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BYD 東福寺厚樹社長に聞く 長澤まさみさんの起用など新ブランドコミュニケーションを開始した狙いとは

BYD Auto Japan株式会社 代表取締役社長 東福寺厚樹氏

EVセダンSEAL(シール)は6月末発売予定も公表

 1995年に中国・深圳で創業し、ITエレクトロニクス、自動車、新エネルギー、都市モビリティの4つの領域で事業をグローバルに展開しているBYD。当初はバッテリメーカーとして創業したが、現在はバッテリだけでなくモーターや制御装置など、EV(電気自動車)コア技術の開発から製造までを自社で可能とし、すでに中国国内でのEVやPHEVといったNEV(New Energy Vehicle)の販売台数でトップに立ち、2023年度のグローバルでのBEVとPHEVの販売台数は302万台、グループ年間売上高は6023億1535万元、純利益も300億4000万元超。グローバルでのEV販売台数も2023年第4四半期はテスラを抜いて首位に立つなど躍進している。

 日本では2005年にBYDジャパンを設立し、ノートPCやモバイル機器のバッテリや、ソーラーパネルおよび産業用蓄電システムなど環境エネルギー事業のほか、EV事業などを展開。EV事業では2010年に自動車ボディパーツのプレス金型の製造品質向上を目指し、群馬県にある金型製造会社「TATEBAYASHI MOULDING」を買収。主にEVバスとEVフォークリフトを手掛け、2015年に初導入。現在は北海道~沖縄県まで公共交通用途などで200台以上の納入実績を持ち、国内EVバスのシェアは70%以上を占めている。さらに、EVフォークリフトは物流業界、機械・製造業界、製紙業界など、400台以上の納入実績を持つ。

BYDの日本での活動の軌跡

 そして乗用車の導入に向け、2022年7月に日本法人となるBYD Auto Japanを設立。2025年末までに日本各地に100店舗以上の販売ネットワークを構築し、乗用車の販売とアフターサービスを提供する計画を発表。これまでに、オートバックスセブン、双日、アクセルなどがディーラーを開設しているほか、明治産業とサービス技術トレーニングの領域において協業も進めている。

 そこで、4月10日から女優・長澤まさみさんを起用した新たなブランドコミュニケーション「ありかも、BYD Park!」をスタートさせた狙いなどを、BYD Auto Japanの代表取締役社長である東福寺厚樹氏に聞いてみた。

2023年1月に発売したミドルサイズSUV「アット3」
コンパクトEV「ドルフィン」は2023年9月に発売

 東福寺社長の説明によると、現在国内には、問い合わせ対応、試乗、販売を行なっている正式ショールーム23店舗と開業準備室(準備中店舗)の28施設の計51か所の拠点があり、2025年までに掲げている100店舗という目標の約半分まで到達。

 2024年は「プロダクト(製品)」「体験機会」「コミュニケーション」と、3つのアップデート戦略を発表していて、2023年1月に発売した「アット3」のアップデートを実施したことに加え、製品拡充を図るべくEVセダン「シール」を、2024年6月末に発売すると明かした。加えて、6月末ころには拠点数も開業準備室を含めて70か所ぐらいまで増やせる目算も立っているとのこと。

BYDが実施する2024年の3つのアップデート戦略
EVセダンの「SEAL(シール)」
2024年6月末発売予定で準備を進めているという

 加えて体験機会のアップデート企画として東福寺社長は、「さわればわかる、EVのイイとこ。」をコンセプトに、ミドルサイズSUV「アット3」とコンパクトEV「ドルフィン」の展示・試乗イベント「Hello! BYD Caravan」を3月から実施。東京(代官山)を皮切りに、名古屋や山口など全国30か所での開催を予定していると説明。

 続けて、「お店に行こうと思っても近くなかったり、見るためだけにお店へ行くのは面倒だなと思われる方が多いと思うのですが、今回の街中にクルマがあって、タイミングが合えば乗れるイベントはとても好評で、各地で実際にクルマに触れていただくと同時に、多くの見込みユーザーの情報発掘にも役立っています」とイベントの効果について言及。

展示・試乗イベント「Hello! BYD Caravan」を3月から実施中

 しかし、「国内ではまだまだ『BYD』自体の知名度が低い」と東福寺社長は言い、首都圏であれば80%ほどある認知度も、地方では50%程度と低いため、今回発表したコミュニケーションのアップデートとなる「ありかも、BYD Park!」キャンペーンを企画。

 長澤まさみさんを起用した新たなキャンペーン新CMについて東福寺社長は、「日本ではブランド立ち上げ当初から『ハローBYD、eモビリティをみんなのものに』をブランドパーパスとして掲げていますが、今回はより幅広いユーザーにEVを身近なものに感じてもらいたいと考え、長澤まさみさんを起用し、ユーザーが『EVって意外ともっと簡単かも、もしかしたら自分の家でも使えるかな?』と思ってもらえるきっかけになるような映像に仕上がっていると思います」と手応えを感じていると語った。この新CMは時間帯によるが、かなりの高頻度で流す予定とのこと。

 また、期間限定のイベント会場では、いろいろなジャンルのインフルエンサーにBYDを使ってもらい感想を聞く企画も実施していて、「○なところ×なところも、そのままストレートに表現していただくのも、いい機会になるんじゃないかなと思っています」と東福寺社長。

新たなブランドコミュニケーションを開始
国民的女優の長澤まさみさんをCMに起用
東京 原宿にある「The Iceberg」で実施しているイベントは4月15日まで

 最後に4月1日~6月30日の期間限定で車両購入時の金利が0%になる“今だけ、0(ゼロ)金利キャンペーン”について東福寺社長は、「2023年12月1日~2024年3月31日の基準では、アット3に85万円~65万円、ドルフィンに65万円のCEV補助金が出ていたが、2024年4月1日以降は基準が変わったため、一律35万円となってしまいました。去年末ぐらいから新たな基準に対応する準備を進めていて、満額(85万円)はちょっと難しいなという感覚はあったのですが、正直ここまで下がるとは予想外でした。そこで、その下がった補助金分の埋め合わせの意味も含めての0金利キャンペーンでして、頭金や支払い回数によって多少金額は変わりますが、だいたい4年ローンでアット3なら約22万円、ドルフィンなら約20万円ほど金利分がお得になります。また、同ローンの利用分と令和5年度補正CEV補助金を合わせると、アット3なら最大で約57万円、これに各地方自治体の補助金を加えると、さらに支払い総額を抑えられます」と説明する。

車両購入時の金利が0%になる“今だけ、0(ゼロ)金利キャンペーン”は4月1日~6月30日の期間限定

 また、「送られてきた計算根拠の内容を1つ1つ精査して、何が足りないとか、何をやれば何点取り戻せるというのはだいぶ見えてきました」と東福寺社長は言い、「減額の大きな要因は、販売台数に対してインフラ(充電設備)への貢献度が低いことが挙げられますので、ショッピングモールや高速道路SA(サービスエリア)の高出力急速充電器への置き換えや普通充電器の増加と呼応しながら対応を進めていければと思っています」と、今後の展望を語ってくれた。

今後の展望を語るBYD Auto Japanの代表取締役社長 東福寺厚樹氏