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自工会など自動車5団体、令和6年新春賀詞交歓会開催 自工会 片山正則新会長「官民のオールジャパンでさまざまな課題を解決していく」

2024年1月5日 開催

「令和6年新春賀詞交歓会」に出席した日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会、日本自動車販売協会連合会の会長

 日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会、日本自動車販売協会連合会の自動車5団体は1月5日、「令和6年新春賀詞交歓会」を都内で開催した。

 新春賀詞交歓会では主催5団体を代表し、自工会 新会長の片山正則氏(いすゞ自動車会長)とともに会長職を退任した豊田章男氏があいさつを行なうとともに、経済産業大臣政務官 吉田宣弘氏(経済産業大臣の齋藤健氏が公務のため欠席)、国土交通省 物流自動車局長 鶴田浩久氏(国土交通大臣の斉藤鉄夫氏が公務のため欠席)が来賓を代表して登壇した。

 また、1月1日に発生した令和6年能登半島地震、1月2日に羽田空港で起きた衝突炎上事故を受け、会場では黙とうが捧げられた。

会場では黙とうが捧げられた

 各人のコメントは以下のとおり。

自工会 会長 片山正則氏/豊田章男前会長

自工会 会長 片山正則氏

 日本自動車工業会 会長の片山でございます。まずは令和6年能登半島地震により犠牲となられました方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。被災地域の皆さまの安全確保、そして1日も早い復旧復興を心よりお祈り申し上げます。

 本日はご多忙の中、吉田経済産業大臣政務官さま、国土交通省 鶴田物流自動車局長さまをはじめ、このように多くの方々にご出席を賜りまして誠にありがとうございます。自動車5団体を代表いたしまして、新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年を振り返りますと、コロナ禍からようやく通常の社会生活や経済活動を取り戻すことが実感できた1年であったという風に思います。また、海外からの観光客やビジネスパーソンの方をお見かけする機会も増えるなど、日本全体に活気が戻り始めた年であったかと思います。新たな1年の始まりを皆さま方と共にできることに感謝を申し上げるとともに、2024年が自動車産業にとってより一層飛躍の年にとなるよう、業界一丸となりまして取り組んでまいりたいと存じます。

 私は本年1月1日より日本自動車工業会の会長職に就任いたしました。100年に1度の大変革のまっただ中で会社職を担うことについて、改めてその重責に身の引き締まる思いでございます。名実ともに本日から自工会新体制がスタートするわけでございますが、豊田前会長に築き上げていただいた課題解決に対してチームで取り組む形を進化させ、副会長の皆さまや理事の皆さま方と協力いたしまして、全力でこの難局を乗り越えていく決意でございます。

 さて、私たちが直面している課題は多岐にわたりますが、今後も自動車およびモビリティ産業が基幹産業として日本経済に貢献するために、向こう2年程度をスコープに、取るべき具体的なアクションを洗い出し、7つの課題として取りまとめたことはご案内の通りでございます。この中で、物流の停滞が懸念される2024年問題への対応は喫緊の社会課題でございます。自動車産業の枠を超えて他産業との連携を図り、自動運転技術の積極的採用や運行システムのさらなる効率化など、各種取り組みを推進してまいりたいと思います。

 また、カーボンニュートラルの実現については「敵は炭素であり、内燃機関ではない」として、マルチパスウェイの必要性を世界に訴えてまいりました。電動車の普及促進に必要なインフラ整備や、これを後押しする政策が求められますが、これをモビリティ産業への大きな変革期のチャンスと捉え、研究開発投資を昇華させ、新たな市場へのアクセスを開拓することで、競争力の向上に向けて取り組んでまいります。さらには国産電池、半導体の国際競争力確保、競争力のあるグリーンエネルギー、業界をまたいだデータ連携といった課題についても、全力で解決に向けてまい進いたします。

 また、昨年秋には第1回ジャパンモビリティショーを開催いたしました。クルマがモビリティに進化することで新たな価値を創造するモビリティ社会の実現に向け、500社の企業、団体の皆さまと作り上げることができました。結果として、111万人のお客さまにご来場いただき、モビリティ産業への期待、その可能性を掴むことができました。関わっていただいた全ての皆さまに改めて御礼を申し上げます。

 そして本日は私からのたってのお願いとして、このジャパンモビリティショーを引っ張っていただいた豊田前会長にお越しをいただいております。長年自工会にご尽力いただき、中でも近年は強力なリーダーシップで自工会改革を断行していただいた前会長に深く感謝を申し上げます。1度マイクをお渡しし、ぜひお話をいただきたいと思います。


豊田章男前会長

 あけましておめでとうございます、豊田でございます。まずは能登半島で発生した大地震並びに羽田空港での飛行機事故によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。片山会長のご指名によりひと言ごあいさつさせていただきます。

