ニュース

日産、2021年度上半期決算は売上高3兆9470億円、営業利益1391億円 11月29日に新長期ビジョン発表と予告

2021年11月9日 開催

日産自動車株式会社 COO アシュワニ・グプタ氏(左)と日産自動車株式会社 CFO スティーブン・マー氏(右)

 日産自動車は11月9日、2021年度上期(2021年4月1日~9月30日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2021年度上期の売上高は前年同期(3兆927億円)から8543億円増となる3兆9470億円、営業利益は前年同期(-1588億円)から2979億円増の1391億円、当期純利益は前年同期(-3300億円)から4986億円増の1686億円。また、第3四半期累計3か月のグローバル販売台数は前年同期(105万6000台)から10万2000台減の95万4000台となった。

2021年度上期の日産自動車財務実績

 決算説明会では最初に、登壇した日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏から、新型コロナウイルスの感染拡大や半導体の供給不足などの理由から車両の生産が遅れ、購入者に迷惑を掛けていることが陳謝された。また、厳しい環境にもかかわらず、ユーザーのことを第一に考えてさまざまな課題に取り組んでいる世界中の従業員に対する感謝の言葉が述べられ、「こうした課題にしなやかに対応し、私たちはお客さまに高い価値をお届けすることに集中しています。そして事業構造改革『NISSAN NEXT』を推進し、現在の厳しい状況から、より強い会社となって脱却していくことができると考えております」と語られた。

決算説明会で解説を行なったグプタ氏

 日産のビジネスの概況としては、第2四半期の3か月になっても新型コロナウイルスの感染拡大や世界的な半導体不足によるサプライチェーンの不安定さは解消されておらず、グローバルの自動車需要は前年同期から12%低下。日産でも同様に販売台数が10%減少しているが、市場別に見ると、米国では全需の13%減に対して8%減、日本では全需の12%減に対して12%減、中国では全需の20%減に対して11%減に抑え、日産の重点市場では逆風の影響を最低限に抑制。しかし、新型コロナウイルスの影響が続いている欧州は半導体不足の影響も最も大きく出て、全需の19%減を上まわる31%減という結果になった。これについてグプタ氏は、「事業の継続性を維持するため、車種構成、市場のミックスを優先した結果」としている。

2021年度第2四半期におけるグローバルの自動車需要と日産の販売動向
日産の販売台数内訳。その他市場のみ販売増となっている

 この第2四半期では、日産は日本で「ノート オーラ」、欧州で「キャシュカイ」を新型車として発売。それぞれ好評となり、ノート オーラは累計で2万1000台、キャシュカイは5万8000台を受注している。また、米国では今夏に新型「パスファインダー」「フロンティア」を発売して、前年同期から大きく市場シェアを高めているとアピールした。

 2020年5月のNISSAN NEXT発表後に発売された新型車も販売が好調に推移しており、日本では「ノート」「キックス」、米国では「ローグ」「セントラ」、中国では「シルフィ」、インドでは「マグナイト」がそれぞれ市場シェアを拡大している。「こうした結果は、いかに私たちの商品が多くのお客さまからご好評をいただいているか、そして当社の企業活動に勢いがあるかを示しています。市場ごとにお客さまのニーズにきめ細かく対応した商品ラインアップがこの好調を支えているのです」とグプタ氏は解説した。

 また、商品、技術、生産設備に対して積極的に投資を行なっていることにも触れ、8月には新型「フェアレディZ」を発表。電動化では2022年度の初旬に新型軽BEV(電気自動車)を発売予定で、「日産は国内市場の4割を占める軽自動車市場に、最先端の運転支援技術『プロパイロット』などを搭載した電気自動車を投入する初めてのメーカーとなります」とした。中国でも合弁パートナーである東風汽車と協力して「e-POWER」の展開を加速させており、「シルフィ」を皮切りにe-POWER技術の適用を拡大させていく予定。

 生産現場のスマート化も推し進め、英国では「EV36Zero」の第1弾をすでに発表。10億ポンドの投資によって日産独自のBEV生産エコシステムを確立する。国内では栃木工場の生産ラインに「インテリジェント ファクトリー」を導入し、革新的な技術を使って新世代モデルを生産するスマートな工場になり、これらの取り組みによってカーボンニュートラルの実現を推進していく。

