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インテル、CES2024で仏Silicon Mobility買収やSDV向け新SoC発表 自動車メーカーにチップレット技術提供も

2024年1月9日(現地時間) 発表

IntelがCESで展示したSDV(Software Defined Vehicle)向けのデモ。車両制御や電子ミラー、IVI、メーターなどがソフトウェア的に実現されている

 Intelは1月9日に米国ネバダ州ラスベガス市で開催されているCES 2024に出展し、同社が12月に発表したPC向けの最新SoC(System on a Chip)となる「インテルCore Ultraプロセッサー」を搭載したAIをPCの世界にもたらす「AI PC」のソリューションを訴求している。

 そうしたIntelだが、1月9日15時(現地時間)から、「Accelerating the Road Ahead: How Intel Automotive Drives Intelligence into Every Mile」という説明会を行なっており、Intel CEO パット・ゲルシンガー氏、Intel 副社長 兼 Intel自動車部門事業本部長 ジャック・ウエスト氏などが参加して、同社の自動車向けSoCの戦略などに関して説明を行なっている。

 この中でIntelはフランスの自動車向けカスタムシリコンを提供する「Silicon Mobility SAS」(Silicon Mobility)を買収することを明らかにしており、それらの製品をIntelの製品群に統合していくことで、自動車メーカーがAIを高度に自動車に統合していくことを実現する戦略だ。

EV向けのSoCを提供するファブレス半導体メーカー「Silicon Mobility」の買収計画を発表

 Intelが買収を発表したSilicon Mobility は、フランスのEV向けのカスタム半導体を提供するファブレスの半導体メーカーで、自動車向けの半導体を自動車メーカーに提供している。提供しているのはSoCだけでなく、ソフトウェアも同時に提供しており、SoCとハードウェアを組み合わせることで、SDV(Software Defined Vehicle)を構築することを容易にしている。

 Silicon Mobilityは2019年から日本にもオフィスを開設しており、日本の自動車メーカーなどへも売り込みを図っている。買収後はIntelの一部となって自動車メーカーやティアワンの部品メーカーへ売り込みをかけることになる。

 IntelはこのSilicon Mobilityを、それまでの所有者であったフランスの投資会社から買収し、今後自社の製品ポートフォリオに組み込んでいく計画だ。買収の完了には規制当局などの承認が必要とされており、買収額や買収完了の時期は現時点では明らかにされていない。

AI PCの知見を自動車向けに注ぎ込む「AI-enhanced SDV SoC」、Zeekerが採用予定

Intelが発表したSDVのイメージ。左が今の自動車、右がSDVな未来の自動車

 また、Intelは次世代のEV/SDV向けのSoC製品群「AI-enhanced SDV SoC」を発表。Intelが今回のCESでPC向けに訴求している、AIの機能を高性能に処理できるPCとなるAI PCの経験を自動車にもたらすという。

電子ミラーなどもソフトウェア的に実現される

 具体的には生成AI、電子ミラー、HDビデオ会議やPCゲーミングを自動車に新機能としてもたらすと同時に、自動車の中央コンピューターとしても動作することで、従来型のECUを減らして自動車のエネルギー効率を改善するとともに、管理性と伸縮性をもたらすことが可能になる。

 このAI-enhanced SDV SoCを最初に採用する自動車メーカーは中国の「Zeekr」(ジーカー)で、今後同社の車両に採用され、IntelのSoCを利用して生成AIを活用した音声アシスタント機能などが実装される計画だ。

自動車メーカーにIntelのチップレット技術を自動車グレードにして提供する計画を明らかに

 この他にもIntelはSAE Internationalの自動車規格「J3111」(車両プラットフォーム電力管理規格)へ参加し、IntelがACPI(Advanced Configuration and Power Interface:PCの省電力を実現する規格)への取り組みを通じて得た知見を自動車に適用する取り組みを推進する。Intelはステランティス、HERE、Monolithic Power Solutions などと協力しながら今後12~18か月の間に最初のドラフトを提供することを目指す。

 また、Intelは現在自社製品に活用している、チップレットと呼ばれるパッケージの中で複数の半導体チップを混載する技術を、自動車向けグレード対応として自動車のユースケースにも提供する計画だと明らかにした。これにより自動車メーカーは低コストで、自社のソリューションにカスタムしたSoCを製造することが可能になる。それにより自動車メーカーのSDVを実現する取り組みが加速すると説明している。