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宇治市とソフトバンクと村田製作所、準天頂衛星を使って路面情報を収集

ソフトバンクのIoTプラットフォーム利用

2018年6月29日 発表

「Iotを活用して路面情報を検知する実証実験に関する説明会」に出席した、株式会社村田製作所 取締役常務執行役員 岩坪浩氏(左)、宇治市 市長の山本正氏(中央)、ソフトバンク株式会社 執行役員 広域法人第二営業本部 本部長 清水繁宏氏(右)

 宇治市とソフトバンクは6月29日、7月1日~2019年3月31日の期間、村田製作所が開発した「路面検知システム」と高精度な位置測位を可能にするソフトバンクの技術を組み合わせて、宇治市内の路面情報を検知する実証実験を実施すると発表した。

 今回の実証実験では、村田製作所がカメラや加速度センサー、ジャイロセンサーなどを用いて路面の状態を把握する「路面検知システム」を開発。この「路面検知システム」を配送業などの車両に搭載して、準天頂衛星を利用して高精度な位置情報を連携させるソフトバンクの技術を組み合わせて、宇治市内の路面情報を収集する。

村田製作所が開発した「路面検知システム」
次のバージョンではカメラを組み合わせるという
ショックセンサー
配送業などの車両に「路面検知システム」を搭載して、音、ジャイロセンサー、ショックセンサーの情報により路面の状態を収集
「路面検知システム」のデータを収集することで、道路の状態をネットワーク上で可視化できるという
実証実験ではサービスとして成立させるためにどれくらいのサンプル数が必要なのかについても検証していく

 これまで道路の点検作業は、路面の状態を把握するために熟練した作業員が専用車両を使って定期的に巡回する必要があった。

 実証実験では、クルマが走行しているときの音、ジャイロセンサー、ショックセンサーのデータを収集。路面のクラックなどで発生する音や振動、カメラの画像と位置情報を組み合わせることで、路面の状態と場所を正確に把握できるようにするという。そして、収集したデータはソフトバンクのIoTプラットフォームを利用して、一元管理できるようにする。

 IoTを活用することによって路面の状態を効率的に把握することで、点検にかかる費用や時間が抑えられ、さらに日常的なモニタリングによって早い段階で劣化を発見して対処するなど、従来の事後保全から予防保全への転換が可能とし、道路の維持管理にかかる費用も削減できるとしている。

「Iotを活用して路面情報を検知する実証実験に関する説明会」に出席した、村田製作所 取締役常務執行役員 岩坪浩氏(左)、宇治市市長の山本正氏(中央)、ソフトバンク 執行役員 広域法人第二営業本部 本部長 清水繁宏氏(右)

 同日開催された「Iotを活用して路面情報を検知する実証実験に関する説明会」には、宇治市市長の山本正氏、ソフトバンク 執行役員 広域法人第二営業本部 本部長 清水繁宏氏、村田製作所 取締役常務執行役員 岩坪浩氏が出席。それぞれ今回の実証実験に対するコメントを話した。

宇治市市長の山本正氏

 宇治市の山本氏は「大阪北部を震源とする地震では、水道管やブロック塀など社会インフラの危うさが浮き彫りになりました。社会インフラは高度成長期に集中的に整備され、今後急速に老朽化することが懸念されており、どのようにインフラを維持管理、更新するか全国的に大きな課題となっております。このような中、IoTを活用して路面情報を検知する実証実験では、ソフトバンクさまや村田製作所さまからご提供していただく技術は、道路という社会インフラを効率的かつ効果的に整備していくもので、人口減小が加速し、人材不足や税収減が予測される中、安心安全なまちづくりを進めていく上で大いに期待されるもの」との期待感を話した。

ソフトバンク株式会社 執行役員 広域法人第二営業本部 本部長 清水繁宏氏

 ソフトバンクの清水氏は「道路の維持管理はコストであり、事後保全であり、完成されたスキームではあるが、新しいスキームを取り入れることで非常に効率化できる分野であると考えております。路面の情報を拾うというのは、センサーで検知した情報と高精密な位置情報をネットワーク上で1つのサービスとして完成させる、これが今回の実証実験の内容です。IoTを利用するので価格は安く、今後5年~10年で劇的に機器類が安くなり、それに応じてスキームが安くなる。また、村田製作所さんのプラットフォーム上において、今何が起きているのかリアルタイムで把握して、今後どのようにすればいいのかが可視化できる、予防保全までの領域にいける」などとコメントした。

実証実験では4G回線を使用するが、IoT向け低速・低消費電力での活用を考えている
株式会社村田製作所 取締役常務執行 役員 岩坪浩氏

 村田製作所の岩坪氏は「ソフトバンクさまと宇治市さまの協力を得て、一緒にICTあるいはIoTを活用して、皆さまの生活に便利なもの、予算や支出を削減できるようなものに仕上げていければいいのかなと思っております。ご存知の通り村田製作所は“中のことをやっています”と言っていますが、IoTの実現、便利な市民生活の実現に向けて、私どもの技術が役立つことを願っております」とコメントした。

 ソフトバンクでは、今回の実証実験を通して路面情報の収集に必要な車両数の検証や収集データの精度の確認、路面の状態を自動で解析するシステムの検証などを行ない、商用化に向けてソリューションの構築を目指すとしている。

宇治市とソフトバンク、地方創生に関する包括連携協定を締結

宇治市とソフトバンク、地方創生に関する包括連携協定を締結

 なお、宇治市とソフトバンクは同日、地方創生に関する包括連携協定を締結。この連携協定に基づき、今回の実証実験の領域にとどまらず、IoTやAI(人工知能)を活用して「宇治市人口ビジョン 宇治市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を推進し、地方創生の実現に向けてさまざまな面で相互に連携していくとしている。

包括連携協定における連携事項

・観光振興及び宇治茶振興事業に関すること
・地域のブランドづくりに関すること
・地域産業の振興、地域産業のイノベーション促進に関すること
・創業支援、新規事業の創出に関すること
・雇用促進及び就労支援に関すること
・地域のPRや魅力発信、安全・安心なまちづくりに関すること
・就労・結婚・出産・子育ての切れ目のない支援に関すること

「地方創生に関する包括連携協定」締結式でソフトバンクの清水氏は「市の方策としてのIoTの利活用をソフトバンクとしても積極的に後押ししたく、さまざまなテクノロジーを提供させていただく次第です。事務処理効率化や市民の利便性向上の分野においては、最新の業務自動化ソリューションRPA、AIを活用した社内の実証実験を行なっております。これは働き方改革の一環として取り組んできて大きな成果を上げております。また、幅広い街づくりの分野においても、IoTプラットフォームを活用したスマートシティ構想を、他の自治体さまでも取り組んでおり、河川や道路など都市インフラのセンシングデータとさまざまなデータを私どものプラットフォームにつなげていくことで、そのデータを有機的に連携させ新しい知見に基づく安心安全の街づくりを宇治市さまが行なえるよう貢献できると考えております。今後、連携協定を推進していくことで宇治市さまの総合戦略がより一層推進されるよう、弊社も協力させていただきます」とコメントした。