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村田製作所、関東最大の研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」公開
2021年7月15日 13:44
- 2021年7月14日 開催
村田製作所は7月14日、神奈川県横浜市にある同社の研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」の内覧会を開催した。
みなとみらいイノベーションセンターは2020年12月に開業した同社で関東最大の研究開発拠点。基盤事業として注力している通信や自動車向けの製品に加え、エネルギー、ヘルスケア、IoTといった新規市場向け製品の基礎研究や企画、デザイン、設計力の強化を図る施設となっている。
このうち自動車向けの車載製品では、同社初の車載関連展示施設として5月20日にオープンした「Murata みらい Mobility」に加え、専用リフトを備えて車両の観察、分解が行なえる「ピット施設」、車両の走行状態を再現しながら実験や検証ができる「大型電波暗室」の3施設を整備しており、当日はこの3施設が公開された。
施設概要
施設名:株式会社村田製作所 みなとみらいイノベーションセンター
所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい 4-3-8
構造・規模:鉄骨造 地上18階、地下2階、塔屋1階
敷地面積:7,414.88m 2
延床面積:65,335.35m 2
内覧会の冒頭では、村田製作所 執行役員 みなとみらいイノベーションセンター事業所長 川平博一氏によるあいさつが行なわれた。
川平氏は「私どもはオートモーティブの市場に非常に注力しており、実際にCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と称される先進技術のすべてに弊社の製品が関連しております。また、自動車の車内だけではなく、外部と接続するコミュニケーション全般も弊社が強みとする領域です。さらに自動車はハードだけではなく、必ず人間が介在するもので、われわれはヘルスケア・メディカル領域にも注力しております。この開発拠点は通信、車載、IoT、ヘルスケア・メディカルといった弊社の事業すべてに関連するもので、皆さまに強くコミュニケーションしていきたいと思います」。
「この建物は(みなとみらい21地区の)大都会にあり、車載機器の試験装置を置くにあたって難しい部分も多々ありましたが、それを乗り越えてご覧いただける状況になりました。実際に見ていただいて、車載機器が分解状態になった展示のほか、電波暗室はクルマを走っている状態にしながら電界強度やノイズ、走行特性に影響を与える部品特性などを、弊社の部品と他社の部品を比較しながら確認できる、極めてユニークな施設になっていると考えております」。
「また、この建物内には車載や通信関連だけではなく、エネルギーやヘルスケア・メディカルといった事業のヘッドクォーターが入っております。そうした領域のメンバーともコミュニケーションしながら新しいビジネスチャンスを生んでいきたい」と語り、同社の狙いやみなとみらいイノベーションセンターの立ち位置などを説明した。
Murata みらい Mobility
最初に案内されたMurata みらい Mobilityでは、展示コンセプトを「電子部品のTier2から見た自動車」と設定。スペースの中央に大型セダンのカットモデルを展示して、現代の車両でいかに多くの電子部品が搭載されているかを紹介するほか、壁の2面に同社製品を含む電子機器の基板を展示している。
展示内容は「コネクテッド・IVIエリア」「ADAS・セーフティエリア」「エレクトリファイドエリア」「コモンエリア」の4種類に分類。展示品はそれぞれパネル単位で壁面に立てかけられた状態で置かれ、パネルごと手に取ってじっくり細部までチェックできるようにしているほか、裏面も確認できるよう、展示品をパネルから取り外せるようにしている。
さらに展示スペースの一角には、すでに市販車で採用されている製品や開発中の技術について、実際の動作を見ながら説明してもらえる超小型EVを使ったデモ車両を用意。自動車メーカーの担当者などに見てもらい、ここから実際の製品化に向けた話し合いのきっかけとしても利用しているとのこと。
デモ車両には「超音波センサー」「荷重センサー」「コンボセンサー」「ミリ波レーダー」の4種類を設置。超音波センサーはすでに多くの車両で障害物の検知やペダルの踏み間違い防止機能などに利用されているが、同社の製品では物体との距離に加え、複数のセンサーを並列配置して連動させることにより、横方向の位置についても検知可能としている。
荷重センサーはシートの背もたれと座面の2か所でクッション内に設置。シートに座るだけで乗員の呼吸や心拍数といったバイタルデータを取得でき、自動運転の実現でも必要とされる「DMS」(ドライバーモニタリングシステム)などに活用するため研究が行なわれており、さらにシートに固定したチャイルドシートに座る子供のバイタルデータも検知できるので、子供の置き去り防止にも活用できるのではないかと考えて研究を進めているという。
コンボセンサーは3軸の加速度センターと3軸のジャイロセンサーを組み合わせ、6軸の情報を1つのチップで検出可能にする製品。高精度、高感度を実現しており、センサーから遠い車両のフロントノーズ部分をコツコツとノックした程度の衝撃も検知できるので、自動運転における車両制御で非常に重要な部品になるほか、衛星情報がロストしたときにスタンドアロンで自車位置を測位し続けられるという。このコンボセンサーは自動運転での使用に耐えうる安全レベルを確保しながら、すでに量産化されている。
ミリ波レーダーはドア(想定のポール)とスカッフ位置に設置され、ドライバーから死角になる位置に縁石などの障害物があっても検知可能。ミリ波レーダーはドアなどの内側に内蔵できるので、外観に影響なく安全性を高められるのがポイントになるとのこと。
なお、Murata みらい Mobilityは展示施設だが、研究開発拠点内にあるため一般公開されてはおらず、主な来場者は就職活動などで同社に興味がある学生や、ビジネスパートナーの担当者などが対象となっており、同社の社員を通じて見学申請を受け付け、社員同行で見学することになる。
ピット施設
続いて紹介されたのは、Murata みらい Mobilityの隣にあるピット施設。油圧式の専用リフトを備えており、ジャッキアップしてフロア下をチェックしたり、純正装着されている部品を取り外したり、自分たちの製品を取り付けてみたりといった作業に利用している。また、今後稼働予定の大型電波暗室で作業をする場合にも、このピット施設で部品の取り付けなどを行なうという。
また、同社では定期的にニューモデルの分解調査を行なっている。これによって自社製品がクルマの最終製品でどのように使われているかを把握するほか、現在の車両を知ることで、将来の自動車市場でどのような電子製品やソリューションが必要とされるかを予測している。
大型電波暗室
ビルの地下2階にある大型電波暗室は、10月のオープンに向けて現在も工事が続けられている。11×21×8m(幅×奥行き×高さ)という広さを持ち、車載した電子部品がノイズを出したり、外部から入ってくるノイズが車内の電子部品にどのような影響を与えるかを測定する。
クルマで使われる電子部品の開発では、部品単体でのノイズ挙動で問題がなくても、車載後に想定外のノイズ挙動が起きることもあり、開発によけいな時間が取られてしまうこともあるという。自動運転を実現するため、今後は電子部品のノイズ特性もさらなる安全性が求められるようになると予想されており、このため同社では、クルマが実際に走行している状況まで再現して計測できるこの施設を用意。よりよい電子部品を高いスピード感で世に送り出すことを目指している。
フロアにはシャシーダイナモを備えた直径8mのターンテーブルを設置。室内の逆サイドには直径3mのターンテーブルが用意され、こちらは電子部品を単体で計測する際に利用される。走行状態の再現に使われるシャシーダイナモはタイヤを回転させるためのモーターや電源を備えており、そのままだと電波暗室での使用に不適切なため、EMC(電磁両立性)に特化した特別仕様のシャシーダイナモを採用している。
これにより、電子部品単体と車載しての走行状態の両方を、環境を合わせて1度に測定することで、より正確に差分や相関などを調べられるようになるという。