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トヨタ、液体水素カローラでCO2吸着回収に挑戦 水素を燃やし二酸化炭素を回収する小さな化学プラントに進化

小さな化学プラントに進化した、液体水素カローラ

最高出力も上がり、CO2吸着も行なう液水カローラ

 トヨタ自動車は11月11日~12日に富士スピードウェイで開催されるスーパー耐久最終戦富士4時間レース(以下、最終戦富士)において、液体水素で走行する32号車 GRカローラ(液水カローラ)をアップデートして投入する。

 この液水カローラは、ルーキーレーシングからエントリー。32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏)として参戦しており、モリゾウ選手(トヨタ自動車 会長 豊田章男氏)もステアリングを握る。

二酸化炭素を吸着するCO2吸着フィルター。エアクリーナーボックスに内蔵される

 3か月前のオートポリス戦からのアップデートポイントは、エンジン性能、航続距離、車重、CO2回収技術、といった多岐にわたっている。

 エンジン性能では、液体水素ポンプと昇圧性能を向上。ガソリンエンジンおよび高圧気体水素エンジンと同等レベルの出力を達成したという。ガソリンエンジンのGRカローラでは、最高出力224kW(304PS)/6500rpm、最大トルク370Nm(37.7kgfm)/3000-5550rpmを発生しており、300PS程度を発生しているとみられる。

 航続距離では、給水素時の満タン判定の精度向上、タンク内の入熱低減によるボイルオフ量の低減、アクセルが全開ではないときの噴射量最適化などの改良を実施。5月の富士24時間レースでは16周だった最大周回数を、20周を目標としてレースに挑むという。富士スピードウェイの1周の距離は4.563kmのため、約73kmを約91kmに伸ばすことが目標になる。

 また、車重においても軽量化。これまでつちかった安全という知見を活かしつつ、軽量化できる部品を特定。オートポリスの1910kgから1860kgへ50kg軽量化してレースに挑むことになる。

 そして最大のトピックとも言えるのが、CO2回収技術の搭載になる。今回の液水カローラには、CO2を吸着する装置をエアクリーナー入口に装着。その横にはエンジンオイルの熱によってCO2を脱離する装置を設置する。脱離したCO2は吸着溶液で満たされた小型タンクに回収されるという。

 この技術はトヨタと一緒にスーパー耐久でのカーボンニュートラル技術開発に取り組んでいる川崎重工業が開発した「従来よりも低温でCO2を脱離できる吸着剤」を塗着させたフィルターを使用することで実現したという。

液水カローラは走る化学プラントへ進化

 このCO2吸着を実現したことで、水素を燃焼させて走るカーボンニュートラルカーであった液水カローラは、カーボンマイナスカーになる。もちろん空気中にあるCO2はppmの単位で計られるものでわずかなものではあるが、内燃機関は多くの空気を吸い込んで走るものであり、その点でもこの技術は相性がよいという(トヨタ自動車水素エンジンプロジェクト統括 主査 伊東直昭氏)。

 とくに内燃機関が向いているのは熱を発生する点であるとし、この熱があることで吸着したCO2の脱離ができるとのことだ。

 液体水素を気化して燃焼させることは、ロケット技術と同様のものでもある。さらに、CO2を吸着するだけでなく、CO2を脱離し、吸着溶液で回収するなど、液水カローラは小さな化学プラント、走る化学プラントに進化したことになる。そしてその走る化学プラントを、ジェントルマンドライバーのモリゾウ選手や小倉康宏選手、プロドライバーの佐々木雅弘選手や石浦宏明選手がステアリングを握って走らせる。

 決勝レースにおけるカーボンニュートラルの挑戦、カーボンマイナスの挑戦、注目のスーパー耐久となるだろう。