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シャープ、軽量コンパクトなEV用コンバータ発売 V2Hシステム「Eeeコネクト」でEVと太陽光と蓄電池を一括制御可能に

EV(電気自動車)の充放電が可能なEV用コンバータ「JH-WE2301」に関する説明を行なったシャープエネルギーソリューション株式会社 エネルギーマネジメント事業統轄部 エネルギーマネジメント商品企画部部長の佐藤努氏

EVコンバータとパワコンの設置でV2Hが可能に

 シャープは2月15日、EV(電気自動車)の充放電が可能なEV用コンバータ「JH-WE2301」を3月25日に発売すると発表。すでに発売している対応型パワーコンディショナーと接続することで、EVへの充電とEVから自宅への電力供給を行なう「V2H(Vehicle to Home)」が可能になるだけでなく、太陽光発電、蓄電池と組み合わせた制御に必要な機器がそろい、蓄電池との連携や2023年11月にスタートした家電連携に加え、新たにEVもつながる「Eeeコネクト」システムの提供も開始した。

 今回発売したEV用コンバータのJH-WE2301は、壁面設置ができる比較的コンパクトな仕様で、サイズは505×347×194mm(幅×高さ×奥行き)で重さは23kgと、シャープは「業界最小・最軽量」と案内している。充放電コネクタケーブル長は7.8m。価格は165万円。

EV用コンバータ「JH-WE2301」

 EV用コンバータだけでの利用はできず、発売中の自宅の電力系統と接続するための蓄電池連携型パワーコンディショナー「JH-55NF3」(価格50万8200円)または「JH-40NF2」(価格41万9100円)が必要になる。

 これらをそろえて必要な設置工事をすることで、EVへの充電とEVから自宅への給電が可能になる。

V2Hシステムと充電器の違い

 EVコンバータと接続するクルマの充電コネクタは普通充電用ではなく、急速充電用の双方向給電が可能なCHAdeMOのコネクタを使用。EVへの充電最大電力は6kWで、EVから自宅への供給最大電力は組み合わせるパワーコンディショナーによって異なり、JH-55NF3では5.5kW、JH-40NF2では4.0kWとなる。

EVコンバータ部分は現時点で「業界最小・最軽量」という

 また、一般的にV2Hは対応車種が限られており、国内ブランドの多くのEV/PHEVは対応するが、輸入ブランドのEV/PHEVではV2x機能をもともと搭載しない車種がほとんど。

 2月15日現在でシャープが接続確認をして対応車種としているのは、日産「リーフ(2代目)」「サクラ」のみ。その他のメーカーについては接続確認ができた車両より順次Webサイトへ掲載するとしている。

太陽光発電、蓄電池、EVの3つの電気を自動連携して直流で結ぶ

 今回発売したEV用コンバータは以前から登場が予告されていた製品で、蓄電池連携型パワーコンディショナーや蓄電システムはすでに発売済み。これで太陽光発電、蓄電池、EVの3つの電気を自動連携する機器がそろう。

蓄電池連携型パワーコンディショナーがあれば、EV用コンバータの追加でV2Hシステムになる

 連携によって、太陽光発電で日中に多く発電しているときは、蓄電池だけでなくEVへ同時充電して効率よく太陽光で発電した電気を自家消費できる。また、停電時には蓄電池やEVからの電気を自宅へ供給できるほか、停電していないエリアで充電してきたEVをシステムに接続すれば、自宅へ給電(V2H)と蓄電池への充電も可能となる。

停電時の活用イメージ

 太陽光発電、蓄電池、EVの走行用バッテリの3つの電力はもともと直流で、Eeeコネクトではそのまま直流で結ばれることが特徴。従来の太陽光発電システムや蓄電池、V2Hシステムでは、それぞれが一般的な電源の交流に変換したうえで電力をやりとりするシステムが多かったが、直流のまま結ぶことで効率よく使えるとしている。