 2010年に初めて自工会の副会長を拝命してから13年半、2018年に2度目の会長に就任してから5年半、多くの方々に支えられ、この度、片山会長にたすきをお渡しすることができました。皆さまのご支援に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 自工会の歴史を振り返りますと、1960年代に初代会長を務められました川又克二さんから、1990年代初頭の5代目会長 久米豊さんまでは、皆さん4年以上会長職を務めてこられました。排ガス規制、オイルショック、貿易摩擦など数々の危機を乗り越え、先達が自工会の礎を築かれた、まさに創業期だったと思います。それ以降は会長の任期が短くなり、日産、トヨタ、ホンダの3社による持ちまわりが定着いたしました。

 そして、CASE革命により自動車業界が100年に1度の大変革期に突入する中、私は2度目の会長に就任することになりました。コロナ危機、カーボンニュートラルなど、自動車産業の構造改革に取り組む中で、自動車はみんなでやる産業、未来はみんなで作るもの、いつしかそれが合言葉となり、クルマを走らせる550万人のチームができたと思っております。

 会長職は神輿だと言われたりいたしますが、御輿の輿という字には車の文字が入っております。担ぐべきは会長ではなく自動車産業そのものである、そんな思いで私も仲間と一緒になって550万人の御輿を担いでまいりました。昨年のジャパンモビリティショーでは、自動車業界の枠を超えて多くの仲間が「乗りたい未来を、探しに行こう!」というメッセージを発信してくれました。

 そして迎えた2024年、富士スピードウェイでの初日の出、ニューイヤー駅伝で8年ぶりの優勝。喜んだのもつかの間、能登半島での大地震により、深い悲しみからのスタートになりました。13年前、東日本大震災の時に被災地の方からかけていただいた言葉が私の脳裏に蘇りました。「元気な地域、会社の人たちが、被災した地域の分まで頑張って日本を支えてください」。今の日本には550万人の強くてたくましい現場があります。被災された方々が1日も早く日常と笑顔を取り戻せるよう、550万人の仲間とともに私自身も動いてまいります。

 今こそ対立や分断、争いや誹謗中傷をやめて、お互いに助け合い、笑顔でありがとうと言い合う、そんな大人の姿を見せる時だと思います。今年は震災からの復興に加え、物流の2024年問題など、働き方が問われる年でもございます。いずれもその解決に向けては、自分以外の誰かを思う優しさが大切になると思います。優しいという字は、人を100回愛すると書きます。同じ日本に、同じ地球に生きる人たちへの愛、これから生まれてくる子供たちへの愛。そんな愛が溢れる年となりますことを祈念いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。


 ただいま力強い、また愛のあるお言葉をいただきました。ありがとうございました。ただいま豊田前会長から確かに私がたすきを受け取りました。今後、私たちは自動車以外のさまざまな産業の皆さまとともに手を携えて、官民のオールジャパンでさまざまな課題を解決し、持続可能なモビリティの未来を築いてまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

経済産業大臣政務官 吉田宣弘氏

経済産業大臣政務官 吉田宣弘氏

 ただいまご紹介いただきました経済産業大臣政務官を仰せつかっております吉田でございます。

 まず冒頭でございますが、本年1月1日に発災をいたしました令和6年能登半島地震においてお亡くなりになられました方々に、心からそのご冥福をお祈り申し上げ、また、被災された全ての皆さまにお見舞いを申し上げたく存じます。

 多くの企業やその関係の皆さまが被災された中で、被害の復旧や電動車の派遣など、団体から震災の対応に当たっていただいた自動車業界の皆さまのご尽力に心から感謝を申し上げます。

 経済産業省といたしましても、人命第一の原則のもと、電気、石油、ガスなどのエネルギーインフラの復旧、また、ストーブなどの暖房器具やトイレなどの経済産業省が所管をしております物資についてプッシュ型の支援を実施させていただき、またコンビニなどから支援物資の供給を強化させていただき、さらに中小企業、小規模事業者の皆さまの資金繰り支援の強化などについて緊張感を持って取り組んでおります。今後も総力を上げて災害対応に取り組んでおりますので、引き続き皆さま方のご協力を賜りますよう、心からお願いを申し上げるところでございます。

 さて、日本経済全体を見渡しますれば、自動車業界をはじめ経済界の皆さまの本当に尊いご尽力もあり、100兆円規模に達しつつある国内投資、また3.5%を超える賃上げ、双方において、実に30年ぶりの高水準を示しております。成長と改革の方向に向かう潮目の変化とも言うべき兆しが生まれてきております。これは、長らく停滞をしておりました日本経済を反転させ、縮み思考、デフレマインドを変える千載一遇のチャンスでもございます。

 この流れを確実なものとしていくために、特にGX、DXといった社会課題解決分野を成長の源泉となる成長分野と捉え、もう一歩前に出て大胆な産業政策を講じてまいります。その代表例が、今年の税制改正で盛り込ませていただきました、EVやFCVなどの戦略物資に対して生産販売量に応じて税額控除する戦略分野国内生産促進税制の創設でございます。ぜひ本制度を活用していただき、官民連携して、投資も賃金も物価も伸びる成長型経済をともに実現していきたく存じます。

