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退職自衛官の再就職先を運輸業界へ 退役予定の自衛隊員向けに「大型トラック運転体験会&業界・企業説明会」開催

2025年2月5日 開催

運転体験中のUD・クオン

運転手不足対策として、退職自衛官の再就職先に

 国土交通省関東運輸局埼玉運輸支局と一般社団法人 埼玉県トラック協会は2月5日、退役予定の自衛隊員向けに「大型トラック運転体験会&業界・企業説明会」を開催した。場所は埼玉県上尾市にあるUDトラックス本社工場にある「UDエクスペリエンスセンター」で、UDトラックスの大型トラック「クオン」が使われた。

「大型トラック運転体験会&業界・企業説明会」は、不足する運転手対策として行なわれたもの。関東運輸局埼玉運輸支局と一般社団法人 埼玉県トラック協会が開催し、UDトラックスが協力、運転体験に使用するトラックやコースなどを提供した。

18名の自衛官が参加した

 取り組みは国土交通省と防衛省、業界団体が2024年6月に自動車運送業等の担い手確保に向けた協定を結んだことから開始。定年を迎える自衛官や任期制自衛官を、運転手や整備士へ再就職を後押しする。今回のような取り組みはすでに熊本や北海道で行なわれているが、関東地方では初開催となる。

一般社団法人 埼玉県トラック協会から6社が企業説明会に参加した

 今回、埼玉運輸支局が自衛隊埼玉地方協力本部と埼玉県トラック協会と相談してイベントを開催、埼玉地方の自衛隊から参加者を募り、陸上自衛隊大宮駐屯地、航空自衛隊入間基地から18名が参加した。今回の参加者は長くても5〜6年後に定年退職を迎える自衛官になる。

ドライバー不足に対する物流業界の担い手不足に対する国交省の施策の1つ

 イベントでは、まず最初に国土交通省関東運輸局埼玉運輸支局支局長の團村聡氏が登壇し、「われわれ国土交通省が所管している物流業界については、担い手不足が深刻な状況。トラックの運転手が不足していることでわれわれの国民生活にも大きな影響が受けていることが予想される」と現状を説明した。

国土交通省関東運輸局埼玉運輸支局支局長の團村聡氏

 国交省はあらゆる施策を行なっているとして、「標準的な運賃」を告知しているほか、トラック運転手の労働時間短縮のため「トラック・物流Gメン」を組織して荷主企業等へ待ち時間の短縮の要請を行なうことなどを紹介した。

物流改革に向けた政府の取り組み
標準的運賃の周知・徹底

 さらに担当者がトラック輸送の現状、標準的な運賃、トラックドライバーの働き方改革などについて説明し、埼玉県トラック協会は活躍中のドライバーのインタビュービデオを流して、トラックドライバーの実態について紹介した。

UDトラックスから大型トラックのクオンの説明があった

 そして、UDトラックスからは大型トラックの紹介。「大型トラックを運転することに対するイメージをよい意味で壊す!!」として、大型トラックを運転することに関して懸念されていることについて、技術で解決していることが紹介された。

ESCOTの率は80%以上
「止まる」をサポートする技術
ディスクブレーキをクオンの全車に2017年モデルから採用
安全運転のサポートの一部、ほかに車間制御や車線逸脱警報、姿勢制御などの技術を搭載

 特にUDトラックスではAT車にあたるESCOTの装着率は80%以上であること、そして、中立に戻りやすいUDアクティブステアリング、電子制御ブレーキシステムとディスクブレーキ、運転支援システムの搭載などが紹介された。

運転体験では、UD・クオンの性能を体験

 運転体験は3台のUD・クオンを用意。いずれも低床4軸のウイング車で荷室には9tの荷物を積んで実際の荷物を積んだ状態を再現した。

運転体験前にUDトラックスから説明

 参加者が自らステアリングを握り、走行は1周1.1kmのテストコースで実施。3周し、途中、S字カーブでUDアクティブステアリングの中立に戻りやすい特性を体験し、悪路でハンドルがとられにくいこと、車線逸脱で警告が出ることなどを体験。さらにディスクブレーキの効き具合を確認した。

自衛官が自らステアリングを握り、運転体験を行なった

 自衛隊で使用しているトラックとは運転間隔の違いを感じたとのことで、ステアリングやブレーキなどは最初は違和感を感じたというものの「少し慣れればすごく運転しやすい車両だ」という感想も聞かれた。

運転体験中のUD・クオン
黄色パイロンの間を走るS字コース
走行中のUD・クオン
UDエクスペリエンスセンターにはコンセプトカーをはじめ、さまざまな展示がある
搭載エンジンと海外向けのトラック
UDアクティブステアリングの特性が確認できるモックアップ

大型車に乗る実績が自衛官の強み、

 運転体験や説明会を終えて、参加した自衛官を代表して埼玉地域援護センター長の小田林朗友氏がインタビューに答えた。今回参加の理由は「内容を知らないと就職の方向性をしっかりと見出せないというところがあったから」とし、物流業については「拘束時間が長く、運転での疲労が多い状況かと思っていたが、自分がイメージしていた以上にしっかりと仕事できる環境が整っている業界と感じた」と答えた。

埼玉地域援護センター長の小田林朗友氏

 小田林氏は、自衛隊では大型免許を取り仕事でも活用機会が多いことから、退職後の自衛官がトラックドライバーになることは「大型車に乗るという仕事をしていて、大型車に乗っているという実績が強みの1つ」とした。

 また、最後にインタビューに答えた埼玉運輸支局支局長の團村聡氏は「こういったイベントを通じて興味を持っていただいて、選択肢の1つとして身近に感じていただければと思っている。運送業界は社会に必要な業界なので、国も担い手不足の解消に向けて積極的に取り組んでいく」と語った。

運転体験に使うUD・クオン