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自工会 片山正則新会長が決意表明 「皆さまとともに日本の自動車産業をより強化し、未来を開拓していくことを楽しみにしている」

2023年11月22日 発表

記者会見に出席した現自工会会長の豊田章男氏(右)と、2024年1月に新会長に就任する片山正則氏(いすゞ自動車会長)

物流、商用領域が大きなテーマ

 自工会(日本自動車工業会)は11月22日、日本自動車会館で記者会見を開き、豊田章男会長の退任を発表するとともに、新会長に副会長である片山正則氏(いすゞ自動車会長)が就任することを明らかにした。これまで歴代会長はトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業から就任しており、3社以外からの会長就任は今回が初となる。

 なお、豊田会長は自工会の会長職は退任するが、2022年6月に新設された経団連のモビリティ委員会の委員長は継続し、引き続き自動車産業に貢献していくとのこと。

 会見には豊田会長、内田誠副会長、三部敏宏副会長、鈴木俊宏副会長、日髙祥博副会長、片山正則副会長、佐藤恒治副会長、永塚誠一副会長が出席し、豊田会長がこれまでの振り返りを行なうとともに、片山副会長が新会長就任に対する意気込みなどを語った。

会見は会長、副会長が出席して行なわれた

 豊田会長は1月に会長職について辞意を表明していたが、3月に開かれた臨時の理事ミーティングを経て1年間の続投を発表。G7サミットに合わせた自工会のイベントや、2023年10月28日~11月5日の会期で行なわれた「ジャパンモビリティショー2023」をリードした。

 会見の冒頭、豊田会長はその「ジャパンモビリティショー2023」について「先日、第1回ジャパンモビリティショーが多くの方々のご支援とご尽力のもと、盛況のうちに幕を閉じました。お客さまの数は日を追うごとに増え、最終的には目標を上まわる111万2000人、日当たり10万人の方々にご来場いただくことができました。主催者といたしましては成功と言って良いのではないかと思っております。この場をお借りしましてご来場いただきましたお客さま、全ての関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました」とコメントするとともに、11月22日に行なわれた理事会で1月からスタートする自工会の新たな役員体制について報告。

豊田章男会長

 現副会長である片山正則氏が新会長に就任した背景について、「今、2024年問題をはじめ、物流、商用領域が大きなテーマになっております。この物流、商用領域は運航管理やエネルギーマネージメントなど、未来に向けてみんなが協力すべきテーマが多く、納期を明確にしやすいという特性がございます。課題と納期が明確になれば、解決のための行動につながります。そして、その行動はカーボンニュートラルに向けた乗用車、二輪車の将来の取り組みにもつながってまいります。今回の理事会では、喫緊の課題である商用領域に全員で取り組むことが未来への重要な一歩になるとの認識のもと、大型車の世界で豊富な経験を持ついすゞの片山さんに次期会長をお願いしたいということになりました。副会長は、日本のフルラインアップのそれぞれの代表として、現副会長6名に継続いただきます。そして、来年の1月よりこの体制で片山会長をしっかりとサポートしてまいります」とコメント。

 また、「今から5年前、私が会長に就任した時、自工会の事務局メンバーにこう言いました。『これまで会長が変わるたびに振りまわされていたのかもしれない。そうならないように、自工会としてブレない軸を一緒に作っていこう。事務局は100人の小さな所帯でも、自動車産業550万人の代弁者。仲間全員の思いを背負う覚悟と自覚を持ってほしい』。この5年間で事務局の人たちが1番変わったと思います。今回のモビリティショーがその象徴だったと思います。自動車産業はみんなでやってる産業。未来はみんなで作るもの。これが自工会のぶれない軸になりました。私自身は自工会から離れることになりますが、5年という時間をいただいたことで、モビリティ産業を支える業界団体としての土台は作れたと思っております」。

「今、世界は対立と分断を深めております。こんな時代だからこそ、今を生きる大人たちが未来を担う子供たちにどんな姿を見せるのか、何を伝えるのか。それが大切だと思っております。日本には『ありがとう』という美しい言葉がございます。私自身、モビリティ産業に関わる1人の大人として、これから生まれてくる子供たちのために『ありがとう』と言い合える日本、信頼と共感に支えられた未来を多くの仲間と一緒に作ってまいりたいと思っております。今後とも自工会の取り組みにより一層のご支援をお願いいたします」との思いを語った。

