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日産、2022年度上半期決算は営業利益175億円増の1566億円ながら、ロシア市場撤退による損失241億円の影響で純利益1041億円減の645億円

2022年11月9日 開催

オンライン説明会に参加した日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏

 日産自動車は11月9日、2022年度上期(2022年4月1日~9月30日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2022年度上期の売上高は前年同期(3兆9470億円)から7153億円増となる4兆6623億円、営業利益は前年同期(1391億円)から175億円増となる1566億円、当期純利益は前年同期(1686億円)から1041億円減となる645億円。また、第2四半期累計3か月のグローバル販売台数は前年同期(95万4000台)から20万4000台減の75万台となった。

日産自動車の2022年度上期財務実績

 日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏のあいさつに続き、日産自動車社 COO アシュワニ・グプタ氏が決算内容の解説を実施。

 まずグプタ氏は、納車を心待ちにしているユーザーに対して謝罪し、日産は世界的な半導体供給不足、自動車産業におけるサプライヤー分断の問題解決に取り組み、グローバルで全社的に増車を進め、可能な限り早い納車に向けて活動を進めているとした。また、日々日産を支えている社員、サプライヤー、パートナー、販売会社のスタッフに感謝の言葉を述べ、極めて厳しい外部環境に置いても会社の舵取りを進めていけるのは、こうした人々の尽力のおかげだと語った。

 これに加え、最近発表した「アリア」「サクラ」「フェアレディZ」「キャシュカイ」「エクストレイル」といった新型車は大変好調といい、不安定な環境下でも日産は計画を継続し続け、ステークホルダーに価値をもたらすための取り組みを進めていると述べた。

日産自動車株式会社 COO アシュワニ・グプタ氏

 主な財務指標では、前年同期の3兆9470億円から7153億円増の4兆6623億円となった売上高は、販売台数は減少した半面、1台あたりの売上高が改善。為替が円安になったことも増収要因となった。前年同期の1686億円から1041億円減の645億円となった当期純利益は、第2四半期にロシア市場からの撤退に関わる一過性の損失として241億円を計上したことが影響していると説明。比較となる2021年度にはダイムラーの株式売却による一過性増益が計上されていることもあり、それぞれ一過性の要因を差し引くと、2022年度上期の当期純利益は前年並みの計算になるという。

 このほか、2022年度上期の自動車事業におけるフリーキャッシュフローは生産台数の減少による影響を受けてマイナス980億円だが、第2四半期だけで見るとプラス2066億円に大きく改善。下半期は引き続き改善していくとの分析を示した。グプタ氏は自動車事業の営業利益が3年ぶりに黒字化したことを第2四半期の注目点として挙げ、「当社コア事業の持続可能性を強化し続けることが今後の課題」と述べている。

第2四半期3か月の持分法適用ベースと中国合弁会社比例連結ベースの財務実績
2022年度上期の持分法適用ベースと中国合弁会社比例連結ベースの財務実績
2022年度上期における営業利益の増減分析

 第2四半期3か月の販売では、日産の生産台数は全般的に回復基調となっており、今後は販売台数も回復していくとの見通しを紹介。実際に中国を除いた場合では前年同期から13.6%増の56万3000台となっており、サプライチェーンの分断、新型コロナウイルスの感染拡大による影響に対応が進み、生産活動が正常化してきているという。一方、中国では半導体の供給不足と新型コロナウイルスに起因するロックダウンの影響により、厳しい生産状況が継続。前年同期から23.5%減の24万2000台となった。これらにより、全体では前年同期から0.8%減の80万6000台の生産という結果となっている。

 グローバル販売台数は前出のように前年同期から20万4000台減の75万台となっているが、この原因は主に在庫状況の差によるものだと解説。輸送中の車両、在庫の季節性も大きな要因で、生産が回復してきた9月後半に生産した車両は第3四半期以降の登録になり、ここには欧州市場向けのエクストレイル、米国市場向けのアリアなどが含まれる。