ニューモデルの躍進によって市場シェアを高めている
将来に向けた投資も積極的に推進

 グプタ氏は「上期の結果はこれまでに進めてきたお客さま価値の向上に向けた取り組みの結果であり、日産の商品に対するお客さまの評価が高まっていることを物語っています。また、電動化技術のe-POWERや『e-4ORCE』、運転支援技術のプロパイロットなどがお客さまの心に響いているということでもあります。こうした革新的技術は人々の生活を豊かにするために、お客さまを中心に考え抜かれています」と語り、こうした技術が第三者機関からも評価されていると強調した。

 4か年計画として進めているNISSAN NEXTでは「量より価値に集中する企業文化」への改革を行なっており、販売台数の追求ではなく、収益性を重視する取り組みは大きく前進。クルマ1台あたりの売上高は、グレードミックスと残存価値の改善、価格の徹底管理などによって前年同期から11%向上し、営業利益の損益分岐点となる販売台数も前年同期からさらに15%低減し、持続可能な成長に向けた商品、技術への投資を強化しているとした。

 2021年度上期の財務実績では、2979億円増の営業利益に対して純利益が4986億円増となっている点について、持分法適応会社の改善で発生した営業外利益と、第1四半期にダイムラーAGの株式を売却した売却益といった特別項目が寄与していると説明された。また、第2四半期の3か月で見た場合、販売台数は前出のように9.6%減となっているが、それ以外の項目はすべて増加という結果になった。

「上期の結果はこれまでに進めてきたお客さま価値の向上に向けた取り組みの結果」とグプタ氏
NISSAN NEXTで進めている「量より価値に集中する企業文化」への改革も進み、クルマ1台あたりの売上高は前年同期から11%向上
持分法適用ベースと中国合弁会社の比例連結ベースによる財務実績
営業利益の増減要因。主に「販売パフォーマンス」と「モノづくりの継続的な改善」が利益を押し上げている

 2021年度通期の業績見通しでは、上期の実績を踏まえて7月の第1四半期決算発表時に示した数値から修正。半導体を中心とした部品供給の問題は継続的にサプライチェーンに影響を与えるとの予想から、販売台数を前回予想から60万台減の380万台に引き下げ、これに呼応して売上高も同9500億円減の8兆8000億円に下方修正するが、継続的な販売パフォーマンスの強化によって増益になるとの試算で、営業利益、当期純利益をそれぞれ前回見通しから上方修正している。

 また、持分法適用ベースの営業利益率は2.0%、中国合弁会社の比例連結ベースでの営業利益率は2.8%になり、NISSAN NEXTで大きなマイルストーンとして位置付けている「比例連結ベースで営業利益率2.0%を達成する」という目標を上まわり、「2023年度末に営業利益率5.0%を達成する」という目標の実現に向けて順調に進んでいるとグプタ氏は語った。

 最後にグプタ氏は「NISSAN NEXTの下、当社は事業構造を改革してしっかりとした基盤を作ることに取り組んでいます。持続可能な成長を目指して事業の適正化を進め、コア市場とコア商品に集中して革新的な商品を継続的に投入しています。それと同時に財務規律を徹底して、量より価値を優先する意識改革を推進しています。7月にも申し上げているように、当社は慎重かつ前向きに事業運営を行ないながら、サプライチェーンの分断などの問題に積極的に対応して、強みである商品に集中して力を最大限に発揮しています」。

「今こそ“あるべき姿の実現”に向けて歩みを進めていく時であり、日産の長期ビジョンを11月29日に発表いたします。その場で当社の戦略と、NISSAN NEXT以降の重点活動について説明する予定です。日産は人々の生活を豊かにするためにイノベーションをドライブし続け、従業員、パートナー、社会と共にモビリティとその先を切り拓いてまいります。改革の次の段階に踏み出す当社の活動にご期待ください」とコメント。新たな長期ビジョンを11月29日に発表すると予告した。

2021年度通期の業績見通しを修正。販売台数は部品供給の問題から減少となるが、売上高、営業利益、当期純利益は上方修正した
2021年度通期見通しにおける営業見通しの増減分析。7月の前回発表から為替などで100億円、販売パフォーマンスの改善で200億円の増益になると試算

質疑応答

質疑応答でコメントするグプタ氏

 後半の質疑応答では、11月29日に発表されると明かされた長期ビジョンはNISSAN NEXTの先にあるもので、日産のあるべき姿や方向性を示すものであり、戦略的な重点活動や、カーボンニュートラルの実現に向けて行なっていく活動、2030年を目標とした電動化などについて発表するとグプタ氏が説明。

