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日産、2024年度第1四半期決算 売上高3%増の2兆9984億円の一方、営業利益99%減の10億円、当期純利益73%減の286億円で増収減益

2024年7月25日 開催

2024年度第1四半期の決算内容を説明する日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏

 日産自動車は7月25日、2024年度第1四半期(2024年4月1日~6月30日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2024年度第1四半期の売上高は前年同期(2兆9176億6000万円)から2.8%増となる2兆9983億9500万円、営業利益は前年同期(1285億9500万円)から99.2%減の9億9500万円、営業利益率は0.0%、当期純利益は前年同期(1054億7500万円)から72.9%減の285億6200万円。また、グローバル販売台数は前年同期(78万9000台)から2000台減の78万7000台となった。

2024年度1四半期の日産自動車財務実績
販売台数、生産台数の実績

自動車事業の営業利益は-740億円、フリーキャッシュフローは-3028億円の赤字

日産自動車株式会社 CFO スティーブン・マー氏

 決算内容の詳細は、日産自動車 CFO スティーブン・マー氏が解説。最初に「2024年度1四半期は厳しい市況のなか、業績も厳しい結果となりました。この結果は想定の範囲内ではありますが、私たちはこの状況に対処するため、早急に行動を起こしております」とコメントした。

 財務実績では売上高以外が対前年比で減少となる厳しい結果となり、とくに自動車事業における営業利益は344億円から-740億円の赤字となり、フリーキャッシュフローも1095億円から-3028億円の赤字となっている。

2024年度1四半期決算のハイライト
自動車事業の営業利益は-740億円、フリーキャッシュフローは-3028億円の赤字となった
2024年度1四半期決算の営業利益増減分析

 グローバル販売台数はほぼ前年並みで、中国、欧州で増加している一方、日本、北米で販売減となり、販売台数に応じた調整によって生産台数は前年の84万8000台から78万4000台と7.5%減となっている。

 市場別の販売状況では、日本市場は対前年比で8.0%減の9万800台。「デイズ」「ルークス」をマイナーチェンジして販売は好調となり、この第1四半期で車両生産体制も回復して受注を増やすことができている。デイズのほか「セレナ e-POWER」「ノート オーラ」などが好調に販売が推移して、第2四半期以降は新型車の投入、マーケティングの実施などによって販売を着実に伸ばしていく計画となっている。

日本市場の販売状況

 北米市場では対前年比で1.7%減の32万3000台を販売し、当初計画ほどの成長を実現できない結果となった。この主な理由としては、「ローグ」「セントラ」といった主要モデルのモデルイヤー切り替えが遅れたこと、さらに一部高収益セグメントのモデルで車齢が古くなっていること、HEV(ハイブリッドカー)市場の拡大の影響などをマーCFOは挙げている。

 ローグの2024年モデル切り替えが2023年度第4四半期に遅れたことが影響して、第1四半期のスタート時に在庫車両が高いレベルとなったことで、競合他社が販売する2024年モデルとの競争においてローグの2023年モデルを売り切るため、販売費用が増加したことが大きく影響。全体需要が予想以上に低調で業界全体の在庫状況とインセンティブ増加したことも痛手となり、競争力の維持と在庫調整の費用が増加する結果となった。

 この状況は第2四半期も続いており、在庫水準の改善と下半期のモデル刷新に向けた移行に注力しているところで、今後の数カ月で在庫水準は20%正常化され、より高率に販売費用を使えるようになっていく見込みとしている。

北米市場の販売状況

 販売台数が7.6%増の7万9000台となった欧州市場では、「キャシュカイ」「ジューク」が好評で販売の勢いを維持している。キャシュカイのe-POWER車は好調で、日産の販売における電動化比率は49%となっている。

 現地メーカーとの競争が激しさを増している中国市場では、全体需要が伸長する一方で外資系乗用車ブランドは販売比率が対前年比で15.0%減少。この状況で日産は販売低下を5.4%減で持ちこたえている。「シルフィ」は2024年上期のICE(内燃機関)乗用車セグメントで首位をキープ。新型「パスファインダー」も好調な販売滑り出しを見せているという。

