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ロールス・ロイス、限定10台の「ファントム・シンティラ」 スピリット・オブ・エクスタシーへのオマージュを込めたモデル
2024年8月27日 07:00
- 2024年8月16日(現地時間) 発表
英ロールス・ロイス・モーター・カーズは8月16日(現地時間)、設立120周年を記念して、ロールス・ロイスのマスコットである「スピリット・オブ・エクスタシー」の幻想的な美しさ、優雅さ、伝統を称える限定10台のプライベート・コレクションモデル「ファントム・シンティラ(PHANTOM SCINTILLA)」を発表した。
1910年、ロールス・ロイスのマネージング・ディレクターであったクロード・ジョンソン氏は、彫刻家でイラストレーターでもあるチャールズ・サイクス氏に、ロールス・ロイスのマスコットの制作を依頼。ジョンソン氏はすでにルーブル美術館で見た大理石のギリシャ彫刻「サモトラケのニケ」からインスピレーションを得ていたものの、サイクス氏はマスコットとしては威圧的で適切ではないと感じ、ロールス・ロイスの優雅な、静かでさりげない力強さを表現するには、より繊細で優美な姿が適していると考えたという。
今回のビスポーク・コレクティブは、ファントム・シンティラを制作するにあたり、新しい素材や「サモトラケのニケ」の魅惑的なイメージをさりげなく想起させるデザイン要素を取り入れることで、ジョンソン氏の当時のインスピレーションの一部を復活させたとしている。
また、「シンティラ」はラテン語で「閃光」を意味し、これもジョンソン氏が最初にひらめいたマスコット、「サモトラケのニケ」にちなんだもの。スピリット・オブ・エクスタシーの幻想的な優雅さ、車両が通り過ぎるほんの一瞬だけ視界に映り込むものでありながらいつまでも残る深い印象を示唆したという。
ファントム・シンティラのデザインは、スピリット・オブ・エクスタシーの素晴らしさを連想させるものとして、エクステリアはボディ上部に「アンダルシアン・ホワイト」、ボディ下部にサモトラケ島を囲む海の色から着想を得た「トラキアン・ブルー」を用いた2トーンカラーを採用。繊細なメタリックフレークで海面を照らす太陽光の輝きを表現し、手塗りのダブルコーチラインとスピリット・ブルーのピンストライプにより、さらに優雅なエクステリアに仕上げている。
また、ギリシャ彫刻「サモトラケのニケ」は、きめ細かい白いパリアン大理石で作られていることから、ファントム・シンティラでは、スピリット・オブ・エクスタシーをセラミック材で仕上げ、たおやかさと優美な雰囲気はそのままに、パリアン大理石の質感を巧みに再現している。
インテリアは自動車が通り過ぎる時に垣間見える光のドレスの動きにインスピレーションを得たもので、スピリット・オブ・エクスタシーのエレガントな躍動感をビスポークによる優雅な刺繍で表現。数々のステッチや色合いの試作を経て、6層にわたってさまざまな密度で複雑に織り込む「タタミ・ステッチ」を採用。インテリア全体は86万9500ものステッチで構成され、その制作時間は40時間以上におよぶという。
また、ドアに施された刺繍は、ブルー・グレー、アークティック・ホワイト、スピリット・ブルー、パウダー・ブルー、パステル・イエローの糸を組み合わせた約63万3000ものステッチに、イルミネイテッド・パーフォレーションを加えた、ロールス・ロイス史上もっとも複雑なデザインとなっており、夜になると刺繍は魅惑的な輝きを帯び、内側から光を放っているように見えるという。さらに、シートはほのかに反射する光沢のあるツイル生地仕立てで、インテリアにより深みを与えている。
フロントダッシュパネル全体に伸びるのは、7本のリボンで構成され、それぞれが無垢のアルミニウムから削りだされた後、スピリット・オブ・エクスタシーの像と同じ、きめの細いセラミックで仕上げたビスポークのアートワーク「セレスティアル・パルス(天空の鼓動)」で、エッジは光を取り込む鏡のように磨き上げられ、動きと流動性を演出している。
天井は、スピリット・オブ・エクスタシーの流れるようなドレスにインスピレーションを得たアニメーションが特徴のスターライト・ヘッドライナーを採用。すべて手作業で独自パターンで配置された1500個の光ファイバーの「星」が順々に光を放ち、動きのある感覚を演出。さらに、通常よりも大きめに作られた4450個のパーフォレーションとメタリックシルバーの生地が微妙な光の相互作用を生み出すとしている。
ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポーク・クラフト・スペシャリスト であるBrienny Dudley氏は、「このデザインを立体的に表現することは素晴らしい創造的挑戦でした。刺繍のディテールや質感、触感を適切なレベルにまで高めるために、ビスポークのデザイン・チームと2年半以上にわたって緊密に協力し合う必要がありました。レザーとファブリックという2つのキャンバスは、刺繍を施すとそれぞれ異なる表情を見せるため、さらに複雑さが増しました。別々に刺繍を施した36種類のパネルを慎重にぴったりと合わせて配置することで、インテリア・スイート全体にシームレスで流れるようなモチーフをつくり出しました」とコメントしている。
また、ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポーク・カラーマテリアル・デザイナーのCelina Mettang氏は、「私たちは、パリアン大理石の特質に魅了され、この素材を何か月にもわたって研究しました。かの有名な彫像との明確でエレガントなつながりを生み出すために、この唯一無二の石が持つ透明感や純度をとらえ、私たちのアイコンの優美な面影を宿すセラミック仕上げを開発しました」とコメントを寄せている。
ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポーク・カラー&マテリアル・デザイナーのKatrin Lehmann氏は、「私たちは水彩画のように見える単一のグラフィックを作り上げようと考え、これを『糸による絵画』と呼んでいます。光沢を与えるために4つの異なる色、糸の太さ、さまざまな方向のステッチを織り交ぜました。これにより、ロールス・ロイスではこれまでに探求したことのない領域をカバーし、これまでのロールス・ロイス車でもっとも密度の高い刺繍を実現しました」と述べている。
ロールス・ロイス・モーター・カーズ最高経営責任者であるChris Brownridge氏は、「プライベート・コレクションの発表は、いつも画期的な瞬間です。世界に数台しか存在しない、これらの希少で収集価値のあるモーターカーは真の傑作です。これらはロールス・ロイスのクリエイターや職人たちの限りない創意工夫と技能を示すとともに、お客さまのアイデアを刺激して独自のコミッションにつなげるものでもあります。また、ロールス・ロイスが真のハウス・オブ・ラグジュアリーであることを象徴しています。私たちは単に自動車を製造するだけではありません。今日のコレクターから高く評価され、将来にわたって大切にされる希少で複雑かつ精巧に作られた極めてラグジュアリーな製品を製造しています。精巧なビスポーク製品を生み出し、特別な体験を形にすることは、今日の超高級品のお客さまの要求に直接応えるものです。このアプローチは、今後も私たちのビジネスを形づくっていくでしょう。また、VIPのお客さまに向けたプライベート・オフィスのグローバル・ネットワークを拡大し、デザイナーがお客さまと直接コラボレートし、世界のどこにいてももっともエクスクルーシブな製品を共同で制作していきます。さらに、ロールス・ロイスの本拠地、グッドウッドではビスポークの規模をさらに充実したものにすべく拡張を進めており、世界でもっとも複雑で洗練された体験とビスポークのラグジュアリー製品をお届けしてまいります。私たちの永遠のミューズであるスピリット・オブ・エクスタシーを称えるファントム・シンティラは、これらの理念を完璧に表現したものです」と述べている。