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日産、2023年度 上期決算は営業利益115.0%増の3367億円、当期純利益359.4%増の2962億円 日産初のプラグインハイブリッドを中国市場に投入

2023年11月9日 開催

オンライン説明会に参加した日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏

 日産自動車は11月9日、2023年度 上期(2023年4月1日~9月30日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2023年度 上期の売上高は前年同期(4兆6622億5000万円)から30.1%増となる6兆633億4600万円、営業利益は前年同期(1566億800万円)から115.0%増の3367億4300万円、営業利益率は5.6%、当期純利益は前年同期(644億7500万円)から359.4%増の2962億1000万円。また、グローバル販売台数は前年同期(156万9000台)から5万3000台増の162万2000台となった。

日産自動車の2023年度 上期財務実績
日産自動車の2023年度 上期ハイライト

 説明会では2023年度 上期の決算内容に先立ち、日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏が登壇。

 内田氏は売上高30%増、営業利益115%増、当期純利益359%増と、2023年度 上期の財務実績が前年同期比で大きく改善したことを紹介。2020年度から取り組んでいる事業構造改革「Nissan NEXT」の着実な成果が改革の最終年度となる今年度の業績に反映されているとアピールした。

日産自動車株式会社 CFO スティーブン・マー氏

 決算内容の詳細は、日産自動車 CFO スティーブン・マー氏が解説。マー氏はグローバル販売台数が前年同期の156万9000台から3.3%増となる162万2000台となり、中国市場を除くと同23.4%増になると説明。中国以外の市場で販売を大きく伸ばし、日本、北米、欧州といった市場では2桁の販売増になっていると述べた。一方で急速に変化が起きている中国市場では厳しい状況が続き、販売台数が3.43%減になっていることを明かした。この傾向は2023年度 第2四半期の3か月における販売でも同様となっている。

2023年度 上期のグローバル販売台数
2023年度 第2四半期3か月のグローバル販売台数

 市場別の販売台数では、日本では4月に発売した新型「セレナ e-POWER」、BEV(バッテリ電気自動車)「サクラ」が販売を牽引して前年同期比10.7%増の22万8000台に伸長。電動車の販売比率は6%増加の54%になっており、13年連続でBEVの販売ナンバーワンの地位を維持していることも強調。車両1台あたりの売上高も前年同期比で14%増加しているという。

 北米では販売台数が39.2%増加。北米市場でベストセラーモデルとなっている「ローグ」「セントラ」が台数増を牽引しており、「インフィニティ」のモデルも50%以上の帯を示して販売増に寄与。また、メキシコでの生産台数は前年から60%以上増え、北米での車両1台あたりの売上高は3%改善されている。

日本市場での販売台数とキーモデル
北米市場での販売台数とキーモデル

 欧州では販売台数が19.3%増加し、車両1台あたりの売上高は19%改善されている。「アリア」「ジューク ハイブリッド」「エクストレイル e-POWER」「キャシュカイ e-POWER」といったモデルがそれぞれ好評を得て、電動化比率は前年度の25%増の37%に達しており、BEV「リーフ」は英国で2023年の「Best Car for City Driver」を受賞している。

 中国では引き続き厳しい市況の影響を大きく受け、販売台数は24.4%減少。商品における積極的な相対的競争力強化を図っており、「シルフィ」は引き続きガソリンエンジン車のトップセラーの地位を維持している。中国では主に2つの課題に直面しており、業界全体の実売価格が加速度的に下落傾向となっているほか、直近の3か月だけでも70近いの新型車が登場。日産ではこの期間に4車種の新型車を発売しており、市場全体での圧倒的な新型車投入を受けて当初は販売台数の伸び悩みが見られたが、現在はユーザーからの注目が再び集まるようになっているとした。

欧州市場での販売台数とキーモデル
中国市場での販売台数とキーモデル
2023年度 上期の持分法適用ベースと中国合弁会社比例連結ベースの財務実績
2023年度 上期における営業利益の増減分析

2023年度 通期見通しを上方修正

2023年度 通期見通し

 続いて内田氏が2023年度の通期見通しについて説明。グローバル販売台数は前回発表の370万台から変更なく維持。一方で上期の好調を受け、売上高を4000億円増の13兆円、営業利益を700億円増の6200億円、当期純利益を500億円増の3900億円にそれぞれ上方修正。「2023年度 上期はしっかりした収益を確保しました。当社は引き続き、事業構造改革であるNissan NEXTの完遂を目指し、今後も継続的な業績改善と持続可能な成長に向けて取り組んでまいります」と総括した。

販売台数の見通しは変更なし
中間配当として5円/株を支払うことを決定

日産初のプラグインハイブリッドモデルを中国市場に投入

中国における事業戦略

 決算の説明に続き、内田氏は喫緊の課題となっている中国市場での事業戦略について説明。日産は20年以上に渡る中国市場での活動を通じて1500万台以上のクルマを販売し、多くのユーザーに愛用されていると語り、そうした顧客に対して引き続き一定の需要を見込めるガソリンエンジン車に加え、高付加価値な新エネルギー車を魅力的な価格で、よりスピーディに提供することが戦略上で非常に重要だと述べた。

