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広画角遠方表示を実現する「ARヘッドアップディスプレイ」を紹介する日本精機ブース

2024年5月22日~24日 開催

入場無料(事前登録制)

日本精機ブースに用意された「ARヘッドアップディスプレイ」。通路側に向けた展示なのでいろいろ写り込んでいるが、ウミガメが写っているのがARヘッドアップディスプレイの表示

 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」が5月22日、神奈川県のパシフィコ横浜・展示ホールで開幕した。会期は5月24日まで。入場に際して公式サイト、及び会場での登録が必要だが入場は無料。

 日本精機ではHUD(ヘッドアップディスプレイ)の開発に力を入れていて、ブースでも開発中のHUD展示にスペースを割いていた。

 日本精機のHUDにはコア部品として「凹面鏡」というものがあるが、同社はこうした超精密金型加工、成形、超精密部品加工を自社で行なうことで、理想とする凹面鏡を製造することを目指している。

HUDのコア部品となる凹面鏡も日本精機内で製造している
グループ会社として迎えた共栄エンジニアリングの製品群。共栄エンジニアリングの技術を取り込むことで超精密・微細加工が必要となる光学部品などのビジネスを加速していく
共栄エンジニアリングではターボチャージャーの部品を作ることもでき、インペラ翼部に微細リブレット加工が施してあるが、これをすると空気抵抗が減ってコンプレッサーの仕事量を増やすことができるなどの効果があるそうだ

 ブースには開発中の技術を使ったHUDのデモ機があり、見え方を体験させてもらうことができたのでその印象をお伝えしよう。

 HUDという技術は以前からあったが、今回は未来の技術として展示していたのが「ARヘッドアップディスプレイ」というもので、ポイントは広画角遠方のAR表示をTFT画像生成ユニットと独自の光学設計になっている凹面鏡を用いているところ。これらの技術により、キレイで歪みのない表示を可能としている。また、像が見える位置を遠くに置くこともできるようになった。

ヘッドアップディスプレイの解説ボード

 ちなみにHUDユニットは液晶パネルに表示した像をミラーに反射させて虚像としてフロントウインドウに映すものだが、クルマの運手中は前方を見る視点を遠くに置くものなので、そうした視点の置き方ではフロントウインドウに情報を映しても、走行時の前方視点との視点の切り替えが必要になる。そのため目の前にある情報であっても意外と見にくかったりする。

 それにたいして日本精機がOEMとして収めてきた純正HUDでは情報が見えるビューポイントをドライバー位置から2~3m離れたところにあるように見せる技術を使っているので、走行しながらでも表示が見やすい。

こちらはすでに市販車に使われているHUD。歩いている人の背中辺りに表示が写っている。十分見やすいがARヘッドアップディスプレイの表示と比べると視点の切り替えは必要

 しかし、厳密に言えば視点の切り替えは必要。そこでARヘッドアップディスプレイでは像を10m先にある見え方へと変更したという。

 この2つを見比べてみたところ、やはりARヘッドアップディスプレイのほうは、遠くを見たままの視点で表示が見られるので、目の使い方に余計な負荷がかからない印象だった。

ARヘッドアップディスプレイについて

 日本精機はメーターの製造を得意としている。そして前出のHUDと同じくきれいで見やすい表示品質を持っているのだが、メーターとはエンジンなどの状態を示す正確な数値を設計者の意図したとおりに表示するものなので、数値を図るためのセンサーはとても重要なパーツ。日本精機ではセンサーも自社で設計製造していて、ブースではセンサーの展示も行なっている。

センサー無線化ユニットの解説ボード。センサーと表示機を無線でつなぐことで取り付けの自由度が向上する。また、多種のメーターを付けていく際のネットワーク構築がしやすいと言うメリットもある。これは日本精機のアフターパーツ部署であるDefiの技術
カーボンニュートラル燃料に対応したレベルセンサー。現在主流になっている摺動抵抗式センサーは、バイオ燃料で使用すると機能不良が起こることもあるため非接触式のセンサーを開発していて、現物を展示していたが撮影禁止だった
こちらも原物の撮影は禁止。EVモーター用ローター位置センサー

 メーターケースに使う樹脂は、照明の反射に有利な白色のリサイクル素材だが、近年需要が増えていて入手コストも上がっている。そこで代替え品として研究が進んでいるのがカーボンニュートラルコンセプトメーター。

 これはリサイクル素材にお米の一種などの二酸化炭素を吸収して育ったものを混ぜて使うことで、カーボンニュートラルを達成しようというもの。ただ、現状はこうして作った樹脂素材は色が付いてしまうので実用化にはいたっていないとのこと。でも、こうした取り組みがあること自体、興味深いというか、自動車製造業界全体が本気でカーボンニュートラルに取り組んでいることが分かる。

いちばん上が現在使用しているメーターケース。メーターは照明を使うのでケースはその反射に適した白色が基本。その下がバイオマス素材を使った試作品。若干色が付いている。もちろん塗装すればいいのだが、そうなるとコストが掛かるので素材で白色であることが重要という
車載パーツに使うリサイクル素材は要件が厳しいのでそもそも入手は容易でない。それに加えて世界中で取り合いが起きているそうだ。そこで研究が進んでいるのが代替品。バイオマス素材を使用することでカーボンニュートラル化も目指している
利便性を考慮したオートバイ用スマホ利用型メーターの展示。スマホの表示をメーター本体のディスプレイにミラーリングさせる。インドネシアなどアセアン地域向けの技術で、Bluetoothなど無線ではなくて有線でつなぐ方が好まれるという
メーター部にスマホをドッキングさせるタイプ
縦置きもある
ダッシュボードなど、これまでメーター表示がなかった部分に情報を表示させる技術。表面のシボはプリントで再現しているので内装との違和感が少ない。助手席用のエンタメとしてすぐにでも実用化されそうだ

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