ニュース

富士24時間、カーボンニュートラルに挑むトヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スバルが共挑5社会見

スーパー耐久で共挑をかかげる、トヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スバルの参戦車両

 5月25日、スーパー耐久第2戦富士24時間レースの行なわれている富士スピードウェイにおいて、ST-Qクラスに参戦するトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバルが共同で会見を行なった。

 登壇したのは、TOYOTA GAZOO Racingカンパニー プレジデント 高橋智也氏、日産モータースポーツ&カスタマイズ 常務執行役員 石川裕造氏、ホンダ・レーシング 四輪レース部 レース運営室 室長 桒田哲宏氏、マツダ Executive Fellow MAZDA SPRIT RACING代表 レーシングドライバー 前田育男氏、スバル 専務執行役員 CTO 藤貫哲朗氏。この5社はそれぞれの形でスーパー耐久の開発車クラスであるST-Qクラスに参戦しているが、その目的はカーボンニュートラル社会に向けた技術開発・人材育成にある。シリーズの中でトピックとなる富士24時間において、改めてその意義を伝えようというものだった。

共挑5社記者会見

トヨタ

 トヨタは液体水素カローラをはじめ、ST-Qクラスにおいてカーボンニュートラル燃料のGR86など、このクラスができるきっかけになった会社。そのトヨタでは、GR86の公開開発に代表される商品開発、技術開発、人材育成を主眼に取り組んでいるという。

 そうしたことをスーパー耐久の場で行なっていくことで、「世の中のクルマ好きを笑顔にしたい」とし、5社共挑という取り組みは、マツダの前田さんによる「ともに挑む」という話がきっかけだと紹介した。

ホンダ

 ST-Qクラスにカーボンニュートラル燃料を使用するシビック タイプRで参戦しているホンダの桒田氏は、この2024年という年はホンダがF1に参戦した1964年から数えて60周年になるアニバーサリーイヤーであるという。トップドライバーが走る場としてはF1やインディなどに参戦(この週末は世界三大レースの2つ、F1モナコGPとインディ500が開催され、ホンダはいずれにも参戦)しているが、このスーパー耐久ではST-Qクラスを走る実験室と捉え、開発しつつ情報発信の場とするため、ジャーナリストをドライバーとして起用している。

 参戦ドライバーは、ジャーナリストドライバー3名のほか、女性ドライバーを起用。過酷な24時間レースの中で、「安全安全で安心しで、かつ楽しんで乗れるのかみたいなことをしっかり検証」と語り、その検証をホンダの今後の開発に活かしていくいう。

日産

 日産は電気自動車のレースであるフォーミュラEに取り組んでいることを最初に挙げる。電気自動車の世界的なレースに取り組んでいる上で、プロドライバーが戦う、SUPER GT 500クラスにも参戦。観客にモータースポーツを見てもらう取り組みをいろいろな形で行なっている。

 スーパー耐久への参戦はST-QクラスとフェアレディZの発売がきっかであるという。フェアレディZのレーシング車両開発という目的があり、モータースポーツであればアジャイル開発に挑戦でき、カーボンニュートラル燃料によるパワートレーンの開発もできる。そこから得られたデータをもとに、カーボンニュートラル燃料開発へのフィードバックにも取り組んでいる。

スバル

 スバルは、かつての市販車開発戦争が背景にあるという。スバル インプレッサと三菱 ランサーエボリューションの市場競争が激しいときに、通常ではあり得ない間隔で市販車をアップデート開発。そうした時代から見たら、現在は自分たちの性能目標を定めて、それを達成できればいいとなっているとする。もちろん性能を達成することは大切なのだが、何か起爆剤がほしいと思っていた部分があり、ST-Qクラスの開発車競争をよいと感じたとのことだ。

 ST-Qクラスの開発では、クルマも鍛えられる上、社内にいる異才を持った人物を発掘できるという。実際、人材発掘育成という意味で効果はあったとのことを紹介した。

 スバルは次戦オートポリスからWRXをベースとした4WD+水平対向ターボ車両を投入する。4WD+水平対向ターボというパッケージをカーボンニュートラルという将来にどうつなげていくかという視点で開発を行なっていく。

マツダ

 マツダは富士24時間レースに2台の開発車両を投入している。バイオ燃料を使用するマツダ3と、カーボンニュートラル燃料を使用するロードスターで、ST-Qクラスにおいて量産技術の開発ではできないスキームで開発を行なっていく。

 今回、ロードスターに搭載するカーボンネガティブ技術、CO2回収装置の発表を行なったが、技術開発に加えマツダにおいても人材開発を重視しているという。マツダは20~30名のピンのエンジニアを投入しているが、瞬間的にいろいろなことを判断するためにはいろいろな引き出しを持っていないと対処できない。緊張感の中で何日も過ごす必要があり、量産開発と違う経験ができるとのこと。

 人を育てるという視点では、マツダはドライバーの育成にも取り組んでいる。かつてのドライバーはカートやほかのモータースポーツから入ってきたが、現在の若手はeスポーツなどバーチャルの世界から入ってくる。それらの若手にリアルなクルマに乗ってもらう機会を日本全国に用意し、そこを勝ち抜いたらスーパー耐久に乗ってもらう機会を用意するなど、今の時代に対応したレース参戦を用意している。

 各社取り組み方はそれぞれ異なるものの、たとえばトヨタ、スバル、マツダでは同じカーボンニュートラル燃料を使用している。同じカーボンニュートラル燃料を異なるエンジンで使用することで、同時にさまざまな条件下でのテストを実施。得られたデータを燃料メーカーにフィードバックして、2023年のSUGOからは改善されたカーボンニュートラル燃料で戦っている。

 会社同士で取り組んでいる事柄は異なるものの、進むべき未来はカーボンニュートラル。そのため、組めるところでは組み、戦うところでは戦う。それが5社のかかげる「共挑」という取り組みになる。

会見後の一コマ。こちらのほうが共挑っぽい?