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日産、2023年度通期決算 営業利益50.8%増の5687億1800万円、純利益92.3%増の4266億4900万円で増収増益

2024年5月9日 開催

2023年度通期決算について説明する日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏

 日産自動車は5月9日、2023年度通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2023年度通期の売上高は前年同期(10兆5966億9500万円)から19.7%増となる12兆6857億1600万円、営業利益は前年同期(3771億900万円)から50.8%増の5687億1800万円、営業利益率は4.5%、当期純利益は前年同期(2219億円)から92.3%増の4266億4900万円。また、グローバル販売台数は前年同期(330万5000台)から4.1%増の344万2000台となった。

2023年度通期と同第4四半期の日産自動車財務実績
2023年度通期における販売台数、生産台数の実績
2023年度 第4四半期における販売台数、生産台数の実績

 決算内容の詳細は、日産自動車 CFO スティーブン・マー氏が解説。日産の2023年度グローバル販売台数は対前年度比4.1%増の344万2000台となり、中国を除く日本、北米、欧州などの市場では対前年度比で17.2%増加と好調な販売となったが、中国市場で販売減が影響を与えていると説明。

 日本市場では対前年度比6.5%増の48万4000台、北米市場では対前年度比23.3%増の126万2000台、欧州市場では対前年度比17.2%増の36万1000台、その他市場では対前年度比14.2%増の54万1000台を販売し、それぞれで増加という結果。一方で中国市場では対前年度比24.1%減の79万4000台にとどまっている。

 生産台数も販売台数同様の傾向で、全体では1.5%増の343万台となり、中国をのぞいた数字では14.1%増だが、販売台数に応じた調整を行なった影響により、中国での生産は26.3%減となっている。

 このほか販売1台あたりの売上高は、米国市場で販売の正常化が進んだことでインセンティブが上昇し、対前年度比8%減。中国市場でも市場動向を反映して9%悪化している。

日産自動車株式会社 CFO スティーブン・マー氏
日本市場における2023年度実績
北米市場における2023年度実績
欧州市場における2023年度実績
中国市場における2023年度実績

 財務実績の解説では、日産に有利な結果が出た訴訟による訴訟費用の引当金として、営業利益に388億円、当期純利益に545億円がそれぞれ増益要因として同第4四半期分に計上されている。また、3月27日に発表した株式の買い戻しは、実際の取り引きを4月に入ってから行なったことにより、2024年度 第1四半期に計上する予定と説明された。

2023年度通期と同第4四半期の財務実績をグラフで示したデータ
2023年度通期における営業利益の増減分析
2023年度 第4四半期における営業利益の増減分析

2024年度は営業利益313億円増の6000億円、純利益466億円減の3800億円を計画

日産の2024年度通期見通し

 2024年度の通期見通しについては日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏が説明。グローバル販売台数はこれから市場投入していく新型車の販売けん引により、2023年度から7.5%増の370万台に設定している。

 地域別では、日本/アセアンでは「ノート」「サクラ」「セレナ」「デイズ」といったモデルを主軸として販売増を計画。BEV(バッテリ電気自動車)やe-POWER車を幅広くラインアップすることで車両の電動化におけるリーダーシップを強化していく。

 米国/アメリカズでは、アフォーダブルセグメントの「セントラ」「ヴァーサ」や新型「キックス」などのモデルで販売をけん引。さらに「アルマーダ」「ムラーノ」「インフィニディ QX80」といったコアモデルの刷新にも取り組むという。メキシコでは新型キックスとヴァーサによる販売拡大を見込んでいる。

 AMIEO(アフリカ、中東、インド、欧州、オセアニア)では、「アリア」「キャシュカイ」「エクストレイル e-POWER」「ジューク ハイブリッド」などの電動化モデルで欧州の販売を推進。中東では新型「パトロール」やインフィニディ QX80の市場投入を予定しており、インドでは「マグナイト」を刷新して輸出地域の拡大を実施していく。

 販売で苦戦している中国では、中国向けの新車開発を継続して行なうほか、新エネルギー車の生産も開始。新型パスファインダーの販売も拡大する予定としている。

 これらの販売戦略により、売上高を対前年度比で9143億円増の13兆6000億円増、営業利益を同313億円増の6000億円、当期純利益を同466億円減の3800億円になると見込んでいる。

