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日産、2021年度決算は売上高8兆4246億円、営業利益2473億円、当期純利益2155億円で3年ぶりに黒字化を実現

2022年5月12日 開催

オンライン説明会に参加した日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏

 日産自動車は5月12日、2021年度通期(2021年4月1日~2022年3月31日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2021年度の売上高は前年同期(7兆8626億円)から5620億円増となる8兆4246億円、営業利益は前年同期(-1507億円)から3980億円増の2473億円、当期純利益は前年同期(-4487億円)から6642億円増の2155億円。また、グローバル販売台数は前年同期(405万2000台)から17万6000台減の387万6000台となった。

2021年度の日産自動車財務実績

 説明会では冒頭で日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏があいさつしたあと、日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏が2021年度通期の決算内容について説明を行なった。

日産自動車株式会社 COO アシュワニ・グプタ氏

 グプタ氏は、2021年度は日産自動車と自動車業界全体に強い逆風の影響が吹き付けたと説明。とくに第4四半期は原材料価格の高騰と長引く供給不足、新型コロナウイルスの感染拡大などによって状況の厳しさが増し、日産では事業構造改革を継続的に実行しているものの、変化し続ける市場の先行きは不透明感を増して未曾有の環境になっていると語った。

 グローバル販売台数は通期予想を2%上まわる結果となり、全体需要の1%減から見ると良好な結果ながら、厳しい市場環境の影響で対前年比では4%減となっている。また、販売を支えた重要な成功要因として、グプタ氏は販売におけるデジタル活用を挙げ、デジタルをきっかけとした販売は対前年比で6%増の18%に上昇しているとした。

 4か年計画として進めている「NISSAN NEXT」で進めている「台数重視から価値重視」への転換はコア市場での業績に表われており、商品力、ブランド力、販売力の向上に努めている米国市場では、ミッドサイズSUVやピックアップトラックのセグメントで日産車の比率が高まり、「ローグ」は7%、「フロンティア」は11%のシェアを獲得している。また、こうした主要モデルの貢献を受け、車両1台あたりの売上高も2019年からの3年で19%アップしているという。

 また、中国市場では「シルフィ」「アルティマ」といった車種が人気を集めて市場シェアを伸ばしたことに加え、コネクテッド技術の拡充、e-POWER適応車拡大を実施。これはクルマが持つ先進的なスマート技術、コネクテッド技術を中国市場の顧客が重視する傾向にあることを受けたものになっている。

日産の2021年度販売実績対前年比で4%減の387万6000台となった
米国市場、日本市場での取り組み
中国市場、欧州市場での取り組み

 NISSAN NEXTでは「コストの最適化」「コア市場とコアモデル、コア技術への集中」「将来に向けた投資」を掲げているが、「コストの最適化」はすでに完了して、生産能力の20%削減、商品ラインアップの15%削減、固定費の3500円以上削減を実現しているという。

 コアモデルではCセグメント、Dセグメントの商品強化を行ない、電動車両とスポーツカーを刷新。厳しい環境下においても18か月で12の新型車を計画どおり発表して、車両1台あたりの売上高は18%アップ。これは日産の新型車が持つ価値をユーザーが認めている証だとグプタ氏は評価した。

 また、2030年度までに23車種以上の新型電動車を投入する「Nissan Ambition 2030」の計画を受け、バッテリ開発にもさらに注力。コスト改善と性能向上を図るコバルトフリーのリチウムイオンバッテリーに加え、“ゲームチェンジャー”になると期待される全固体電池の開発に取り組んでいることなども解説した。

折り返し地点となった「NISSAN NEXT」の進捗状況
日産の2021年度財務実績
日産の2021年度における営業利益増減分析

2022年度は売上高10兆円を目指す

2022年度の日産自動車財務見通し

 グプタ氏の決算報告に続いて内田氏が2022年度の見通しを発表。売上高は1兆5754億円増の10兆円、営業利益は27億円増の2500億円、当期純利益は655億円減の1500億円。なお、売上高、営業利益ともに増えながら純利益が減益となるのは、2021年度の純利益にダイムラー株の売却益(760億円相当)との差によって発生するものになるという。また、グローバル販売台数は3.2%増の400万台を見込んでいる。

2022年度の財務見通しにおける営業利益増減分析
業績好調による黒字化を受け、2021年度は1株あたり5円の期末配当を行なう予定

「新たなイノベーションを支えているのは従業員1人ひとりの力」と内田氏

NISSAN NEXTとNissan Ambition 2030について説明する内田氏

 また、内田氏は事業構造改革として進めているNISSAN NEXT、長期ビジョンであるNissan Ambition 2030についても説明を実施。

 Nissan Ambition 2030を支える技術として車両の「電動化」「知能化」を挙げ、4月には全固体電池と次世代LiDARについて公開。日産は他社にないアライアンスの強みを生かすことで競争力をさらに強化し、スケールメリットの拡大を図っていくという。

 また、アライアンスのパートナーでもある三菱自動車と共同開発している軽自動車の新型バッテリEV(電気自動車)を5月20日に発表すると述べ、「日本におけるEV普及促進に大きな弾みをつけるものと確信しております」と語った。

4月に発表したバッテリと知能化に置ける次世代技術に加え、5月20日に軽自動車の新型バッテリEV(電気自動車)に発表する

 このほかにも電動化、知能化の技術を活用して「社会の可能性を広げるための活動」にパートナー企業などと協力して取り組むと述べ、こうした新たなイノベーションを支えているのは、日産で働いている従業員1人ひとりの力だと内田氏は説明。「ほかがやらないことをやる」という創業以来の精神を持ってさまざまなイノベーションを起こしてきたが、これを可能にした会社として最大の財産は人材であると述べ、その力を最大限に発揮できる企業風土を醸成することが最も重要なことだと考えており、この企業風土改革こそがNissan Ambition 2030の成功、その先にあるさらなる成長の鍵になるとした。

電動化、知能化の技術を活用した「社会の可能性を広げるための活動」にも注力
企業風土改革こそがNissan Ambition 2030の成功とさらなる成長の鍵になると内田氏は語る
2021年度決算発表記者会見(1時間15分25秒)