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ソフトバンクとホンダ、宮古島でスタートした「2輪EVレンタル」のコネクテッド活用を説明する発表会

利用料金は1万2960円/日

2019年3月5日 開催

宮古島で電動2輪車のレンタルサービスがスタート。使用車両は本田技研工業の2輪EV「PCX エレクトリック」

 ソフトバンクと本田技研工業は3月5日、沖縄県宮古島市における電動2輪車のレンタルサービスにおいて、2社で連携してコネクテッド機能の有用性を検証すると発表した。

 宮古島での電動2輪車のレンタルサービスは「宮古カレン」が行なうもので、車両は原付二種クラスのホンダ2輪EV(電気自動車)「PCX ELECTRIC(エレクトリック)」を使用。このモデルはガソリンエンジン搭載の「PCX」をベースに、新開発の電動パワーユニットを採用した電動2輪車。48Vのリチウムイオンバッテリーパックを2個直列に搭載することで96V系のシステムとし、モーターの最高出力は4.2kW(5.7PS)を実現。電動車ならではのスムーズな走行性能を手に入れており、最高速はおよそ70km/h、航続距離はフル充電で41km(60km/h定値走行、1名乗車時)となっている。

 ただ、4輪のEVと大きく違うのが、バッテリーパックが着脱式となっている点。充電には2つの方法が用意されており、ゼロから満充電までは車両に搭載したままで約6時間、専用充電器を使用すると約4時間(1個あたり)必要になる。電欠のたびに待ち時間が必要だと面倒になってしまうが、このモデルの場合はバッテリーパックを入れ替えることで、すぐに走り出すことができるのがメリットだ。

PCX エレクトリック
ブルーを基調にしたサンゴ模様のデカールを装着
4輪車と同様のバッヂが付く
車名バッヂ

 コネクテッド機能は専用の車載器を搭載し、CAN(Controller Area Network)通信を利用して位置情報や走行距離、速度、バッテリー残量などのデータをリアルタイムに収集して分析。2輪車におけるコネクテッド機能の有用性を検証するとともに、宮古カレンにおける車両の効率的な運用のサポートなどを行ない、さらにホンダ側ではバッテリー利用状況などの分析に活用して今後の商品開発に活かしていくという。

 運用サポートの具体例としては、現状では機能として実装されてはいないものの、「車両側のセンサーにより転倒を認識し、管理側にアラートを出す」ような仕組みが用意されているそうだ。また、ユーザーが情報を見るためのアプリケーションは現在のところ用意されていないとのこと。

車体の中央部にリッドがある
中には充電用のAC100Vケーブル
コンセントは給電用ではなくケーブル固定用
シート下に着脱式のバッテリーを2個搭載
端子部
デジタルメーターを採用
DC12Vソケットもある
ハンドルにホンダのウイングマークを備える
ハンドル右側のスイッチ類
モーター部
通信モジュール。2本のケーブルはGPSアンテナとCAN+電源
モジュールは中央部にあるボックスのさらに奥に装着されているため、通常は見ることはできない
本体は防塵防滴仕様。中にSIMカードが入っている

 今回のレンタルサービスではPCX エレクトリックを20台用意し、「紺碧 ザ・ヴィラオールスイート」「Day's Beach Hotel 瑞兆」「オーシャンズリゾート宮古島」の3か所で直接貸し出しを行なうほか、「宮古島 東急ホテル&リゾーツ」「フェリスヴィラスイート 伊良部島・佐和田」「フェリスヴィラスイート 伊良部島・上野」「いら風」の4か所でもスタッフによる配車を行なうことで貸し出しが可能。宿泊者以外の利用も可能となっている。走行距離の面では、バッテリー交換や充電が可能なスポットとしてレストランやカフェ、土産物店など16か所を用意。島の各所に設定されたこうしたスポットに立ち寄ることで、走行距離を気にせず宮古島を楽しむことができるわけだ。

 このレンタルサービスは3月6日から開始され、宮古カレンのホームページから予約および決済が可能。利用料金は1日あたり1万2960円で、2人分のヘルメットとグローブ、配車料金、保険料が含まれる。観光用途での利用はもちろん、PCX エレクトリックは企業や官公庁向けのリース専用車両となっていることから、一般ユーザーが気軽に試乗できる場としても楽しめそうだ。

宮古島で電動バイクならではの体験を

株式会社カレンスタイル 代表取締役社長 松良文子氏

 事業開始に先立って宮古市内のホテルで実施された説明会には、ソフトバンク、ホンダ、宮古カレンを運営するカレンスタイルの担当者が出席。

 まず、レンタル事業を担当するカレンスタイル 代表取締役社長 松良文子氏が登壇。同社について「モビリティを軸にして地域の活性化を目指すサービスプロバイダ」であり、宮古カレンは「(レンタカーのような)移動手段を提供するのではなく、宮古を全身で味わっていただく体験をするサービス」であると説明。その上で、「電動バイクは静かで匂いがない」ことから、「花の香り、風の香りを感じながら宮古を五感で味わうことができる」と、電動バイクならではの魅力をアピールした。