 市場別では中国市場での販売が最も大きく落ち込み、新型コロナウイルス、車両の供給不足が影響して30.2%減となっている。また、在庫ひっ迫により北米市場では25.4%減、欧州市場では20.9%減、その他市場では15.1%減とそれぞれ減少。一方、ホームマーケットである日本市場は販売が好調で、好評を得ている複数の新型車と増産効果によって9.8%増となった。

半導体を使い分ける「ダブルソーシング戦略」が功を奏して生産台数を回復できており、下期は増産できる予定
グプタ氏は事業の継続性、電動化のモメンタムなどについても解説した。

2022年度の通期見通しを上方修正

前回見通しから売上高を9000億円、営業利益を1100億円、当期純利益を50億円上方修正

 2022年度の通期見通しについては内田氏が説明。上期から半導体の供給不足が続き、中国でのロックダウンが大きく影響して、上期の生産、販売は想定を下まわる水準となった。サプライチェーンの混乱は回復しつつあり、下期のグローバル販売台数は上期と比較して35.8%増になると見込んでいるが、ペースとしては当初の想定よりもゆるやかになっていることから、グローバル販売台数の年間見通しについては当初の400万台から370万台に下方修正。

 販売台数について下方修正する一方、財務指標では売上高、営業利益、当期純利益の通期見通しをそれぞれ上方修正。前回見通しから売上高を9000億円増の10兆9000億円、営業利益を1100億円増の3600億円、当期純利益を50億円増の1550億円に上方修正している。

 この理由について内田氏は、円安による増益に加え、販売の質向上によるインセンティブの減少、価格改定といった施策によって車両1台あたりの売上高向上を織り込んでおり、こうした取り組みをによって販売台数の減少、原材料価格の上昇に伴うマイナスの影響を相殺していくと述べた。また、当期純利益は修正幅が少なくなっているが、これについてはロシア市場からの撤退で発生する約1000億円の特別損失を織り込んだものであり、前年度に発生したダイムラー株式売却といった一過性の影響をそれぞれ除いた場合、前年度から大きな増加になると説明している。

販売台数の年間見通しを400万台から370万台に下方修正
原材料費、物流費が大きな減益要因になるとの見通し

 また、説明の最後に内田氏はルノー、三菱自動車工業とのアライアンスについて紹介。日産ではアライアンスの強化と将来に向けて多岐にわたる議論を重ねており、この背景には自動車業界を取り巻く外部環境が大きな変化を続けていることに加え、企業として果たすべき役割や責任がますます大きくなっていることがあると説明する。

 オペレーションでは半導体の供給不足、原材料価格の高騰、32年ぶりという急激な円安、ウクライナ情勢などの地政学的リスクに起因した世界の分断化などに加え、ユーザーの意識変化にも対応していかなければならず、SDGsや防災の意識が高まり、所有からシェアへの移行、デジタル化の加速などが起きている。こうした変化に対応する自動運転技術、コネクテッド技術、EV化、バッテリ技術、ソフトウェアなどさまざまな面で技術が急速に高度化しており、優先順位を明確にしてアライアンスやパートナーシップを活用して、さまざまな課題に同時対応していく必要があるとした。

 アライアンスではこれまで長い時間をかけて実績と信頼関係を構築しており、これらを土台としてどのようなアライアンスの姿が各社により大きなベネフィットをもたらすことができるのかについて、オープンで建設的な議論を重ねていると説明。11月8日にルノーが開催した「キャピタル・マーケット・デイ」でEV新会社について発表しているが、これについて日産にどのようなメリットをもたらすのか、どのように参画するべきなのかの検討を現在進めており、この議論を踏まえて新会社に対する出資を検討していくという。

 日産にとって最も重要なことは、アライアンスを次のステージに進化させることで日産の競争力を高め、「Nissan Ambition 2030」の実現と将来にわたる成長を続けていくことだと内田氏は語り、議論の具体的な内容については結論が出次第しっかりと説明する場を設けていくとした。

「NISSAN NEXT」で市場投入した新型車はいずれも好評を得ている
電動化技術と知能化技術を柱とした「Nissan Ambition 2030」で“日産ならでは”の価値を提供していく
日産自動車 2022年度 上期決算発表記者会見(58分)