は生産回復によって車両供給不足が解消され、フリート需要の増加などによって前年同期から17%の増加を見せ、三菱自動車も在庫レベルの改善、2022年11月から本格投入が始まったアウトランダーPHEVの販売増、フリート市場の回復などを受けて対前年比29%と伸長した。今後も金利上昇と景気後退のリスク、生産回復に伴う競争激化などを注意深く見守り、アウトランダーシリーズの好調な販売モメンタムを維持し、インセンティブに頼らない販売へのシフトを確立していくとした。
2023年度通期の業績見通しで主要な財務指標を上方修正
続いて、三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏が2023年度通期の業績見通しについて解説した。
2023年度の上期実績を踏まえて下期の見通しを精査したことで、通期見通しで主要な財務指標を全面的に上方修正。売上高を700億円、営業利益を300億円、当期純利益を300億円それぞれ上方修正している。一方、販売台数は販売台数実績を踏まえて4万9000台下方修正している。
加藤氏は「下期以降も各国の景気後退懸念に加え、地政学的リスクなど期初想定していた以上に不透明感の強いマクロ環境課であるとともに、船腹不足や半導体などの部品供給不足といったさまざまなリスクがありますが、“手取り改善活動”の推進と新型モデル投入を着実に実施することで、修正した見通しの達成に向けて全社一丸となって取り組んでまいります」とコメントしている。
2023年度 第2四半期3か月のビジネスハイライト
さらに加藤氏は2023年度 第2四半期3か月のビジネスハイライトについて解説を実施。7月26日にはタイで新型「トライトン」を発表。タイではすでに一部仕様の販売を開始して、今年度中にすべての仕様・モデルを発売する計画となっており、ここからアセアン各国、オセアニアなどの地域に順次展開を広げるほか、日本でも2024年初頭から市場投入する計画となっており、日本市場では約12年ぶりの発売になる。最終的には100か国で販売を行ない、20万台/年の販売規模を見込む屋台骨を支える最重要モデルであり、成長フェイズの幕開けとして投入する世界戦略車の第1弾と位置付けた。
8月10日~20日(現地時間)にインドネシアで開催された「第30回インドネシア国際オートショー」では、新型コンパクトSUV「エクスフォース」を発表。エクスフォースは3月に発表した中期経営計画「Challenge 2025」でもコア地域向け商品として紹介されたモデルであり、インドネシアでの市場投入後、アセアン地域や南アジア、中南米、中東、アフリカなどの市場に順次展開していく計画。VMARK ベトナム・デザイン・アワード2023で「ベスト・トランスポーテーション・デザイン」カテゴリーの金賞を受賞するなど、すでにエクスフォースの商品性は高く評価されているとアピールした。
さらに3月に発表した中期経営計画のChallenge 2025に沿った事業見直しを進めており、10月24日に2種類の大きな発表を行なった。1つは中国事業の構造改革で、電動車へのシフトが予想以上に加速しており、三菱自動車の販売が低迷したことから、中国における三菱ブランド車両の現地生産を終了することになった。
これに加え、ルノーグループが設立するBEV(バッテリ電気自動車)&ソフトウェア新会社である「アンペア」に最大で2億ユーロを出資することも決定。電動化の加速フェイズに向けた電動車開発、アライアンスとの連携強化に取り組みもので、アンペアとの協業を通じて電動車開発のさらなる強化、BEVラインアップの拡充を目指していく。
最後に加藤氏は「2023年度上期は、国や地域でばらつきはあるものの、世界的な金利上昇が続くなか、経済成長は全体的には穏やかに減速しているように見受けられます。また、先進国経済の影響をより強く受ける傾向にある新興国での成長率は大きく鈍化しております。そのような不安定な経営環境が計測するなかでも、販売の質向上、“手取り改善活動”を推進し、あらゆる課題に真摯に向き合って取り組んだことにより、2023年度上期はわれわれの想定を上まわる好調な実績となりました」。
「また、5月にデリカミニ、7月に新型トライトン、8月に新型エクスフォースをそれぞれ投入開始して、成長フェイズに入るための準備は整いつつあります。今後もマクロ経済の変化に加えて地政学的リスクも高まり、当社を取り巻く経営環境は不透明感を増してくることが予想されます。それらの変化やリスクをしっかりと認識すると同時に、柔軟に対応することで継続的成長に向けてChallenge 2025で掲げた取り組みを実行してまいります」と今後に向けた意気込みを口にしている。
質疑応答
説明会の後半に行なわれた質疑応答で、ルノーグループが設立する新会社であるアンペアに出資する意義について問われたことに対し、加藤氏は「アンペアからOEM供給されるクルマは、当初は欧州から販売をスタートします。そこから他地域に広げていく可能性があるのかについては、協議を進めていくことになるかと思います。可能性を探っていくことになると思いますが、現時点ではとくにアセアンなどでの展開は決まっておりません」。
「BEVという面で、欧州市場は他地域よりも少し早く浸透していっていると思います。そういったところでBEVを活用することにより、BEVが少し増えてきたマーケットでどのように戦っていくのかということ、それからアンペアで持っているさまざまなノウハウで知見を積むことで、われわれの開発にも知見を生かして当社独自の製品に活用していくこともできると考えています」と回答している。