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ソフトバンク孫氏、2018年度3月期 決算説明会でモビリティ分野でも重要となるAI特化の「ビジョン・ファンド2」設立を表明
1兆個のARMチップがAIのためのビッグデータを収集へ
2019年5月9日 22:18
- 2019年5月9日 実施
ソフトバンクグループは5月9日、2018年度決算に関する説明会を開催した。登壇した同社 代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏は、2017年度比81%増の伸びを見せた同社の営業利益について、その大半を傘下の投資ファンドであるソフトバンク・ビジョン・ファンドが稼ぎ出したことを明かしたうえで、新たな「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」の設立を表明。投資事業への取り組みをさらに拡大させていく方針を示した。今後の投資先はAI(人工知能)に関係する企業に特化し、AIの基礎をなすビッグデータについては、2016年に買収したARMのチップがその収集源になると語った。
AIがあらゆる分野の産業を革新する
ソフトバンクグループの2018年度の売上高は9兆6022億円、営業利益は2兆3539億円、当期純利益は1兆4112億円で、3期連続の純利益1兆円超を達成した。2019年度も1兆円超をほぼ確実にしており、4期連続となる公算が高いとしている。
今回、営業利益は前年度比81%増となるが、その増加分のほとんどがソフトバンク・ビジョン・ファンドの伸びによるものだった。設立から約2年で投資先が82社となり、その中の多くの企業が順調に成長を続けたことが影響しているとみられ、孫氏はソフトバンク・ビジョン・ファンドがソフトバンクの「成長エンジンになっている」と胸を張った。
82社に含まれるのは買収済みのARMのほか、ライドシェアのDiDi、Uber、中古車ディーラーのGuaziなど、モビリティ関連の企業も少なくない。これらの企業が属する分野を含め、あらゆる産業を近年進化の著しいAIが革新していくと見ており、同氏は今後の投資先をAIに関連する企業に特化すると宣言。「それぞれの分野、それぞれの国々でNo.1の会社」に投資していく方針だという。
AIが産業をどう革新していくのか。例として同氏はライドシェアを挙げる。AIの最もポイントとなるのは“推論”であるとし、この推論は「需要予測」や「供給の最適化」に用いられる。たとえばAIが天候や曜日などさまざまな要素を考慮して、都市における15分先のタクシー需要を予測してヒートマップ化。さらにAIがその需要に応じた適切な車両配置や動的な価格設定(ダイナミックプライシング)を行なうことで、企業とユーザーの利益を最大化できるようになる。
AIがこうした適切な判断をするには、判断の元となる“知識”、すなわちビッグデータが不可欠だ。同氏は、2019年から日本でもサービスが開始する次世代通信規格の5GやIoTデバイスを用いて「さまざまなデータを吸い上げる」ことを考えており、その役割を担うのがARMチップになるという。「今後10年間くらいで地球上に1兆個のARMチップをばらまく」と述べ、世界中のあらゆるデータを“推論”に役立てる計画を披露した。
AI特化による投資を積極的に進めていくため、投資・運用資金額が10兆円規模とされているソフトバンク・ビジョン・ファンドに続き、新たに「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」を展開していくことも明らかにした。出資者や運用規模、設立時期など詳細は明かされなかったが、運用規模は現在のソフトバンク・ビジョン・ファンドと同程度、ファンド2開始までに投資の空白期間は作らないようにするとしている。