 また、一括制御するためにシャープのクラウドHEMSサービス「COCORO ENERGY(ココロエナジー)」にEV連携機能を追加。気象予報や日常の電力利用などからAIが自動的に蓄電池やEVの充電量などを制御してくれる。

気象予報によって自動充電も可能
充電忘れをスマートフォンに通知できる

 晴れて太陽光発電の発電量が多いと予想された場合の充電量の振り分けだけでなく、暴風や大雨などの警報が出た場合に、自動であらかじめEVを充電しておくといったことも可能。

 日常的な機能では、設定時刻にEVに充電ケーブルが接続されていない場合にCOCORO ENERGYのスマートフォンアプリに通知を送り、充電忘れを気づかせる機能も装備する。

太陽光発電や蓄電を後から導入可能。最長15年の有償サポートも用意

 Eeeコネクトは、太陽光発電、蓄電池、EVの3つに対応しているが、必要なものだけの導入が可能。充電やV2Hだけを導入し、必要に応じて太陽光パネルと接続して太陽光発電、蓄電池と接続して蓄電と組み合わせるシステム拡張が後からできるのもポイント。

 反対に、蓄電池連携型パワーコンディショナーを使って太陽光発電システムを導入しておけば、後からEV用コンバータを加えて、V2Hシステムにすることもできる。

有償のサポートサービスを提供

 また、サポート体制についても、機器保証のほかに有償補償サービスなどを提供。24時間365日対応のコールセンターを用意し、EVとの接続が多くなるであろう帰宅時の夜間に発生した操作時の困りごとに対応する。落雷や台風といった自然災害、充放電コネクタの落下やEV用コンバータにクルマをぶつけたときの損害もサポートしていて、最大15年まで延長して利用できる予定だという。

EVの販売増加を見て市場投入、シャープならではのソリューション

 シャープでは今回のV2Hシステムの市場投入は、政府のカーボンニュートラル宣言と、そのための再エネ普及拡大と電動化が必要という背景のなかで、発売を決めたもの。

 もともとEV用コンバータも2023~2024年ごろの投入と予告していたが、発表を行なったシャープエネルギーソリューション エネルギーマネジメント事業統轄部の佐藤努氏は「EVの増加とV2H市場の拡大を見たとき、まだまだ市場規模は大きいとは言えないが、自動車メーカーのEV発売のタイミングや販売増加を見つつ発売を決めた」と説明した。

EVとV2Hの拡大予測

 また、太陽光発電の発電量が天候に左右されるなかで、賢く自家消費することや、電動化による電力消費量増大に対応するエネルギーマネジメントの重要性を挙げ、そのうえで、災害による停電などの非常時に自立した生活をする設備や機能を有する「レジリエンス」が極めて重要とした。

再エネや電動化の課題
レジリエンスとしての活用事例

 加えて佐藤氏は、蓄電池と違ってEVであれば非停電エリアで充電したEVによってV2Hで電力供給すればレジリエンス強化になるとし、これまでの太陽光発電と蓄電池に加えて、EVで電気を運べることも強調した。

 シャープは、2014年に発売したネット経由で蓄電池を制御するクラウド蓄電池システムを導入。さらに2019年にはクラウドHEMSサービスを開始して蓄電池やエコキュートのAI予測制御を導入し、2023年にはソーラーと家電の連携を開始している。AI予測制御については「令和2年度 新エネ大賞」を受賞しているなど多くの実績を残している。

シャープの太陽光発電メーカーとしての実績

 そのうえで今回発表したEeeコネクトは、「3つのeは、エナジー、エンバイロメント、エコノミーを表現。“機器やサービスをいい感じにつなぐ”ことで太陽光で発電したクリーンな電力を核に、地球環境に配慮しながら経済的にもメリットのあるソリューションを提供する。1959年に太陽電池の開発に着手し、先進のAI技術を開発するシャープならではのトータルソリューションです」と佐藤氏は説明した。

Eeeコネクトは、シャープ独自の住宅用エネルギーソリューション