片山新会長の決意表明

片山正則新会長

 一方、新会長に就任する片山氏は、「まず、この立場に就任できることを誇りに思う一方、100年に1度と言われる自動車産業の大変革のまっただ中で、会長職を受け取る、その重責に身が引き締まる思いでございます。今回の就任にあたり、2018年からの5年間、さらに遡ると2012年から2014年までの間、強力なリーダーシップで業界を引っ張っていただきました豊田会長に深く感謝を申し上げます。中でも近年の自工会改革の断行では、多くの場面で卓越した指導力を発揮していただきました。特にここ2年の改革により、課題解決にチームで取り組む体制ができてまいりました。この流れを絶やすことなく、この改革をさらに進化させ、果敢に課題解決を図って参ることを新体制一同、お誓いする次第でございます。自動車産業は、これからも日本の経済において最重要の柱といっても過言ではなく、私たちのこの団体はこの業界を支える中心的な存在でございます。しかし、私たちは新たな課題と変革の時代に立たされております。自動車技術の進化、環境への影響、そして市場の変動など、私たちが直面している課題は多岐にわたります」。

「その中で、特にここ2、3年で注力する課題を7つにまとめた結果、カーボンニュートラル化だけではなく、2024年問題に代表されるドライバー不足、物流効率化や運航管理等と協調すべき課題が多い商業領域が当面のペースメーカーになるべきとの議論に至り、今回の体制となりました。私たちのビジョンはこれらの課題に果敢に立ち向かい、業界をさらに発展させ、社会に貢献してまいることであります。まず第一に環境への貢献を強化し、持続可能な自動車技術とモビリティの未来を築きます。日本自動車工業会では、従来より多様な選択肢、マルチパスウェイの必要性を『敵は炭素であり、内燃機関ではない』という言葉で世界に訴えてまいりました。理解の波は着実に広がりつつあります。地域の事情や特性を生かしたカーボンニュートラル実現の活動は、多くの仲間づくりにつながってきており、例えばカーボンニュートラル燃料等の議論も進んできております。今後の2年間で、日本自動車工業会は今まで以上に地球環境保護への責任を果たし、エネルギー効率の向上、電動車の普及など、環境への貢献を積極的に進めてまいります。また、われわれの業界は急速に変化しており、新しいテクノロジーとデジタル化の進化は、新たなビジネスモデルと機会を提供しています。私たちはこの変革に対応し、研究開発への投資を増加させ、新たな市場へのアクセスを開拓することで競争力を維持し続けます」とあいさつ。

 続けて「先月、第1回ジャパンモビリティショーが開催されました。100万人を超える入場者数や100社を超えるスタートアップ企業の参加など、従来のモーターショーの領域を超えた確かなモビリティ産業への社会の期待とその可能性をしっかりと掴むことができました。引き続き、550万人の仲間から850万人の仲間作りに向けて邁進してまいります。最後に、全産業の皆さまに感謝を申し上げます。皆さまのご協力とご支援がなければ、私どものビジョンを成し遂げることはできません。皆さまとともに、日本の自動車産業をより強化し、未来を開拓していくことを楽しみにしております」と決意表明を行なっている。

 なお、会見に出席した新副会長もあいさつを行なった。

日髙祥博副会長

日髙祥博副会長

 豊田会長、それから片山副会長から新体制について、その狙い、考え方、色々ご説明ありますので、あとはそのチームで取り組んでいく体制が本当にできたと私も思っておりまして、微力ながら片山新会長を支えながら自工会が示す7つの課題に対して実際に実行していく、そしてきちんと結果を出していく。そういったことをやりながら、それぞれのテーマに対して、それぞれ誰が主担当になるかというのを決めていますので、その方が引っ張りながら、自工会も議論の場になっておりますので、きちんと情報共有もその場でしながら全体として前に進んでいくような、そんなことで頑張っていきたいと思います。

 ジャパンモビリティショーですが、先ほど豊田会長からマスコミの方からなかなか応援いただけなかったというような発言もありましたが、僕はジャパンモビリティショーで皆さんの行動がすごくあたたかいエールに感じましたので、今後も精一杯頑張っていきますので、今後も報道陣の方におかれましても応援いただけたらと思います。よろしくお願いします。

