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EVから家に電気を供給する家庭用V2Hシステムが勢ぞろいした「SMART GRID EXPO[春]」

2024年2月28日~3月1日 開催

SMART GRID EXPOではV2Hシステムが数多く展示されている

 東京ビッグサイトで「SMART GRID EXPO[春]~第15回[国際]スマートグリッド展~」(以下SMART GRID EXPO)が2月28日~3月1日に開催されており、V2xシステムなどクルマの電動化に関わる展示も多く出品されている。中でも普段は見る機会の少ないEVの充電器やクルマから家に電気を供給するV2H機器も多く展示されている。

 SMART GRID EXPOは、SMART ENERGY WEEK[春]を構成する1つの展示会で、業界関係者の商談会。スマートグリッドの1つであるEVの充電器や蓄電池などが多く展示され、バッテリメーカーとしてのBYDやCATLも展示ブースを構えている。

 またEV関連では、公共の場などに設置する急速充電器やそのビジネスの展示も多いが、2023年から参入メーカーが増えた一般家庭用V2Hシステムも展示されている。

CATLのブース
BYDのブース

ニチコンは3月発売のEVパワーステーション新製品を展示

 一般家庭向けのV2H機器では老舗のニチコンは、3月発売のV2Hシステム、新型EVパワーステーション「VSG3-666CN7」(128万円)を展示。

新型EVパワーステーション(VSG3-666CN7)

 既存の据置型機種「VCG-666CN7」とは異なり、壁掛け対応としてプラグホルダを別体としたもので、パワーユニットは大幅な小型軽量化を行なっている。機能面では出力などは変わらないが、停電時のV2H動作への切り替え手順を自動化するなどした。すでに2023年10月開催のジャパンモビリティショー2023でも展示しているが、発売間近ということもあり展示中だ。

新型EVパワーステーションのプラグホルダは支柱に設置も壁付けも可能
新型EVパワーステーションの操作部

 ニチコンではEVパワーステーションのほか、太陽光、蓄電、V2Hの3つの機能を持つトライブリッド蓄電システム「ESS-T3シリーズ」を別途用意し、こちらも展示している。EVパワーステーションも太陽光発電や蓄電と組み合わせることも可能だが、いったん家庭用の交流電源に変換した上で電気を送り合う。

トライブリッド蓄電システム「ESS-T3シリーズ」
トライブリッド蓄電システムの表示と操作の液晶画面

 一方のトライブリッド蓄電システムは、太陽光パネル、蓄電池、EVの間を直流の電気で結び、交流と直流の変換なしに電気をやりとりする。また、EVへの充電出力は電力会社からの電気(系統)と太陽光、蓄電池を合わせて最大9.9kWで充電できることも特徴となっている。

あとから必要なものを付け足しできる

 システムはすべてそろえる必要はなく、中心となる5.9kW出力のトライブリッドパワコンを用意し、必要に応じて太陽光、蓄電、V2Hを組み合わせられる。

シャープは発表されたばかりのV2HシステムのEVコンバータを展示

 シャープは2月15日に発表され、3月発売予定のEVコンバータ「JH-WE2301」(165万円)を含むV2Hシステムを展示。システムの特徴は各機器間を直流で結ぶことと、EVコンバータ部が壁掛けタイプで23kgと比較的軽量なことが挙げられる。

シャープのV2Hシステム
EVコンバータ「JH-WE2301」

 中心となる蓄電池連携型パワーコンディショナーは、2タイプの容量(定格出力5.5kWと4.0kW)がすでに発売中で、蓄電池システムもすでに発売済み。今回V2Hシステムを発売することで、太陽光・蓄電・V2Hの3つそろったシステムが完成する。

蓄電池連携型パワーコンディショナー本体部は、小型・軽量化されているという
ケーブルの長さは7.8m
システムの中心となる蓄電池連携型パワーコンディショナーの5.5KWタイプ

 こちらも3つすべてそろえる必要はなく、蓄電池連携型パワーコンディショナーが中心にあれば、太陽光パネル、蓄電池、EVコンバータの必要な部分だけ導入でき、あとから追加も可能だ。

 また、AIや天気の情報に応じた動作も可能。シャープのクラウドHEMSサービス「COCORO ENERGY(ココロエナジー)」と連携して、気象情報や家電の利用状況からEVの充電量を制御できる。

