ニュース

耐久性8時間を24時間以上へ、液体水素カローラ搭載ポンプにデュアルドライブを採用し計画停止を廃止

液体水素カローラの水素燃料ポンプに採用されたデュアルドライブ。右の青いギヤから入ったトルクが、赤いギヤを経由して奥の青いギヤに伝達される

液体水素ポンプの耐久性が8時間から24時間以上へ

 スーパー耐久富士24時間レースが5月24日~26日の3日間にわたって富士スピードウェイで開催されている。トヨタ自動車は液体水素を燃料として搭載し、水素を燃焼させて走る液体水素カローラで参戦しているが、長時間の耐久レースを走行する中でネックとなっていたのが液体水素をエンジン側に送り込むポンプの耐久性になる。

 この液体水素ポンプは、ピストンタイプのポンプとなっており、-253℃の液体水素を燃料タンクから取り出し、熱交換で気体となった水素を10MPa以上に圧縮していく。

デュアルドライブポンプの構成図

 水素を燃焼させて走るカローラは直噴エンジンを採用しており、直噴エンジン用の燃料噴射圧が必要になる。70MPaの高圧水素タンクを用いていた以前の水素カローラであれば、その高い圧力を利用すればよかったが、常圧の液体水素を用いる液体水素カローラは、どこかの段階で圧縮行程が必要になるわけだ。

 そのためにトヨタ内製のポンプを装備していたわけだが、問題はこのポンプの耐久性が8時間となっていたことだ。-253℃という過酷な環境で動作するほか、コンパクトなクルマのボディ内に納めるため大きな機構を組み込むことが難しかった。

2023年シーズンのポンプ。一体型かつ超コンパクトに仕上がっている

 そのため上部に付けたモーターを遊星歯車で減速して大トルクを生成、その大トルクでピストンを動作させ圧縮行程を実現していた。ただ、先ほど書いたようにコンパクトなスペースのため、トルクはピストンの片側から供給、大トルク、周辺が-253℃などといった環境から、耐久性が8時間となっていた。

 2024年の液体水素カローラは、このピストンを動作させるクランク機構を両側から支えることで、ポンプの耐久性を伸ばした。トヨタ 水素エンジンプロジェクト統括 主査 伊東直昭氏によると、この新しい機構であるデュアルドライブを採用したポンプであれば耐久性は24時間以上。つまり、24時間レースを走りきるだけの耐久性を計算上は持っていることになる。

 高い耐久性を手に入れたことで、富士24時間レースでは前回行なった計画停止を行なわず、ポンプ無交換で走りきる予定とのこと。前回は2回行なった計画停止で4時間(1回目)と3時間(2回目)、計7時間停止しており完走のための障害となっていた。

 今回はポンプが無交換となったことで計画停止は行なわない予定のため、24時間の周回数も大幅に向上すると思われる。また、1スティント当たりの周回数も新型タンクにより20周から30周に向上しており、その点の好影響も予想される。

 決勝レースで液体水素カローラがどれだけの周回数を刻めるのか。富士24時間レースの結果に注目が集まる。