三部敏宏副会長

三部敏宏副会長

 新旧会長が色々話した通りなんですけども、やはりそのわれわれとしてはモビリティというものが、過去の例えば二輪、乗用車、商用とかそういう枠組みを超えてですね、新しい世界に移行していくという。そんな中で言うと、例えば人を運ぶ、モノを運ぶ、それを支える技術としてはコネクティット、自動運転なども含めると、お客さまと繋がる部分もあれば社会そのものと繋がるとか、それから公共交通機関、パーソナルモビリティといった色々なもので繋がり、いわゆるシームレスな形になっていき、そういう新しいモビリティの世界が社会構造そのものを変えていく。

 それぐらいの大きなものを想定している中で言うと、例えば今回の片山新会長はトラックの会社のトップであるということではなくて、新しいモビリティ社会の中で行くには誰が(新会長に)いいかということで、数か月かけて副会長の中で議論した結果、それを進める人として片山さんが1番最適だろうと、こんな議論をして決めたということをお伝えをしておきたいということです。私自身はですね、この変革期は絶好のチャンスであると捉えておりますので、自工会そのものがその変革の主体者となって進めていくべきと思っておりますので、今後は関連する色々な産業を含めて変革者となって全体を進めていく上では、このメンバーが中心となって強力にそれを進めたいと思ってますので、今後ともよろしくお願いいたします。

鈴木俊宏副会長

鈴木俊宏副会長

 自工会が一丸となって日本の産業力、競争力を上げていけるように、そして地球環境等の課題解決に向けて取り組めるように、しっかりと片山新会長をサポートできるよう頑張っていきたいと思います。

内田誠副会長

内田誠副会長

 皆さんお話された通りなんですけど、やはり重要なことは今世界が変わっている、われわれのビジネス環境が変わっている。そうした中で、いかに業界を超えた協調領域を見ながら日本の競争力につなげていくか。自工会も進化していかなきゃいけないと思います。

 そういう中でわれわれ副会長が強いリーダーシップと責任感を持って、かつ理事の方と連携しながら、また国の方と連携しながら、本当の意味で自動車産業がいろんな面で貢献できる絵を作っていかなければいけないと思います。最終的には今回のジャパンモビリティショーでもわれわれが掲げていたように、人々の生活をいかに豊かにできるか、そのためにわれわれが社会的な責任と、雇用を含めてどう守っていけるか。ここをスピーディに真剣に取り組まなければいけない、非常に大きな正念場になってると思います。そういった面では、ここにいらっしゃる皆さん、覚悟と勇気を持ってこれに取り組んでいく所存でありますし、自工会がさらに良くなってきたねと皆さんに応援いただけるように努めていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

佐藤恒治副会長

佐藤恒治副会長

 豊田会長がずっと取り組んでこられた風土改革が本当に効果を上げていて、今の自工会の理事会の雰囲気というのは非常に活性化している状況にあると思います。私自身は、副会長としては非常にキャリアの短いものではありますけれども、副会長同士の対話も非常にフランクに、かつ活発に行なわれているという、まさに土台ができたという状況にあろうかと思います。また、新会長であられる片山さん、オンにオフに色々お話をさせていただく中で大変情熱を持って色々なことに向き合っておられるリーダーであられますし、色々な考えをお持ちです。しっかりとその会長をお支えできるように、一丸となってこのチームでやっていきたいと思っております。

永塚誠一副会長

永塚誠一副会長

 まず豊田会長には長い期間にわたりまして自工会の改革を始めといたしまして、自工会活動全般をリードしていただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。特にカーボンニュートラルに向けた多様な選択肢の重要性を内外に情報発信をし、国際的な世論にも影響を及ぼすことができたということ、そしてまた経団連での委員会の発足、東京モーターショーからジャパンモビリティショーへのフルモデルチェンジなど、業界の垣根を超えた活動を推進していただきました。これらはいずれも豊田会長でなければ実現し得なかった、大きな成果だと考えております。

 自動車産業を取り巻く環境は、会長、副会長からもお話ございましたように大変厳しく、グローバルには官民挙げて電動車や蓄電池などの戦略分野の投資を自国内に囲い込む政策の競争が活発化しているような状況でございます。日本の自動車産業が今後とも基幹産業として日本経済社会を支え続けるためには、他産業との連携を強化し、チーム一丸となって取り組むことが大変重要だと改めて実感してございます。豊田会長に築いていただきました土台を大切にして、モビリティ産業への変革に向けまして片山新会長をお支えし、他の副会長の皆さま方、理事の皆さま方とともにこの難局を乗り越えていきたいと考えてございます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。