 通期見通しで引き下げた販売台数の詳細については、「生産については地域別で、卸売りと小売り台数に変更する方法が異なり、例えば米国ではどちらかと言えば在庫販売が中心で、一方日本では受注生産が主流です。大切なのはどんな度合いで影響が出るかで、(新たに通期見通しで出した)380万台の前提となっているのは、年度の当初は新型コロナウイルス以降はグローバルの全需として8600万台あたりを想定していました。今は半導体不足の影響による第3波の影響を受けており、グローバル全需で当初の見通しから12~13%減の7500~7600万台を見込んでいます。これと比較して、当社も13%減ということで、トレンドと符合します」。

「しかし、小売り台数の減少がそのまま売上高に影響することがないようにすることが重要で、売上高の見通しは9%程度にとどまっています。これに対しては、販売規律とコストの徹底で補います。このようなところを前提条件として立てています。今後は半導体の状況がもう少し明らかになってくれば、生産計画も国別にはっきりすることでしょう」と回答した。

 また、半導体不足による影響についてグプタ氏は時間を割いて説明。「今回の半導体不足について2つのカテゴリーに分けて考えたいと思います。1つは新型コロナウイルスによるロックダウンで生産ができなくなったこと、もう1つはキャパシティの制約です。半導体は自動車に限らず需要が大きく増えており、自動車で需要が増えた理由としては、新しい技術がどんどんクルマに搭載されていることです。規制に対応することに加え、お客さまのニーズが変わっているのです。コネクティビティやダイバーシティなど、お客さまの考え方が変わっていて、どちらのカテゴリーでもキャパシティの制約が生まれました。これは日本で起きた半導体工場の火災の影響であり、東南アジアで新型コロナウイルスのロックダウンが頻発しました。状況は改善されていますが完全には回復していません。そこでキャパの制約が次々と展開して、これからは自動車に関連するところ、関連しないところの両方で需要が急増するかもしれません。そこで、この問題は継続していくだろうとみています」。

「この対策として、われわれは予測することが重要です。誰も水晶玉など持っていませんが、いろいろなシミュレーションによってある程度は予測可能です。アライアンスではどうしてこうなったか、われわれがどのような状況に立っているかを分析して、どうなるかを予想してどのような備えが必要かを考えています。今までわれわれのサプライチェーンは自動車需要からの予測に依存していましたが、現在の問題は自動車だけではないところこから発生しており、今後は非自動車の部分をどのように織り込んでいくかが重要で、これをルノー・日産・三菱のアライアンスで進めています」。

「これまでのサプライチェーンでは、トレーサビリティやティア1、ティア2のコントロールを行なってきました。しかし、半導体では“ティアN”という部分に依存するサプライが多数存在しており、サプライチェーンの末端にどのように接続していくかが重要で、アライアンスの購買を広げて対応しています」。

「最後に、質問では危機と表現されましたが、これをわれわれのビジネスのやり方を変えていくチャンスと捉えるべきだと考えます。どうやってクルマを作るか、どうやってクルマを売るのかということです。これまでわれわれは、生産計画を3か月、6か月という単位で考えていました。しかし、今では週ごとに計画する必要があります。ジャスト・イン・タイムについてもやっています。これで何が変わったかと言えば、われわれの運用効率と生産効率が上がり、販売でも効率化が進んでいます。まとめとしては、この状況はこれからも続いていくと考えています。これに対して予測と準備を行ない、日々改善していくことが重要になると思います」と回答している。

 米国での販売の質向上に貢献しているインセンティブの抑制について「われわれは企業文化として『量から価値』にシフトしましたが、同時にインセンティブを目標から結果に変えました。現在のインセンティブは、価値を含めた商品力と販売の規律正しさ、販売の質の徹底管理、そして販売会社の参画意識と信頼関係の結果なのです。こうした要素によってインセンティブは抑制されています。これが適切な状況か否かですが、これは少し様子を見なければ分かりません。現在のインセンティブは需給バランスが取れていない市場状況に影響されており、当社のパフォーマンスの結果でもあります。今後は企業文化の改革として変化させたところを維持しつつ、米国では小まわりの効く形で状況の変化に対応していこうと思っています」と述べた。

 このほか、車両の電動化については11月29日に行なう長期ビジョンの発表で紹介するとしつつ「米国でBEVを拡充するにあたり、バッテリで協力する戦略的パートナーについても29日に説明する」と明かした。

2021年度上期決算発表記者会見(56分25秒)