 また、その実現の鍵となる構造的賃上げの実現に向けた、自動車業界の皆さまをはじめとした経済界の強いリーダーシップを引き続き期待をするところでございます。自動車をめぐるGX、DXの変化のスピードは、さらに加速度を増してまいります。わが国の基幹産業たる自動車産業が引き続き国際競争に勝ち抜くために、官民総力を挙げた一層の取り組み強化が不可欠でございます。

 まずGXについて、昨年のG7広島では自動車産業の脱炭素化に向けた多様な道筋の重要性を世界に示すことができたと存じます。引き続き、今年のG7イタリアなどの国際交渉の場面においても一層の浸透を図ってまいります。

 同時に、世界において加速するEV競争についても、わが国の自動車産業はなんとしても勝ち残っていかなければならないと考えます。国としても、電動車の購入支援、充電インフラ整備、蓄電池戦略、鉱物資源の調達など、重層的に取り組みを講じてまいります。各社の皆さまにおかれましても、すでに革新型の電池の開発や新たな車両の投入計画を含め、大胆な投資を進めていただいておるところでございますが、一層の取り組みの加速化を期待申し上げたいと存じます。

 もう1つ大きな競争軸はDXでございます。自動運転をはじめとする新たなデジタル技術やデータの活用によって、クルマの作り方や使い方が大きく変化をしております。こうした新たな技術は、人口減少や少子高齢化の中で生じている移動手段の確保やドライバー不足への対応といった社会課題を解決する可能性を秘めております。DXによる取り組みを加速化し、こうした社会課題を世界に先駆けて解決することとともに、これを新たな競争力にしていくことが重要でございます。

 私自身も視察をさせていただきました。先ほどもお話がございましたけれども、昨年のジャパンモビリティショーでも、自動運転技術をはじめ、デジタル化を意識した次世代モビリティが多く展示をされており、モビリティの大きな可能性を実感したところでございます。政府といたしましても、自動運転の社会実装、データ連携基盤の構築、半導体の国内生産体制の確保など、DXの競争に勝ち抜くための環境整備を進めてまいります。この分野でも一層の官民連携を進めていきたいと存じます。

 加えて明年は、2025年日本国際博覧会、大阪・関西万博が開催されます。昨年末には入場チケットの前売り販売も開始され、本番に向けてより一層準備が加速されていきます。企業、団体がこれまでの万博よりもさらに幅広い参加ができるように、多様な参加の枠組みが計画されております。産業界の皆さまにおかれましても、ぜひとも積極的な参画をお願い申し上げます。

 最後になりますが、自動車産業はこれまでとは全く違う次元の競争下にある中、今後も日本が世界をリードしていくという強い決意で、官民一体となって他国に負けないスピード感でGX、DXなどのさまざまな取り組みを進化していくことが極めて重要でございます。自動車業界の皆さまにとって、今年1年、ますますの繁栄の年になりますことを心からお祈り申し上げて、私のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

国土交通省 物流自動車局長 鶴田浩久氏

国土交通省 物流自動車局長 鶴田浩久氏

 あけましておめでとうございます。今回、齋藤大臣が参りまして皆さま方にごあいさつ申し上げるところでございますが、災害と事故の対応のため出席がかなわなくなっています。皆さま方へのあいさつを預かっておりますので、代読させていただきます。

 令和6年の新年を迎え、慎んで新春のごあいさつを申し上げます。本年1月1日に発生しました令和6年能登半島地震によりお亡くなりになられた方々とそのご家族に心からお悔やみ申し上げます。また、被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 まずは、片山新会長におかれましては、日本自動車工業会会長として、わが国の自動車産業のさらなる発展はもとより、物流2024年問題や地域公共交通の確保などの課題解決に向け、なお一層のご支援を賜りたくよろしくお願い申し上げます。また、豊田前会長におかれましては、自動車業界の発展に多大なるご尽力をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

 昨年秋には東京モーターショーを改めジャパンモビリティショーが4年ぶりに開催され、私も会場を視察させていただきました。自動運転車や電気自動車などの先進的な自動車に加え、空飛ぶクルマやパーソナルモビリティといった新たなモビリティが数多く出展されているのを拝見し、まさに今、モビリティ産業の大変革期にあることを改めて実感いたしました。

 国土交通省としましても、新たなモビリティ社会の実現に向け、自動運転や地球温暖化対策の推進、国土交通省職員が副議長を務める国連WP29における自動車の国際基準づくりの議論の指導など、不断の努力を重ねてまいる所存です。引き続き本日ご列席の皆さま方のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 結びに、わが国の自動車産業にとって、本年がさらなる飛躍の年となりますこと、また、ご列席の皆さま方のご健勝、ご繁栄を心より祈念いたしまして新年のごあいさつとさせていただきます。

 令和6年1月5日、国土交通大臣 斎藤哲夫。代読させていただきました。ありがとうございます。