イベントレポート

その場で360度回転する「Gターン」など日本初公開されたメルセデス・ベンツ「コンセプトEQG」の魅力をプロダクトマネージャー トニ・メンテル氏が解説

一般公開日:10月28日~11月5日

入場料:1500円~4000円

コンセプトカー「Concept EQG」について紹介する独メルセデス・ベンツ Gクラス プロダクトマネージャー トニ・メンテル氏

「ジャパンモビリティショー2023」(一般公開日:2023年10月28日~11月5日、場所:東京ビッグサイト)に出展しているメルセデス・ベンツ日本は、プレスデー初日となる10月25日に、東展示棟(1~3ホール)の同社ブースで日本初公開したコンセプトカー「Concept EQG」について紹介するワークショップを実施。

 午前中に実施されたプレスブリーフィングに続き、独メルセデス・ベンツ Gクラス プロダクトマネージャー トニ・メンテル氏が解説を担当し、2024年に発売予定という“電動化されたGクラス”について語る前に、まずGクラスが歩んできた歴史について説明を行なった。

独メルセデス・ベンツ Gクラス プロダクトマネージャー トニ・メンテル氏

 1979年に誕生したGクラスは、44年の歴史を重ねるなかで高級オフロード車としての世界的アイコンとなっており、各国のモータージャーナリストや専門家から「Gクラスは最強のクルマだ」との評価を受けるようになっている。素晴らしいオフロード走行性能と快適な居住スペースを合わせ持つことが大成功した理由となっており、世代を経ても常に時代の最新オフロードテクノロジーを使い、典型的なGクラスとしてのデザインを採用し続けていることが成功を続ける秘訣になったという。

 これらの積み重ねから、4月には生産台数50万台という記念すべき日を迎えることができ、これについて自分たちは非常に誇りに感じていると同時に、この数字が40年以上の累計によって達成されたことは、Gクラスが大量生産される車種ではなかったことも示していると語った。そのようにしてGクラスはメルセデス・ベンツの高級車戦略に100%合致して貢献するモデルとなっており、ブランドの魅力を端的に示すアンバサダーの1車種にもなっている。

 アイコン的な存在に成長したGクラスについて、メルセデス・ベンツでは将来的にも販売し続けていくとコミットしており、新たにConcept EQGを世に送り出したことで、これからのGクラスがどのようになっていくかを示すことができたと考えているという。2024年に市場投入を予定している“電動化されたGクラス”については「オフロード走行の能力に焦点を絞ったクルマ」になるとの考えを示した。

1979年に誕生したGクラスは、44年の歴史でメルセデス・ベンツのアイコン的な存在に成長。4月に累計生産台数50万台を達成した
“電動化されたGクラス”につながる道筋を示すモデルがConcept EQGだとメンテル氏

その場に留まったまま360度回転する「Gターン」も可能

ジャパンモビリティショー2023で日本初公開されたConcept EQG

 ニューモデルについてはGクラスがこれまでに到達してきた性能を勘案し、このようなアイコン的存在を電動化することに伴う課題は非常に明確だと説明。“電動化されたGクラス”はそんな高い基準を満たすことに加え、オフロード車の限界をさらに高めていく存在になると開発について自信をのぞかせた。

 メンテル氏は具体例としてパワートレーンのコンセプトについて解説。Concept EQGでは4つのタイヤそれぞれで駆動用のモーターを備え、このような構造を採用することで既存の機械式デフロックを備えるGクラスと比較してよりたくさんの可能性が生まれることになる。その1つが「トルクベクタリング」で、路面状況がわるく必要なグリップ力を得られない場合には、タイヤからタイヤにトルクや回転速度を移動させることが可能になるという。これに加え、タイヤを互い違いの方向に回転させることも自在に制御でき、Concept EQGはその場に留まったまま360度回転する「Gターン」と呼ぶ技も持っている。

Concept EQGが持つ悪路走破性や「Gターン」を紹介するショートムービー(20秒)
“電動化されたGクラス”にも採用される4つのモーターを使う電動パワートレーン。フロア下にレイアウトされる走行用バッテリはラダーフレームに対応させるため開発を行なった

 走行用バッテリはメルセデス・ベンツグループで内製するバッテリパックを採用。Gクラス特有の構造であるラダーフレームにもセットできるよう新たな開発も行なっているという。また、通常の乗用車では必要とされないGクラスならではのオフロード性能における要求を満たすことも重要で、オフロード走行時に発生するねじり方向の大きな荷重に耐えられるよう、ラダーフレームのサイドバーに準じる剛性や強度をバッテリハウジングを持たせて安全性を確保している。

 走行シーンではゴロゴロとした岩の上を走るような状況も想定され、仮に岩とぶつかってしまうようなことがあってもバッテリが守られていなければならないことから、耐久性と軽量さを兼ね備える複合素材を用いたまったく新しいアンダーライドガードを新開発。これに加え、川などをわたるシーンではバッテリやパワートレーン全体が完全に水没することも考えられることから、そんな状況でも100%耐えられる防水性も要求性能となっている。

フロア下の撮影は許可されなかったため、複合素材を使っているという新しいアンダーライドガードについては、黒いステージフロアに反射した3本の白いサイドバーがぼんやりと確認できるだけだった
本格オフローダーでは渡河性能も重要な能力で、100%耐えられる防水性もしっかりと見据えた開発が行なわれている

 新しい“電動化されたGクラス”の市場投入にはあとひと息の開発時間が必要となっているが、「Gクラスの新たな1章」を記す上で、Gクラスがこれまでの44年間で大切にしてきたものを新型モデルでもしっかりと守っていくとコミットするとメンテル氏は説明。現在進められているという開発テストの最終段階では、過去のGクラスとまったく同じ手順で実施されており、シェークル山での過酷なオフロード走行テストに合格したことを示す「Schokl Proved」のマークを“電動化されたGクラス”も車両に設置された状態で登場する予定とのこと。「現在も、そしてこれからも時の試練を耐えうる存在になるクルマ」と表現した。

“電動化されたGクラス”は発売に向け、開発テストの最終段階で過酷なオフロード走行テストを重ねているという

 ワークショップ終了後に実施された質疑応答では、アンダーライドガードで使われている素材は非常に特殊なものとなっており、科学的な詳細は明かせないものの、強度の強さに加えて衝撃が与えられても割れたりしないこと、BEV化で懸念される重量増を少しでも緩和できる軽量さなどもポイントとして選定したと説明。また、渡河性能についても具体的な数値は伏せられたが、少なくとも現行モデルのGクラス(特別仕様車の4×4 スクエアーアドを除く)と同程度の水深に耐えられるようにしたいと考えていると説明した。

 なお、このワークショップやプレスブリーフィングにおけるメルセデス・ベンツ日本の上野社長の発言でも登場した“電動化されたGクラス”という表現については、現時点でConcept EQGが市販される際の正式な車名が確定していないことからこのような表現になっているとのことだ。

佐久間 秀