 また、日産では現状打破に向けて重要な3つの計画を立てており、1つめの「新エネルギー車のラインアップ強化」では、成長を続ける同セグメントへの対応策として、2026年までに4車種の新エネルギー車を日産ブランドから市場投入。この4車種についてはすべて中国にある日産の開発センターで開発を行なう予定であることも合わせて紹介。最初のモデルとなるのはDセグメントのBEVで2024年下期に登場し、さらにこの4車種には日産初のプラグインハイブリッドモデルも含まれることも明らかにした。

 2つめは「開発領域におけるローカルアセットのさらなる活用」で、中国市場向けの専用車として中国ローカルブランド「ヴェヌーシア」から新エネルギー車を2026年までに6モデル市場投入。今上期に第1弾モデルとして発売したヴェヌーシアのPHEVモデルに続き、11月3日にBEVを発表。中国合弁会社の事業として新エネルギー車市場でさまざまなユーザーニーズに対応して販売台数増につなげていくという。

 3つめとなるのは「中国から海外への輸出」で、2025年から輸出を始め、最初のステップとして10万台レベルの輸出を目指していく。この輸出モデルには4つの新エネルギー車も含まれ、仕向地などの詳細は適切なタイミングで発表する。日産ではこれらの計画を迅速に、確実に実行することで厳しい環境が続く中国事業を再び成長軌道に乗せていきたいとの意気込みを述べた。

中国以外の市場でもさまざまな取り組みを進めている

 また、日産では今後もカーボンニュートラルの実現、将来の移動と社会の可能性を広げるため、電動化や知能化といった自分たちの強みを活かしていくと内田氏は語り、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の実現に向けて世界中でさまざまな取り組みを進めていると説明。欧州では9月に実施した日産デザインヨーロッパ(NDE)のデザインセンター設立20周年記念イベントで「2030年までに欧州に投入する新型車をすべてEVにする」という計画を公表。さらに英国では最新の自動運転研究プロジェクト「evolvAD」にも参加して技術を磨いていると紹介した。

 10月から11月にかけて東京で開催された「ジャパンモビリティショー2023」では5台のコンセプトカーを出展。日産が描く将来のモビリティの方向性を示したほか、前日の11月8日にはラテンアメリカ地域における将来の成長に向け、ブラジルに最大20億レアルまで投資。新型「キックス」など2台の新型車SUVを生産すると発表しているなど、世界各地で着実に活動を進めていると述べた。

 さらに日産の強みとしているアライアンスについても次のステップに向かう新たな基盤となる契約を発行。新しい時代に向けた競合体制に進化することになり、日産の経営に機敏性をもたらし、Nissan Ambition 2030の実現に向けた取り組み、電動化戦略における新たな価値創出、事業の効率化などに貢献していくだろうと説明。ルノーとは各地におけるさまざまな活動を共同で進め、お互いの会社の成長につなげていくことが現在のビジネス環境では非常に重要だとの認識を語った。

 今秋に発表すると説明してきた次期中期経営計画については、長期ビジョンの実現につなげていく橋渡しの役目を持つものであり、この数か月でも市場はさらに目まぐるしい変化を見せていることから、より包括的で信頼性の高い内容としたうえで、適切なタイミングで説明する機会を設けたいとした。

質疑応答

記者からの質問に答える内田氏

 質疑応答では、好調な結果となった決算をけん引した米国市場での販売について、インフレなどの不安要素もあるなかでどのように見ているか、現在の勢いを継続していけるのかといった問いかけがあり、これに対して内田氏は「北米ではこれからも販売の質向上に向けてきちんとした考えを持って進めていきたいと思っています。ただ、北米市場での全体需要は伸びていくと考えていますが、一方で販売奨励金は上がってくるところもあります。これにはファイナンスを通じてとか、われわれのブランドとしての販売奨励金を持ちながらやるようなことで、日産ブランドの価値が高まるようなことをやっていきたいと思っています。安易にキャッシュでやるということよりは、きちんと日産の価値につながるような形で今後も北米でやっていきたいと思っています」。

「北米のお客さまも高いところと低いところで2分化しているので、アフォーダブルなクルマを含めて、生産体制まで含めて論議をしているところです。これらをきちんと供給していきながら全体としての台数を上げていける方向へ継続的に進めていきたいと考えています」と答えた。

 また、2025年からスタートさせる計画の中国からの車両輸出について、10万台規模の輸出を行なうことで他市場にある工場の生産に影響を与えないのかという質問に対しては「中国からの車両輸出では先ほども説明させていただいた4つの電動車両がポイントになっています。これがほかにある生産拠点に影響するかと言えば、そんなことはまったくありません。また、ほかの国でもお客さまにお待ちいただいている車種もあり、中国から出せるような車両もありますので、ここでは全体の最適性を見ながら、とくにほかの拠点での生産を落として中国から輸出するといった考えは持っていません」。

「ただ、それでわれわれが保有している今の生産キャパでいいのかという主旨のご質問であると思いますが、この点に関して、中国ではいろいろな課題があると思っています。さまざまな固定費の削減に対して、中国でのジョイントベンチャーなども含めた論議としてこれから示していきたいと考えています」と回答している。

日産自動車 2023年度 上期決算発表(45分37秒)