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豊田章男会長、マイナス253℃の液体水素カローラについて語る 富士24時間参戦で「意思ある行動と情熱が、また1歩未来に近づく」

トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏。モリゾウ選手としてマイナス253℃の液体水素GRカローラで参戦

 5月26日~28日、富士スピードウェイで「スーパー耐久第2戦 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」が開催されている。この富士24時間で、ST-Qクラスにデビューするのが、マイナス253℃の液体水素燃料で走る32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(佐々木雅弘/MORIZO/石浦宏明/小倉康宏/Jari-Matti Latvala)になる。

 すでに富士でテスト走行などには参加していたが、一部水素漏れによる火災などのトラブルもあり、第1戦のデビューがずれ込んでいた。液体水素GRカローラを開発するトヨタ自動車は、これらのトラブルに対してカイゼンを実施。水素漏れの検知能力を飛躍的に向上するとともに、漏れた箇所も変更することで24時間レースに挑んでいく。

 70MPaの圧縮水素カローラのデビューは、2年前の富士24時間レースだったが、液体水素GRカローラについても24時間という厳しいレースでデビューすることになった。

 5月25日、練習走行を終えたモリゾウ(MORIZO)選手ことトヨタ自動車 会長 豊田章男氏と会うことができたので、世界初挑戦、しかも条件として厳しい24時間レースに挑む心境を聞いてみた。

 豊田章男会長は、「ついに、世界初の液体水素GRカローラが走ります。24時間レースということで、部品交換などの計画停止はありますが。この計画停止は初めから言っておいたらと思っています。計画停止ですから」と、計画停止に言及。別のスタッフにも確認したが、24時間連続で走るというよりも、ある部品の交換が必要とのことで、その部品交換をしながらの走行になるようだ。

「計画停止を事前に言っておかないと、谷川さんとか『何があったんだ~!!』って書くでしょ(記者注:いえいえ、そんなにあおって書くことはないです)? ですか初めから言っておきます」(豊田会長)。液体水素では、水素充填時間は気体水素に比べて短くなる(常圧給水素)ようだが、気体水素にはない部品交換が必要で、どうもその時間がかかるようだ。

 すると、液体水素を熱交換器に導くポンプあたりかと思うが、その辺りは決勝レースで明らかになっていくかもしれない。

 豊田章男会長は液体水素GRカローラで24時間レースに出る意義を、「液体水素と言えばロケットでしょ。去年から、気体水素のときから本当に多くの仲間が集ってきた。液体水素となることで、これまでと違う、新しい仲間が増える可能性がある。これが未来につながる。決勝レースで完走するということは、このチームの意思ある行動と情熱が、また1歩未来に近づくことになります。その辺りを、ぜひご注目いただきたいと思います」と語る。液体水素には気体水素と違うマイナス253℃の燃料という難しさがあるのだが、それが新しい仲間作りにつながり、未来を引き寄せるという。

 どのような仲間が増えるかは、決勝レースの取材中に明らかになっていくかもしれない。いずれにしろ、豊田章男会長がモリゾウ選手として、チームとして挑む領域は、世界の誰もが挑戦していない領域になる。

 先のG7サミットにおける「G7広島首脳コミュニケ」において、水素はエネルギー面でとくに重視されたものとなっていた。それだけに、FCEV(燃料電池車)以外の「つかう」を切り開く戦いが、この液体水素での24時間レース挑戦になる。

富士スピードウェイを走る液体水素GRカローラ