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ホンダ、新人事制度で部長層の年収を200万円~300万円引き上げ AI・ソフトウェア人材を重点的に確保
2025年1月17日 17:16
- 2025年1月17日 発表
ホンダ、初めて人事制度関連の発表会
本田技研工業は1月17日、新たな人事制度の取り組みを発表するとともに、その人事制度への取り組みを説明する会見を開催した。ホンダとして人事制度に関する発表会見を行なうのは初のこととなる。
登壇したのは、ホンダ 取締役 代表執行役副社長 貝原典也氏、同 コーポレート管理本部 人事統括部長 安田啓一氏。質疑応答では、コーポレート管理本部 人事統括部 人事部長 足立竜平氏も加わった。
貝原副社長は、最初にホンダの人事制度のフィロソフィについて説明。「ホンダの成長の原動力は大きく2つあり、1つは技術、そしてもう1つは人です。今回は、ホンダの現在、そして未来のチャレンジを担う人に関わるさまざまな取り組みをご紹介したいと思います」と語り、新しい人事の取り組みのポイントについて紹介した。
ホンダでは、グローバルで20万人の社員がいるが、今回は主に日本で働く4万人へ向けてのもの。
貝原副社長は、「ホンダフィロソフィの基本理念には『人間尊重』という言葉があります。ホンダは、人間は本来、夢や希望を抱いて、その実現のために思考し、創造する自由で個性的な存在であると考えており、人間尊重とは自立した個性を尊重し合い、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことでともによろこびを分かち合いたいという理念を表わしています。このような思いのもと、私たちはかねてよりこの人間尊重をベースに、主体性、公平、相互信頼を人事の3原則として、従業員1人ひとりの意欲や能力を高める環境づくりと、持てる力を生き生きと発揮できる職場づくりに力を注いでまいりました」という。
その相互信頼のもとに、「個人の自己表現」と「組織方針」のすり合わせを行なう1on1の面談である「2Way」、徹底的に意見をぶつけ合って成果を出す「ワイガヤ」があり、ホンダの経営層の特長としてよく知られている個別役員室なしの大部屋役員室も、ワイガヤがすぐに行なえる環境を実現している。
ただ、社会的な環境の変化に人事制度を合わせていく必要があり、貝原副社長は「会社は常に変化、成長し続けるものであり、人事制度もそれに合わせて進化しなくてはなりません。今、私が申し上げた企業文化、人事の基本方針をベースに、どのような戦略を持ち、人事制度を今後どのように発展させていくのか」と、新たな方針についての考え方を語った。
貝原副社長は、「自律的なキャリア形成や自己成長がこれまで以上に重要視されています。私たちは、志を持った人がホンダという場を活用し、自らのキャリアを磨き、成長していける環境を整えることが非常に重要だと考えています。こうした環境観点を踏まえ、ホンダは中長期の視点から従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合、短中期の観点からは事業上注力領域の人材の量的、質的充足という2つの人材マテリアリティを設定した」と紹介。
その上で、「組織の度台となる風土については、ホンダで働く1人ひとりが夢に向かって持てる力を、能力を最大限発揮できる環境の整備を加速させます」「人材の量と質の観点では、事業戦略の到達点からバックキャストした将来必要な人材ポートフォリオを形成すべく、電動化と知能化に向けてソフトウェアやバッテリ、デジタルといった注力領域において必要な人材を迅速に充足するとともに、それぞれの従業員に求められる知識、スキルの拡充を進めていきます」「人材の活用・処遇においては、一層の変革やイノベーションの創出に向け、適所適材、実力主義を今まで以上に進めてまいります」と3つの取り組みを紹介した。
部長層の年収を200万円~300万円引き上げ
詳細については、安田人事統括部長が説明。その中で、部長層の年収を200万円~300万円アップすることや、2025年6月から高度専門人材に対する定年制度の廃止、企業風土改革プログラム、キャリア採用の強化(2025年度については約1500名[定期採用は1000名で、計2500名]、うち60%程度はソフトウェアをはじめとする注力領域の人材)などが語られた。
とくに今後SDV(ソフトウェアデファインドビークル)の進展に伴ってソフトウェア領域の人材はとくに重点的に強化したいとのこと。働き場所についても、従来の栃木、東京(青山、六本木、赤坂)に加え、大阪、大宮、福岡、名古屋を追加。働き場所を増やすことで、ソフトウェア人材に配慮する。
さらに働く場所が手狭になっているとし、2026年に東京に新しくソフトウェアエンジニアの働く場所を設けるとした。
ソフトウェアなどこれまでにない人材の分野では、半導体や高度AIの分野では一般従業員とは異なるプロフェッショナル人材として採用。市場価値に照らしてより柔軟に処遇や労働条件を提示していくという。
具体例としては、社内のAIエキスパートについては月最大15万円の手当を支給。生成AIの専門家を社内においても発掘していくとのことだ。
部長層の年収を200万円~300万円アップすることについては前述のとおりだが、その前提として役職者制度を改定。経営事業基盤の変革をリードする「トランスフォーメーション」職、技術革新と新事業の創出をリードする「イノベーション」職を設け、それぞれに適した2つの給与・評価体系を新設する。
安田人事統括部長は、部長層の年収引き上げについては他業種を鑑みてとし、新人事制度については「この改定はホンダにとって非常に大きな改革であります。年齢との紐付けを完全に断ち切り、適所適材を加速することで、変革、技術革新の劇的な加速につなげてまいります」と語った。