ニュース

メルセデス・ベンツ「G 580」のその場で回転する「Gターン」機能などプロダクトマネージャー トニ・メンテル氏が解説

2024年10月23日 開催

G 580 with EQ Technology

 メルセデス・ベンツの「G 580 with EQ Technology」が国内発表された。発表会のあと、車両のメカニズムやエクステリアなどについて、Gクラスのプロダクトマネージャーであるトニ・メンテル氏が説明を行ない、特徴的な機能である「Gターン」についても説明した。

 G 580 with EQ Technologyの大きな特徴としては、バッテリ駆動の電気自動車であり、4輪それぞれに独立したモーターを採用し、4輪を独立して駆動することでその場で360度ターンする「Gターン」ができるというもの。Gターンの具体的な使い道としては、オフロードで行き止まりに遭遇した際に方向転換をして撤退するときに有効だという。

通常のGクラスとボンネット形状が違い、空力を改善

 4輪独立モーターの効能は4輪を別々に制御できることでGターンができること。一度の操作で最大2回転(720度)の回転が可能。もちろん、180度や任意の場所で止めることもできる。

G 580 with EQ Technologyの特徴、Gターン(時計回り)
Gターン(反時計回り)

 今回、Gクラスのプロダクトマネージャーであるトニ・メンテル氏がGクラスの各部を説明した。

G 580 with EQ Technologyの説明をするGクラスのプロダクトマネージャー トニ・メンテル氏

 エクステリアでは、これまでのGクラスが比較的フラットだったのに対して、少し厚みのあるボンネットになったことなど、空力のために改善を行なったとした。

 また、BEVであることから、より静かに運転できたり、空気抵抗を減らしたりしてバッテリによる走行距離を伸ばすなど工夫も行なわれている。特に、Aピラー下の騒音の遮断、リアのタイヤハウスの穴などの工夫を説明した。

ボンネット中央の盛り上がりがほかより大きいG 580 with EQ Technology
リアフェンダーに空力のための穴がある

 その結果、G580は130km/hで走っているときの騒音が、これまでのGクラスで100km/hで走行した際の騒音とほぼ同じ。同じ速度なら静粛性が向上していること、一回の充電での航続距離の改善なども説明した。

 また、ラゲッジスペースは通常モデルとほとんど同じ。リアのモーターの影響でわずかにフロアが高くなっているが、なかなか気づかれないという。

リアのパワートレーンの関係で、フロアがちょっとだけ高くなった

 リアカメラは、過去のGクラスでは上のほうにあり、改良ごとに下に降りてきたが、よりワイドに、いつでも画像を映すためにG580ではバンパーのナンバープレート上にカメラがある。カメラが下に付くと汚れやすくなるが、ウォッシャー液を吹きかける仕組みを搭載することで汚れに対応した。

リアのカメラはナンバープレートの上。ウォッシャーも装備
通常ならスペアタイヤカバーの場所に物入れがある

 後部には、スペアタイヤカバーを模した物入れがある。充電器のケーブルは地面に付くなどして汚れるが、車内に持ち込みたくない場合にここに入れることができる。ほかにも物を収納できる。

アンダーフロアにプロテクターを装備、渡河性能は850mm

 アンダーフロアにはプロテクターがあり、床下にあるバッテリから保護していることを紹介した。バッテリは強固なケースに入っているが、岩場を走破したときなどにバッテリケースと内部のバッテリに衝撃が届きにくいようにしている。

 また、G580は渡河性能として850mmまでの水深に耐えられるようにしている。850mmの水につかればバッテリは水位より下になってしまうため、シーリングを強化して絶対に水が入らないようにしているという。

フロントのボンネット内にはフロントモーターなどのメカニズムがある。上部にある横長の黒いパーツは車外にエンジン音などを模した音を出すスピーカー

 バッテリはフレームの内側にあるが、オフロードを走るとフレームがわずかにたわむ。その際でもバッテリに異常がおきないようテストを繰り返し、オフロード走行でもバッテリの性能に影響がないようにしている。

 走行システムでは、コンフォートモードではフロントのモーターを切り離し、後輪のモーターだけで走行することで5~10%程度電気の消費を抑える。ところが、アクセルを強く踏んで加速をしようとすると、一瞬でフロントに接続して前輪にも駆動力を加える仕組みも備えている。

車名がEQから続く文字ではないのは、すべて電動化を見据えたから

 今回のGクラスのBEVモデルが車名の頭に「EQ」をつけていたのは理由がある。もとも「EQ」を付けた理由が、世界中の人たちにメルセデス・ベンツが真剣に電気自動車を開発していることを知らしめたかったからで「メルセデスEQ」というサブブランドを設定したという。

 ところが、今後、メルセデス・ベンツのすべてのモデルレンジが電動化したことを考えて、今回はじめて、新しいな車名の付け方をしたという。

こちらはV型8気筒4.0リッターエンジンを搭載する Mercedes-AMG G-Class

Gターンはオフロード限定の機能

 Gターンは、単純にその場でタンクターンができるだけでなく、安全性を考慮されたものになっているという。この機能は公道での使用はできず、原則として未舗装路での利用を想定しており、舗装路での利用は想定していない。

Gターンは原則としてオフロード限定。デモはコンクリートの上で行なったがタイヤの焦げる匂いがした

 トニ氏は「安全に転回するのはたいへんで非常に難しかった」と振り返るように、傾斜地や不安定な路面のときはGターンをしないようになっている。路面の情報については、クルマが直近の走行から現在の路面状況を覚えているという。

 そのうえでGターンを行なうには走行モードを「Rock」に切り替える必要があり、ボタン操作でGターンの指定をし、ステアリングを握って変速パドルとアクセルペダルの操作で回転する。

 今回、デモはコンクリート上で行なったが、トニ氏は駆動系やタイヤへの影響が大きいので、オフロード以外で使わないように求めた。Gターンのプッシュスイッチはダッシュボード上にあるが、通常の運転モードである「Comfort」などではGターンはできないという。

G 580 with EQ Technologyの発表が行なわれたシティサーキット東京ベイにはメルセデス・ベンツのクルマが並べられた