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村田製作所、電源ノイズ対策を向上する「Lキャンセルトランス」や車室内のCO2濃度を低減する「CO2吸着フィルタ」など公開
2024年5月22日 17:19
- 2024年5月22日~24日 開催
- 入場無料(事前登録制)
村田製作所は、パシフィコ横浜で5月22日~24日の期間開催されている「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」にて、電子パーツの誤動作を防ぎ安全性を確保するためのノイズ対策や熱対策、より快適な車室空間の実現など、「より安全で、より快適なモビリティ社会の実現」に貢献するためのソリューションを多数展示している。
ノイズ除去性能を高めるLキャンセルトランス
電子機器の小型化・高機能化にともない、基板回路の高密度化と使用されるICの員数が増えているが、これによりICから発生するスイッチング電源のノイズがケーブルや基板配線を通じて伝播したり、空中に不要な電磁波として放射されてしまうため、周囲の電子機器の誤動作や機能低下を引き起こす可能性があるという。そのため安全・安心・快適な電子機器の利用環境を実現するためには、スイッチング電源のノイズ対策が必要不可欠となる。
一般的な電源ノイズ対策は、電源ノイズの伝播経路となる電源線とグランドの間にコンデンサを配置する方法で、ノイズをグランドに逃がすもの。また、この対策方法におけるノイズ除去性能は、使用するコンデンサのインピーダンスが低いほど高まる。しかし、高調波領域では、コンデンサ内にあるESL(Equivalent Series L:等価直列インダクタンス)と呼ばれるインダクタ(磁束が回路に問題を起こすのを阻止するための電気部品)として働く寄生成分があり、インピーダンスが高くなるためノイズ除去性能が低下してしまうという。
そのため、高い信頼性が求められる機器では、高調波領域でのノイズ除去効果を高めるために、複数のコンデンサを並列接続してインピーダンスを低減させているが、コンデンサの設置スペースを確保する必要があり、電子機器の小型化がなかなか進められないことが課題であった。
そこで村田製作所は、独自の素子設計技術とセラミック多層技術により、世界で初めて負のインダクタンスを活用し、コンデンサ内部にあるインダクタンスと基板内に発生するインダクタンスを相殺する電源ノイズ対策部品「Lキャンセルトランス(LXLC21シリーズ)」の開発に成功。Lキャンセルトランスを1個組み込むことで、これまでよりも少ないコンデンサの員数でノイズを抑制することが可能となり、システム全体の省スペース化と軽量化、高機能化を実現した。
すでにLキャンセルトランスはコンシューマー向けに量産が始まっていて、カーナビやドライブレコーダーなどに採用されているが、耐熱温度の上限やMAX3Aまでのため、現在より高い耐久性が求められる自動車メーカー向けに、最大20Aまで使用できる「LXLFシリーズ」を開発中という。
車室内の二酸化炭素を車外へ放出する「CO2吸着フィルタ」
自動車は“外気導入”と“内気循環”を選択できるが、村田製作所によると内気循環を使用していると車室内のCO2濃度が外気導入と比べて大幅に上昇し、その結果ドライバーの眠気を引き起こす原因にもなるという。
また、バッテリEV(電気自動車)の場合、エアコンなど電気使用量が航続走行距離に影響を及ぼすことから、村田製作所では内気循環のまま車室内のCO2濃度を下げられる「CO2吸着フィルタ」を開発。
車室内の空気を電動ファンなどで強制的に循環させつつ、CO2吸着フィルタを通過させ二酸化炭素を吸着させて回収。フィルタに吸着した二酸化炭素は約60℃でフィルタから離脱するので、その離脱した二酸化炭素は車外へ排出することで、車室内のCO2濃度を下げるという仕組み。
CO2吸着フィルタは、二酸化炭素の吸着だけでなく、除湿効果もあるほか、圧損の少ないハニカム構造のため、長く使用できるのも特徴。また、車室内だけでなく農家のビニールハウスなどの利用も想定できるという。