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三菱自動車、2022年度通期決算は営業利益1032億円増の1905億円で過去最高を更新。2023年後半に三菱初のハイブリッド車「エクスパンダーHEV」発売

2023年5月9日 開催

2022年度の通期決算説明会に出席した三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は5月9日、2022年度通期(2022年4月1日~2023年3月31日)の決算を発表した。

 2022年度通期の売上高は前年同期(2兆389億円)から4192億円増となる2兆4581億円、営業利益は前年同期(873億円)から1032億円増の1905億円、営業利益率は7.7%、当期純利益は前年同期(740億円)から947億円増の1687億円。また、グローバル販売台数は前年同期(93万7000台)から10万3000台減の83万4000台となった。なお、1905億円となった営業利益については、2015年度以来の更新となる過去最高益としている。

2022年度通期累計業績のサマリー

 オンライン開催された決算説明会では、2022年度通期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏が解説。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏

 池谷氏は2022年度の通期決算について、新型コロナウイルスの感染拡大もワクチン接種率の向上や治療薬の開発が進むことにより、重症化リスクが制御されたことから世界各国で感染対策の緩和に舵を切り、社会経済活動が徐々に正常化に向かいつつある一方、依然として出口が見えないロシア・ウクライナ情勢、収束の気配がない物流の混乱、高騰を続けるエネルギー価格、数十年見られなかったレベルのインフレ、インフレ対策となる急激な金利上昇など、経営の舵取りが難しい状況が続いたと説明。

 その状況下においても、全地域における販売の質向上、さらに手取り改善戦略などを推進した成果と円安効果が重なったことで、前年度比で大幅に改善したとアピール。売上高は21%増、営業利益は118%増、当期純利益は128%増となっており、当期純利益についてはロシア事業関連、中国事業関連の特別損失を計上していることも明らかにした。

 前年度比で11%減となったグローバル販売台数では、モデルラインアップの減少とロシア市場での車両供給停止が続く欧州が49%減、競争環境の激化による影響で中国ほかが41%減、半導体の供給不足による供給減による影響で北米が15%減などが大きな要因となっている。

2022年度通期のグローバル販売台数と市場別の内訳
2022年度通期における営業利益の増減要因
第4四半期3か月で見た営業利益の増減要因
株主配当はこれまで無配が2年続いたが、2022年度は1株当たり5円、2023年度は1株当たり10円の配当を予定している

 すでにスタートしている2023年度の業績見通しについては、半導体の供給や輸送用の船舶が不足する状況が回復傾向にあるものの、依然として影響が残ると想定。売上高は10%増の2兆7000億円、営業利益は21%減の1500億円、当期純利益は41%減の1000億円、グローバル販売台数は10%増の91万7000台を計画している。

2023年度の業績見通し
2023年度のグローバル販売台数見通し
2023年度営業利益見通しの変動要因分析

三菱自動車初のハイブリッド車「エクスパンダーHEV」を2023年後半発売

新中期経営計画「Challenge 2025」で営業利益を高めていくロードマップ

 続いて三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏が、2023年度における重点取り組みについて説明した。

 加藤氏は3月10日に発表した新中期経営計画「Challenge 2025」の達成に向けた取り組みとして、2023年度も投資を加速させつつ収益とキャッシュフローをしっかりと確保していく必要があると語り、これに向けて今後の市場投入を予定している新型車を成功に導き、地域軸としては「アセアン地域の成長」「国内事業における採算改善」がこの鍵を握るとの考えを示した。

 具体策としては、アセアン地域では総需要がほぼ前年並みに留まると予測する市況化でも18%ほど販売台数を増やしていく計画を立て、タイ市場に待望のモデルとなる新型「トライトン」を7月に投入。さらに2023年後半には、三菱自動車として初のハイブリッド車(HEV)「エクスパンダーHEV」を市場投入すると公表した。

 このほかの地域でもイベント開催や三菱自動車ブランドの強化を行ない、アセアン戦略車である「XFC コンセプト」をベースとした量産車を新規投入することによって乗用車セグメントを強化。販売台数の上乗せを図っていくという。

 日本市場では「アウトランダーPHEV」「エクリプス クロスPHEV」「eKクロス EV」といった電動車ラインアップに加え、5月25日に発売する「デリカミニ」によって“三菱自動車らしさ”を際立たせていくと説明。デリカミニはすでに1万台以上を受注して好調な滑り出しを見せているとアピールした。

 また、中長期的な成長を見据え、これまでの「価格訴求」から「商品の価値訴求」にシフトすることを目指し、商品、販売体制などあらゆる側面での基盤整備、強化を図っていくと述べている。

アセアン地域での販売目標と各種施策
日本市場での販売目標と各種施策
グローバル販売での主な取り組み

 新型車の投入については、すでに発表しているようにChallenge 2025の3年間で毎年1~2モデルの新型車を市場投入。2023年度については「例年になく次々と新型車を投入する年」として、すでに発売されている「ASX」やまもなく販売開始となるデリカミニ、7月に登場予定の新型トライトンのほか、欧州市場では秋に新型「コルト」がデビュー。さらに前出のエクスパンダーHEVやXFC コンセプトを量産化した小型SUVなど計6車種が登場予定となっている。

2023年~2025年の3年間に予定する新型車の投入スケジュール
2023年度は6モデルの新型車を発売して商品ラインアップを強化する

 最後に加藤氏は「昨年度はコスト低減努力や各国における販売の質改善活動の推進など、全社一丸となってあらゆる課題に取り組んできた結果に、為替の追い風が加わって過去最高の業績で終えることができました。同時に会社の自力も付いてきたものと考えており、新たなステージに入る準備ができたかと思います。一方で当社を取り巻く経営環境は不確実で不安定な状況が続いています。電動車やカーボンニュートラルへの対応は待ったなしであり、エネルギー、原材料価格などの高騰に伴う物価上昇、その抑制を目的とした金融引き締めの影響で世界的な景気後退が懸念されるなど、刻一刻と変わっていく世の中に対して対応していかなければなりません。また、新しい時代に対応していくための備えとして、経営基盤をいっそう強化していく必要もあります」。

「これらの挑戦を成し遂げるという思いを込め、中期経営計画のChallenge 2025を策定いたしました。初年度である今年度は引き続き厳しい経営環境が予想されますが、次の時代の成長に向けて必要な投資を加速させつつ、筋肉質で機動的になった経営体制を確立することによって収益を確保していきたいと考えております。また、三菱自動車らしい商品や技術を通じてお客さまとの長期的な信頼関係を構築し、ブランド価値も訴求してまいります。本年度より当社は新たなステージに入りました。これまで培ってきた地力を発揮し、全社一丸となってさらなる飛躍と次の時代への成長に向けてチャレンジしていくことで、中経初年度となる2023年度の計画を達成してまいります」とコメントしている。