 また、宮古カレンのキャッチフレーズ「OVER THE BRIDGE」に触れ、宮古島には伊良部島と繋ぐ伊良部大橋、池間島と繋ぐ池間大橋、来間島と繋ぐ来間大橋があり、「大きな素晴らしい橋が架かっている。橋を渡る体験をぜひしていただければと思っている」と、宮古島ならではの観光スポットを紹介した。

 実際のサービスに関しては「店舗を持っていないので配送での提供」とした上で、3か所のホテルには実車を配置しており「予約してすぐに乗っていただける」と説明。また、途中で充電をする必要が出た場合は「バッテリー交換スポットを16か所程度」用意しており、「魅力的なカフェや食堂、土産物店があるので、楽しみながらバッテリーを交換していただける」とした。

キャッチフレーズは「OVER THE BRIDGE」
黄色い枠で囲われている3か所のホテルには実車が常備される
池間大橋
伊良部大橋
来間大橋
バッテリー交換スポット
池間島への途中にあるバッテリー交換スポットの「狩俣マッチャーズ」は地元向けのスーパーといった趣
店内にバッテリーと充電器が置かれている
地元産の野菜や弁当などが購入できる
池間島にあるカフェ「LOOPHOLE」。こちらは最南端の対応スポット
株式会社ホンダモーターサイクルジャパン 代表取締役社長 加藤千明氏

 続いてホンダモーターサイクルジャパン 代表取締役社長 加藤千明氏が登壇。サービス開始にあたって準備した内容を説明した。まずハード面では、2018年11月に発売したPCX エレクトリックを20台用意。「ぜひ宮古島の特色を味わっていただきたい」とのことから、サンゴをあしらった専用デザインを施していることを説明。また、バッテリーパックと充電器を約70個ほど島内のスポットに配備したほか、ヘルメット、グローブ、ウエアなどの乗車装備を各種取り揃えており、「安心してお乗りいただける」とした。一方、ソフト面でも地元の協力を得つつ、車両のメンテナンスやロードサービスの体制を整えているとした。

 宮古カレンで使用する専用車両については、「沖縄の青い海、青い空をほうふつとさせるさわやかなブルー」「サイドにはサンゴのデザイン」とすることで、「宮古島を訪れたお客さまが沖縄のイメージを抱いてお乗りいただける車両」になっていると説明。「レンタルを通じた素晴らしい体験で宮古島のファン、宮古カレンのファンが増えていくことを期待したい」と締めくくった。

宮古カレン仕様のPCX エレクトリックをアンベール
操作方法など
関係者によるフォトセッション

宮古の素晴らしさを感じられる新しいライディング体験

本田技研工業 二輪事業本部 事業企画部 事業企画課 山本祐司氏

 メディア向けの試乗会後に行なわれた懇親会では、本田技研工業 二輪事業本部 事業企画部 事業企画課 山本祐司氏が宮古カレンのサービス概要を説明。まず、コンセプトの「OVER THE BRIDGE」に関しては、自身が池間大橋を訪れて「空を飛んでいるような気分になった」との体験から、「すてきな体験、経験をわれわれだけでなく多くの皆さんにお届けしたい」との想いから掲げたと説明。次いでコンセプトを支える3つの要素として、「アクティビティ」「エレクトリック」「コネクト」を挙げ、「3つのキーファクターを掛け合わせることで宮古の素晴らしさを五感で、全身で感じられるような新しいライディングの体験を提供していきたい」とした。

宮古カレンのコンセプトなど
本田技研工業株式会社 二輪事業本部 事業企画部 部長 三原大樹氏

 山本氏に引き続き登壇した本田技研工業 二輪事業本部 事業企画部 部長 三原大樹氏は、宮古カレンについて「単なるレンタルではなくアクティビティ」だと語り、観光スポットとともに「バッテリーステーションでランチを食べたり、お土産を買ったりと、地元の皆さんとの結びつきを大事にしたい」とコメント。また「PCX エレクトリックを使ったシェアリング、レンタルのビジネスモデルを宮古島発として全国、グローバルにつないでいきたい」と、今後の展開を見据えて語った。

ソフトバンク株式会社 常務執行役員 エンタープライズ第一営業本部 本部長 小菅良宏氏

 ソフトバンク 常務執行役員 エンタープライズ第一営業本部 本部長 小菅良宏氏は、30年ぶりにバイクに乗ったと前置きしつつ、PCX エレクトリックを「静かでクリーンでものすごくクイックレスポンス」で、「体験したことがなかった未来的な乗り物」「自然に恵まれた宮古島に求められる移動手段だと感動した」と評価。ホンダとは4輪ではインターナビですでに協力関係にあるが、「2輪でも同様のことが(宮古カレンという)新しい世界観の中で実現できるのではと大変楽しみにしている」と述べた。

走行シーンのモデルを務める小菅氏
懇親会には宮古島市市長 下地敏彦氏も参加
下地市長も交えたフォトセッション