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日産、2022年度第1四半期決算は営業利益108億円減の649億円ながら、通期見通しは下方修正せずキープ

2022年7月28日 開催

日産自動車株式会社 COO アシュワニ・グプタ氏

 日産自動車は7月28日、2022年度第1四半期(2022年4月1日~6月30日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 第1四半期の売上高は前年同期(2兆82億円)から1291億円増となる2兆1373億円、営業利益は前年同期(757億円)から108億円減の649億円、当期純利益は前年同期(1145億円)から674億円減の471億円。また、第1四半期累計3か月のグローバル販売台数は前年同期(104万8000台)から22万9000台減の81万9000台となった。

 なお、当期純利益については前年同期の実績に、ダイムラー株の売却益である761億円が含まれていたことの影響を受けた結果となっている。

2022年度第1四半期の日産自動車財務実績

 説明会では日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏が決算内容について説明。2022年度第1四半期は厳しいマクロ環境と地政学的な問題などを含めて世界的に先行き不透明な状況が続いており、よりいっそう厳しさが増していると説明。新型コロナウイルスの感染拡大に優先的に取り組むなか、長引く半導体の供給不足、原材料価格の高騰、中国におけるロックダウンなどの影響によってサプライチェーンがひっ迫。生産に影響した結果、購入者に対する納車が遅れる事態となっている。また、乗用車セグメントを中心に主要市場の全体需要にも影響が出ている。

 一方で為替レートの好転が追い風になり、日産は「NISSAN NEXT」の継続的な徹底によってこれまでの勢いを維持することができたと述べた。また、複数の市場で一部車種の納期に遅れが出ていることを謝罪して、ユーザーが求める商品を可能な限り早く届けられるよう全力を尽くしていくとした。

販売台数と生産台数における2021年度第1四半期、2022年度第1四半期の比較
2022年度第1四半期におけるグローバルの自動車需要と日産の販売動向

 決算における重点指標である販売台数と生産台数についてグプタ氏は、販売台数が2021年度第1四半期から22%減の81万9000台になったが、これは主に在庫水準の違いで発生したものだと説明。前年同期は在庫を生かして販売を伸ばしていくことが可能になったが、2022年度の第1四半期には在庫が最低水準にまで落ち込んでおり、需要は拡大しているものの販売が難しい状況になっているとした。

 一方、生産については半導体の供給不足といった課題がありながら、前年同期並みの81万2000台をキープしており、世界中の日産の仲間たちが生産したすべての車両をユーザーの手に届けるため奔走して、販売台数を生産台数と同水準に高めていると述べた。

 厳しい環境に置かれているものの、これまでに市場投入した新型車は販売を伸ばしており、日本市場では「ノート」「ノート オーラ」がセグメントシェアの17%を獲得。為替変動の影響を除外した車両1台当たりの売上高も4%増加しており、2022年上半期の電動車販売で1位になっているとアピールした。

 このほか中国市場では「シルフィ」がセグメントシェアを17%に、米国市場では新型「フロンティア」がセグメントシェアを11%に、欧州市場では新型「キャシュカイ」がセグメントシェアを5%に高め、それぞれ1台当たりの売上高を向上させるなど、日産の長期的な業績向上に寄与していると解説している。

グローバル販売台数400万台に挑戦し、営業利益見通し2500億円を維持

2021年度第2四半期以降に対応すべき課題と生かしていきたい好機について

 第1四半期についてグプタ氏は「向かい風と追い風が混在する環境だった」と分析。「逆風に強い、しなやかな組織を造ることに投資することが重要」だと述べ、直近の課題に対応しながら、長期的に持続可能な取り組みを進めていくとした。

 第1四半期は上海で起きたロックダウンに対する対応が最優先課題となり、当面の対応として上海の代替先となる港を利用することで物流の滞りを解消。これによってコンテナ配送の遅れを96%削減し、サプライヤーは全社で100%の稼働を再開しているほか、ディーラーも全店舗が営業を再開。来場者も戻って今後の受注に結びついていくだろうと説明した。

 また、半導体不足も予想していた以上に影響が長期化。サプライチェーンのエコシステム全体を見渡していくことが求められ、直近では半導体メーカーの在庫を確保して、重点市場、重点商品に対して優先的な割り当てを実施している。中期的な対策として代替部品の開発を行ない、日産専用の仕様から汎用品への切り替えも進めているという。

 原材料価格の高騰に対しては、貴金属の使用量が少ない新世代触媒、コバルト不使用のバッテリなどを開発して貴金属使用量を削減。長期的にはスケールメリットを生かすことで、鉱山から直接調達する可能性についても検討していることを明かした。

 こうした自動車業界全体で顕在化している課題に対応する一方で、NISSAN NEXTで進める事業構造改革による「販売の質」向上、絶えず変化する経営環境に対応して「業務効率の向上」に取り組んでおり、円安・ドル高基調の為替レートも追い風として、事業運営のあり方をさらに改善していくと説明。

 これまで同様に前向き、かつ慎重に取り組みを進め、2022年度の販売予測である400万台の達成に向けて挑戦していくほか、マクロ環境によるリスクを軽減して財務規律の徹底による戦略的な事業運営を行なうことで、営業利益見通し2500億円、当期純利益1500億円を達成する自信があると語った、

2022年度第1四半期における営業利益増減分析
2022年度第1四半期の財務実績。上段が持分法適用ベース、下段が中国合弁会社比例連結ベースで見たグラフ

質疑応答

質疑応答で質問に答えるグプタ氏

 後半に行なわれた質疑応答では為替レートの変化を受け、日本国内での車両生産などを見直す計画などがあるかについて問われ、グプタ氏は「まず、私たちが集中しているのは事業の効率化です。業績目標を達成するために事業運営を強化しています。これは需要のある現地のお客さまに対して行なうというのがグローバルでの方針です。生産拠点の変更は、為替変動のような短期的な理由では行ないません。為替レートは私たちにとって不可抗力であり、持続していくかに注目して生産計画を立てています」。

「一方で日本市場についてですが、私たちにとって日本は極めて重要な市場であり、NISSAN NEXTでは18か月の期間に12の新型車を投入しており、これは一番多いものとなりました。第1四半期をふり返っても日本の市場占有率が1.4%向上しており、ノートやノート オーラは電動化車両販売で上半期のナンバーワンになっています。さらに電気自動車の販売トップ3はいずれも日産車なんです。私たちは先進技術を新型車に搭載して日本でプレゼンスを確立してから、日本を輸出拠点として活用することで固定費を最適化しています。例えば『エクストレイル e-POWER』は日本からの輸出になります」。

「ただ、例えば『ローグ』のように米国と九州工場で生産しているモデルについては、為替レートのバランスを考えて対応します。しかし、事業計画を為替レートだけを理由に変更することはありません」と回答している。

日産自動車 2022年度第1四半期決算発表(52分50秒)