2024年度の販売台数、生産台数見通し
地域別の事業戦略

新経営計画「The Arc」でさらなる成長を目指す

3月に発表した新経営計画「The Arc」について

 2024年度通期見通しに続き、内田社長は3月に発表した新経営計画「The Arc」について説明を行なった。

 新経営計画のThe Arcは、2020年度~2023年度に実行してきた事業構造改革「Nissan NEXT」と長期ビジョンである「Nissan Ambition 2030」の架け橋となり、日産のさらなる成長の向けたロードマップとなる取り組み。強力な商品ラインアップを構築して販売を拡大しつつ、将来に向けて必要となる取り組みを推進。これと並行してBEVのコスト競争力を高め、生産とサプライチェーンの最適化して市場ごとの戦略を強化していく。さらにパートナーシップと技術の革新を通じ、革新的なモビリティソリューションを提供することを目指している。

 The Arcによって日産は革新を続け、新たな売り上げの機会を創出。長期的な成長を実現していき、株主還元策についても30%以上を維持して着実に配当を増やしていくとアピール。事業構造改革のNissan NEXTによって強固な基盤を築いており、2023年度も堅実な業績を達成。続く2024年度の目標達成、その先にある計画実現に向けても順調に進んでおり、日産では商品のライフサイクルを通じた革新、改善を重ねて継続的に商品ラインアップを強化して、細分化や厳しさを増していく市場環境においても成長を続け、収益性を維持していくと意気込みを語った。

The Arcで目指していくロードマップ

質疑応答

質疑応答で回答する内田社長

 発表会後半に行なわれた質疑応答では、3月に発表された本田技研工業との戦略的パートナーシップの現状について質問され、内田社長は「発表後、ただちに検討チームを立ち上げて、活発で深い論議を重ねているところです。進捗については両社の社長も入り、定期的なトップミーティングで確認をしているところです。詳細については申し上げることができませんが、検討についてはできるだけ早い時期にスピード感を持ってよい結論を導き出せるよう期待したいと思っております」。

「会見の時にも申し上げたように、近い将来にクルマが大きく変わっていき、競争が激化している現状で、われわれがきちっと成長していくことを踏まえると、いかにスケーラビリティであるか、われわれを含めていかに会社が大きく変わっていけるかという点で、危機感という言葉に語弊がなければいいですが、そんな感覚はおそらくホンダさんも持っていて、どうすれば一番いいのかという話を、オープンな論議としてできていると思います。その面で、両社にとって将来の成長につながることはオープンに話し合っていける環境ができていると、私も入って感じているというのが率直な感想です」と回答した。

 また、グローバルでBEVの販売が減速している現状をどのように分析しているかという質問については、内田社長が「電動化やBEVへのシフトは、大きな流れとしては変わらないと思っております。ただ、そこに移行するまでのペースは一定ではないのだろうと考えており、実際に市場でも移行スピードが若干変わってきていることはわれわれも理解しています。異なる市場で電動化、BEV化が進んでいくことについて、正直なところ、予想していくことは難しいことだと思います」。

「ただ、一方でわれわれが掲げているThe Arcの戦略を変えていくかということであれば、これは変えません。市場の動向やお客さまの受け入れといったものをよく注視しながら進めていくことが重要だと思っています。合わせて電動化、BEV化という話だけでなく、今後お客さまのニーズがさらに変わっていく、長期的にですね。例えば2028年以降として考えると、クルマに対するお客様のニーズはさらに変わってくると思いますので、そういったものを見据えながら、今どのような準備ができるかといったところが重要になってくる」。

「昨今の北京モーターショーでも、さらに新しいクルマの価値というものを再認識する場にもなっていたと個人的に思っていますし、現時点でどのように備えていけるか、事業として、日産の企業価値としてどのように出していけるのかが一番の課題になるかと思っています。3年後、5年後をきれいに読み通すことは難しいなと思っていますが、そこに向かうべき方向についてはThe Arcで出していて、状況を注視して今後の動向を見ながら、それに対してわれわれが進化できるようなことを並行して進めていくことが重要だと思っております」と語っている。

日産自動車 2023年度 決算発表(48分57秒)