欧州市場の販売状況
中国市場の販売状況

 このように第1四半期は厳しい結果となったが、第2四半期以降の巻き返しに向け、日産では各市場でモデルラインアップの刷新を実施。「アリア ニスモ」「キックス」「キャシュカイ」「QX80」といった新型車を発表し、ノート オーラ、ジューク、パスファインダーといった主力モデルによって攻勢を強めているとマーCFOはアピールして解説を終えた。

モデルラインアップの刷新で販売に勢いを与えていく

2024年度通期見通しの営業利益と当期純利益を下方修正

2024年度通期見通しを売上高で1000億円上方修正し、営業利益を同1000億円減、当期純利益を800億円減に下方修正する

 続いて行なわれた通期見通しの説明では、日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏が2024年度通期見通しの修正を行なうと発表。

 5月に公表した通期見通しから、販売台数では中国におけるさらなる販売減速を想定して370万台から365万台に引き下げ、財務指標では第1四半期に実施した在庫適正化とモデルイヤー切り替えの影響を反映させ、売上高は前回見通しから4000億円増の14兆円に上方修正する一方、営業利益は同1000億円減の5000億円、当期純利益は同800億円減の3000億円に下方修正している。また、為替レートはドル/円を同145円から155円に、ユーロ/円を同157円から167円に修正する。

販売台数の通期見通しは5万台下方修正
通期見通しにおける営業利益の増減分析

 また、内田社長は第2四半期以降の活動について営業利益の増減分析を用いて解説。前出のマーCFOも語っているように第2四半期以降に向けて在庫車両の調整は適正に進んでおり、2023年度の第2四半期~第4四半期の9か月と比較して、営業利益は4400億円から4990億円に増加するとの見通しを披露。

 これからの9か月では在庫適正化で必要となる販売費用やインフレによるコスト増といった影響を受けつつ、優位に働く為替や新車効果などによって販売台数が20万台増えることが増益要因となり、通期での営業利益5000億円を達成していくとした。

販売台数20万台増で通期の営業利益5000億円を達成する計画

 最後に、第1四半期は厳しい結果となったものの、今後は課題に対して明確な対策を打ち出し、新型車の投入を推し進めることで業績を回復していくと内田社長は説明。米国でアルマーダ、ムラーノ、インフィニティ QX80、欧州でキャシュカイ、エクストレイル、ジューク e-POWER、中東で新型パトロールといったモデルの市場投入で販売に勢いを付け、日本ではノート、サクラ、セレナ、デイズといった好調なモデルの需要で販売を推進していく。

「私たちは経営計画『The Arc』の実行に全力を注いでおります。お客さまにワクワクしていただけるクルマをお届けし、市場投入するまでの期間を短縮することに注力して、生産のオペレーションもより効率的で機敏なものにしていきます。これらの取り組みを戦略的に実行することで、日産は再び勢いを取り戻すことができると確信しています」とコメントして締めくくった。

今後のモデルラインアップの拡大について

質疑応答

質疑応答で回答する内田社長

 質疑応答では、5月に政府が打ち出した「モビリティDX戦略」政策のなかで、SDV(ソフトウェア ディファインド ビークル)や関連ソフトなどを協調領域としていることに対する受け止めについて質問され、内田社長は「将来的にお客さまに対してさまざまなサービスを提供していく上で、協調できるような部分では業界としてある程度歩調を合わせていくということは、全体での最適化に向けて必要かと思います。これはかなり先の話になるかと思いますが、日産としても先日のジャパンモビリティショーでお示ししたようなクルマやサービスを実現していくために、これからソフトウェアの領域であったり、それを司る車内のさまざまなプラットフォームであったりを強化していく必要があると思っています」。

「合わせて、中国勢もこの部分にかなり力を入れていますし、ある種、この部分が今後、お客さまからわれわれが想定しているよりも早い時期に必要とされるようになると考えていますので、その点に対する備えを会社として進めていくという方向性を持っています」と回答した。

 また、これに合わせて本田技研工業との協業の進捗についても問われたが、これについてはしかるべきタイミングでしっかりと発表する機会を設けるため、この場では控えたいと話すに留まっている。

日産自動車 2024年度 第1四半期決算発表(34分41秒)