パナソニックはV2H蓄電システム「eneplat」をマイナーチェンジ

 パナソニックはすでに太陽光、蓄電、V2Hをすべて直流で結ぶV2H蓄電システム「eneplat」を2023年から販売しているが、今回は耐重塩モデルを追加するなどしたマイナーチェンジを行なっている。EVと接続するV2Hスタンドも新しくなっており、耐重塩仕様も追加された。

パナソニックのV2Hシステム「eneplat」

 他社と同様にパワーコンディショナーとなる「パワーステーション」を中心に置き、必要に応じて太陽光、蓄電、V2Hを組み合わせることが可能。パワーコンディショナーは6.0kwのものだけ用意される。

V2Hスタンド「LJV2671C」
ケーブルの長さは7.3m

 また、パナソニックではV2Hだけでなく、普通充電のコネクターに接続するEV充電器「ELSEEV」も展示している。EVの普通充電は通常、車両に付属している充電器ではAC200V、3.0kWでの充電となるが、最近多くなっている普通充電6.0kW対応車では、別途、6.0kWに対応した固定の充電器が必要となる。パナソニックでは以前から壁面取り付けタイプの充電器を用意しており、6kW対応タイプもラインアップしている。

こちらはV2Hではなく普通充電器のELSEEV hekia S Mode 3。6kWや3kWタイプ、AiSEG2対応の有無などの仕様が選べる
公共向けの普通充電器ELSEEV public Mode 3は、2台同時に充電できるタイプも選べる

 パナソニックでは、エネルギー管理のAiSEG2に対応して家電との連携を行なっているが、V2Hシステムや普通充電器の一部もAiSEG2と連携し、充電の制御などが可能となっている。

オムロンはマルチV2Xシステム「KPEP-A」シリーズを展示

 オムロンは、2023年5月に発売したマルチV2Xシステム「KPEP-A」シリーズを展示。太陽光、蓄電と組み合わせるもので、こちらは家庭用の交流電源に変換した上で電気を送り合うものとなる。

オムロンのマルチV2Xシステム「KPEP-A」シリーズ

 システムは独立しているため、既存の太陽光発電システムに追加したり、V2Hシステムだけを導入したりすることも可能。V2Hに必要なものはマルチV2Xパワーコンディショナーと車両側に接続するEVユニットとなる。

EVユニットとマルチV2Xパワーコンディショナー
オムロンにも遠隔操作のアプリは備わる。離れた場所にあるオムロンの施設の状況を表示している

ホンダブースには可搬バッテリを利用したスズキのバイクも展示

 ホンダのブースにはV2Hシステムの展示はないが、2輪車を皮切りにさまざまな機器に展開中の着脱式可搬バッテリ「Honda Mobile Power Pack e:」を使うモビリティや建機などが、メーカーの枠を超えて勢ぞろいしている。

ホンダは着脱式可搬バッテリのスタンドとなるHonda Power Pack Exchanger e:を展示。バッテリを実際に抜き差しできる

 モビリティではホンダ「SC e:Concept」、スズキ「e-BURGMAN」といった二輪車のコンセプトモデル、ヤマハは4輪の電動モビリティ「DIAPASON C350」「DIAPASON C580」を展示したほか、建設機械や投光器、電動コンプレッサーなどHonda Mobile Power Pack e:を採用した機器が並んでいる。

ホンダのバッテリ「Honda Mobile Power Pack e:」で動く電動二輪車のコンセプトカー SC e: Concept
Honda Mobile Power Pack e:で動くスズキの電動スクーターの実証実験車「e-BURGMAN」
Honda Mobile Power Pack e:を採用するヤマハの2人乗り電動モビリティのプロトモデル「DIAPASON C580」。不整地を走ることを想定
Honda Mobile Power Pack e:を採用するヤマハの1人乗り電動モビリティのプロトモデル「DIAPASON C350」。ゴルフ場での利用を想定

 Honda Mobile Power Pack e:を採用する酒井重工業の舗装用ローラーや、古河ユニックのミニ・クローラクレーンなどには「POWERD by HONDA」のステッカーが貼られ、ホンダファンに刺さる展示となっていた。

酒井重工業の舗装用ローラーを電動化
Honda Mobile Power Pack e:で動かすため「POWERD BY HONDA」がフロントに表示される
古河ユニックのミニ・クローラクレーン
Honda Mobile Power Pack e:を中央部に搭載
NIKKENの高所作業用のリフト
コンプレッサーも電動化し騒音にシビアな現場でも使える