住友ゴム、タイヤ騒音を予測する新たなシミュレーション手法を新開発 凹凸路面の性能予測で予測誤差1％達成

実測値とシミュレーション計測値の比較

　住友ゴム工業は12月4日、タイヤ騒音を予測する新たなシミュレーション手法を新開発したと発表した。新たなシミュレーション手法では、路面凹凸によるタイヤへの振動入力と路面の吸音特性を考慮することで、特定のタイヤにおいて実測値と予測値の誤差は約1％となり予測精度を大幅に向上させた。

　同社ではタイヤパターン（タイヤ表面に刻まれる溝の形）が凹凸路面に接地する際に発生するパターンノイズ解析に関する特許を2014年に取得し、パターンデザインの開発にシミュレーションを活用してきた。

　今回、従来の手法に加え、路面の凹凸がタイヤを振動させる事と凹凸がパターンノイズを吸音する事による音圧レベルの変化の要素を追加したシミュレーション手法を新開発（特許出願中）。これにより実際のタイヤで発生するパターンノイズをより正確に予測することを可能にした。その結果については、2024年自動車技術会秋季講演会にて「路面性状を考慮したタイヤパターンノイズ予測について」として学会発表している。

　今回の特定のタイヤにおけるシミュレーション結果と実際のタイヤでの計測結果の比較検証では、両者の音圧レベルの誤差は従来の約5％から約1％となり、より高い精度でシミュレーションできる事を確認した。また、従来は約1カ月を要していた計算期間を約1週間に短縮できたとしている。

　この手法確立により今後、より静粛性能の高いタイヤ開発が可能になるとともに、試作タイヤによる実車テストの工数削減による開発納期の短縮や資源削減を図ることが期待でき、また車両のモデルベース開発への対応も可能となるとしている。

路面吸音特性による音圧レベル変化のイメージ

新開発のシミュレーション計測のイメージ

2024年から自動車の騒音規制の国際基準（UN R51-03 Phase3）が施行

　自動車の騒音規制の国際基準（UN R51-03 Phase3）が2024年から施行され、自動車騒音のさらなる低減が求められている。そして今後、普及が予想されるEVではエンジン音が発生しないため、タイヤから発生する音の寄与率が相対的に高くなる。このためタイヤの静粛性能の向上が今まで以上に求められているという。

　同社では、タイヤ内部の空気が共鳴して発生する「空洞共鳴音」を低減する独自技術の「サイレントコア」の採用や、タイヤと車両の相互の振動によって発生する音の低減に関するシミュレーション技術の開発など、これまでもタイヤの静粛性能を追求してきた。また、走行する車両のタイヤ付近の空力性能を最適化するタイヤ形状の開発においても独自のシミュレーション技術を駆使している。

　今後もシミュレーション技術を進化させ、EVタイヤなどの高機能タイヤ、モデルベース開発など多様なユーザーニーズに迅速に対応するとともに資源の有効活用により、地球環境に優しいタイヤ開発を進めていくとしている。